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オンデマンド型交通の企業まとめ

本記事では,人々の呼び出し(デマンド)に応じて車両を配車するサービスであるオンデマンド型交通の事業を行っている企業についてまとめました.(この記事は約3,500字です.)

オンデマンド型交通としてライドヘイリング・配車タクシー・オンデマンド型乗合交通を挙げます.それぞれの立ち位置は下図のようになっています.

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ライドヘイリング

ライドシェアと呼ばれることも多いですが,一般人が自家用車を用いて他人を送迎するサービスのことを,ライドヘイリングと呼びます.
UberやLyft, Grab, 滴滴出行, Olaなどが有名です.

▪Uber

72ヵ国6,000都市でサービスを展開しているオンデマンド型交通のトップ企業です.2019年5月10日に上場しました.Uberが提供している一般的なライドヘイリングサービスは「UberX」と呼ばれています.

またUberは送迎サービスだけでなく,飲食店からの料理の配達を行う「Uber Eats」や,トラックのドライバーと,荷物を輸送して欲しい業者をマッチングする「Uber Freight」などのサービスも展開しています.

2019年4,5月からは,アメリカのデンバーやロンドンを対象として,Uberのアプリ上で電車やバスなどの公共交通を含めた経路検索・予約・決済ができるようになっており,オンデマンド型交通と公共交通の統合を進めていることが伺えます.

▪Lyft

アメリカでUberに次ぐシェア率を誇る企業です.Uberからシェアを奪いながら事業の拡大を進めています.飲食配達や貨物輸送も手がけるUberとは異なり,旅客運送のみに注力しています.

最近では,アリゾナ州限定ですが,Google系の自動運転開発企業のWaymoが展開している自動運転タクシーサービス「Waymo One」がLyftのアプリから配車できるようになっています.

なおアメリカでは,UberやLyftなどのライドヘイリングサービスを使用する人が増加したことによる渋滞悪化が問題となっており,2021年にはニューヨークで渋滞税が導入される予定です.

▪Grab

東南アジアで事業展開している企業です.Uber同様に,飲食の配達も行っています.

シンガポールでは2019年4月23日から,Grabのアプリ上で,ホテルの予約や映画のチケットの購入,公共交通も含めた検索などができるようになっており,扱う交通手段や産業の拡大を進めていることがわかります.

▪滴滴出行

中国で事業展開している企業です.「DiDi Express」や,よりサービスレベルの高い「DiDi Premier」というサービスを提供しています.需要予測や配車最適化などのAI技術を開発しているDiDi AI Labs では,400都市以上から日々蓄積されるデータを解析し,更なるサービス向上を行っています.

▪Ola

インドに拠点を置く企業です.2018年1月からはオーストラリアでも事業を展開しています.

日本では,営業許可のない一般人が有償でタクシー事業を行うことは「道路運送法」で禁止されています.タクシーのナンバープレートが緑色であるのに対し,一般の自家用車のナンバープレートが白色であることから,一般人によるタクシー事業は「白タク」と言われています.


配車タクシー

スマホのアプリで呼び出せるようになったタクシーのことです.アプリで,タクシーの現在地の確認,事前に登録した決済情報での支払いなどができます.上記のUber, Lyft, Grab, 滴滴出行, Olaは,配車タクシーサービスも提供しています.

日本では「白タク」が禁止されているため,配車タクシー事業に力を入れている印象です.Uberと滴滴出行が日本の各地で正式にサービスを開始しています.

日本の企業としては,Japan Taxi,DeNA,みんなのタクシー(ソニー)などが挙げられます.

▪Japan Taxi

日本全国で使用できる国内最大手の配車タクシーアプリです.トヨタが福岡で実証実験を行っているMaaSアプリ「my route」や,経路検索アプリ「NAVITIME」でも使用可能です.また2019年5月27日に,小田急電鉄が開発中のMaaSデータ基盤「MaaS Japan」への配車タクシーシステムの接続に取り組むことも表明しており,他の企業との連携を進めていることが分かります.

