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粋な探偵にあるのはこだわりとユーモアとほんの少しの弱さ
『デンマークに死す』 アムリヤ・マラディ
棚橋志行〈訳〉
祝 note 初投稿。
読了した本の感想をただただ、書き綴っていこうと思います。
唐突ですが、私が読書にのめり込むきっかけとなったのが、江國香織さんの『きらきらひかる』という小説なのですが、そんな江國さんが昨年出した『読んでばっか』というエッセイ。
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大ファンの私にとってはなんとも至福の読書体験でしたが、その中で紹介されていたひとつが、このアムリヤ・マラディさんの小説なのです。
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こんなにも男前でかっこよく、ただ時折りみえる弱さに人間味を感じて、主人公のゲーブリエル・プレストに出会えたことが、心からうれしい。
彼は私立探偵、副業でブルース・ミュージックのギタリストをしているのですが、ユーモアのセンス抜群。そしてとんでもなくお洒落(度々のファッションの描写を、読むたび心待ちにしていた)。
家具も相当のこだわりがあり、自宅の改修に10年ほど取り組んでいて、いまなお進行中(十八世紀フランスの年代物の浴槽、スペイン製の白と黒のアンティークセラミックタイルなどなど)。
そして、めっぽうもてる(鮮烈に描かれる人たちがなんとまあ美しい)。
ただ、独身であり相当折り合いがつかなかった元妻との間にいる娘を愛する、父の姿も垣間みえる。
そんな彼は、人生最愛だった10年前の元カノへの気持ちをずっと引きずっている一面も…
とある日の夜、そんな弁護士である元カノとブルース・バーで再会。殺人容疑で有罪とされている移民男性の弁護をすることになり、無実の証明を助けてほしいとの依頼を受けることで今回の事件は始まる。
この話には、デンマークや宗教の歴史が絡み合っていて、現代社会にもつながることがあると痛烈に感じた。
私自身、宗教や移民について詳しくなかったため、本書がきっかけで学び始めているところ(これは知らなくてはならないと使命感に駆られた)。
まちがいなく、素晴らしいこの本書に突き動かされたのでしょう。
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『pen BOOKS ユダヤとは何か。聖地エルサレムへ』
街並み、料理、お酒、スイーツ、いますぐにコペンハーゲンへ行きたくなる様な、ありありと彷彿させる文章も醍醐味のひとつ。
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ちなみに私はお酒が大好きなのですが、今まであまりカクテルは飲んでこなかったのです。となると、『デンマークに死す』を読んでいる最中にオールドファッションドが出てきたときはサッパリわからず、とにかくあれこれ想像しました(それも読書の良いところ)。
数ヶ月後の旅先のバーでバッタリ、その答え合わせができたのです(これは人生の面白いところ)。
探偵×北欧の空気を感じながら、
ああ、旅に行きたい。とも感じさせてくれるような
ユニークで粋な小説をぜひ。