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翌日

「ねえ、こんなところで寝たら、風邪ひいちゃうよ」

 なんて言葉をかけてくれる人もいない。そうだ、おれは酔っている。酔っているときだけが、自分を自分でいさせてくれる。


 女なんて、とおれは思う。ホワイトホースの水割りを飲みながら。


 女なんて資本主義社会の権化じゃないか。自分の利にならなけりゃオサラバだ。しかし、それはただ単に男よりも女のほうが順応できる能力があるだけじゃないのか?


 おれはまっぴら御免だね。そのゲームからは降りるよ。たとえ惨めな人生が待っていたとしても、おれはそいつにハグしてやるさ。器用に生きるよりも、自分の信念に生きたい。


 おれの信念なんて、誰も興味ないだろうが、それでもおれはおれでありたい。孤独に苛まれようとも、その疼く感じが、生きているって証拠だ。


 そりゃあ、おれだって恋のふたつやみっつ、したことはあるさ。でも、結局は開ける保証のないタイムカプセルに埋めてしまった。そんなもんだろう?


 正直にいえば、抗い難いくらいの寂寞が襲ってくることもある。「生きているよりマシ」と思ったこともある。それで……ああ、ちょっと、待ってくれ。水割りを作るから。


 ……で、なんの話だったっけ? ああ、そう、おれにだって寂しくなるときはある。でも、そこで足掻いても、結局は悪手だ。なるようにしかならない。行雲流水。


 ……ちょっと喋りすぎたかな。喋るのは苦手でね。まあ、飲んだくれの戯言として聞き流してくれ。とにかく、疲れたなら休めばいい。人生は戦いだけど、常に銃を向けられているわけじゃない。戦争じゃないんだ。闘争だ。一番の敵は自分だ。ああ、なにを言ってるんだか。


 まあ、生きていればいいことがある、なんて言えないわな。おれだってなにも高望みしているわけじゃない。昨日よりちょっとマシな今日を願っても叶わないんだからな。


 いまがどん底だと思っている君、どん底の先を見てみたくはないか? ちなみにおれはさらなる底を見た。ははっ、セ・ラ・ヴィ。それが人生だよ。


 生きていればいつか救われる、なんて思ってちゃダメだ。救われない人生もある。それでもなお生きる理由? ふん、くだらない。


 好奇心に決まってるだろ。

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