▪DeNA

「MOV」(旧名:タクベル)というアプリを,東京及び神奈川で提供しています.2018年12月には「0円タクシー」という,限定車両が配車された場合に,無料でタクシーに乗れるというキャンペーンを行っていました.またJapan Taxi と同様に,小田急の「MaaS Japan」に参画することを表明しています.

▪みんなのタクシー

ソニー及びソニーペイメントサービスと,都内タクシー会社5社(グリーンキャブ・国際自動車・寿交通・大和自動車交通・チェッカーキャブ)の合弁企業です.2019年4月16日から東京都内で,「S.RIDE」というタクシーの配車,決済ができるアプリによるサービスが始まりました.


オンデマンド型乗合交通

他人との乗合を前提としたオンデマンド型交通です.乗合による迂回のため,通常より時間がかかる場合がありますが,その分値段が安くなるというメリットがあります.車両は,バスやタクシー,6人乗り程度のワゴン,自家用車です.

Uber, Lyft, Grab, 滴滴出行, Ola はそれぞれ,UberPOOL, LyftShare, GrabShare, DiDi bus, Ola Share という名のオンデマンド型"乗合"交通のサービスを提供しています.(Ola Share は経路は固定です.)

Via, MOIA, ドコモ&未来シェア, MONET(トヨタ&ソフトバンク)などの企業もオンデマンド型乗合交通の事業,実証実験を行っています.

▪Via

2013年からニューヨークを初めとして,シカゴ,アムステルダム,ロンドンなどの多くの都市でオンデマンド型乗合交通のサービスを展開しています.
日本では,森ビルが2018年8月から社員向けにViaのシステム・車両を用いた実証実験を行っています.また2019年4月15日には伊藤忠商事がViaへの投資を実施しています.


▪MOIA

ドイツで事業展開しているVW系の企業です.2012年から2015年までヘルシンキで実証実験を行っていたKutsplusのチームもMOIAに吸収されています.2018年7月末から一般向けサービス開始し,2019年からはハンブルグでEVを使った実験を開始しています.


▪NTTドコモ&未来シェア

「AI運行バス」という名で,横浜市,前橋市,九州大学など日本の各地で実証実験を行っています.2017年3月から実験を開始しており,国内で1番の実績を誇ります.

配車最適化やシミュレーションの技術を提供しているのが2016年設立のベンチャー企業「未来シェア」です.未来シェアは,東急電鉄の「郊外型MaaS」や,JR東日本が静岡で行っている「観光型MaaS」にもシステムを提供しています.

▪MONET(トヨタ&ソフトバンク)

2018年9月に設立されたトヨタとソフトバンクの合弁企業です.設立発表は,国内の時価総額1位2位の両社が手を組んだということでとてもインパクトがありました.豊田市と横浜市で実証実験を実施している他,「MONETコンソーシアム」を設立し,計88社の企業間の連携を推進しています.

NTTドコモと比較すると実証実験はまだ進んでいないように見えますが,全国約150自治体との連携を進めており,今後,各地で実証実験を行っていくと思われます.



まとめ

本記事では,オンデマンド型交通(ライドヘイリング,配車タクシー,オンデマンド型乗合交通)の事業を展開している企業についてまとめました.

MaaS(あらゆる交通手段を統合し,自家用車以上の移動を提供すること)の実現のためには,運行形態が固定している電車や路線バスなどの公共交通のみではなく,運行形態が柔軟であり,Door to Door の移動を提供することができるオンデマンド型交通の発展・普及が必要です.

日本では「白タク」が禁止されていることもあり,オンデマンド型交通の普及は海外よりも遅れていますが,各地で行われている実証実験を経て,実導入が進んでいくと思われます.今後も,新たな企業の参入や政府の動向などを含めて注目していきたいと思います.


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