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バイトバイトバイト

引きこもり兵

自分はバイトが嫌いだ。いや、労働が好きではない。仕事ができない。
高校生の頃、帰宅部で家に帰ってきては荒野行動(銃を撃つゲーム)をしまくる毎日だった。米兵のような生活を送っていた自分は流石に親に怒られてしまった。
「ゲームして時間を無駄にするくらいならバイトしたら?」
この一言から地獄の労働生活が始まってしまった。銃を向けそうになった。

夏、ガキと労働


高校2年の夏、まず手始めに地元の汚いスーパーの建物内の端にあるタウンワークを持って帰ってきた。気になったこと以外興味0の自分は
「やってみたい!楽しそう!」
のやの字もなかった。その後もだらだらとアプリや求人雑誌を見ていると、地元の友達が一緒に面接に行こうと声をかけてきた。
スーパーの品出しで働くことになった自分は、内心少しワクワクしていた。先輩や同期の高校生たちと仲良く頼りあいながら働けると思っていた。
現実は残酷だった。
時間の逆算ができない自分は、高校が終わる時間とシフトの噛み合わせをうまくできなかった。
「今日少し遅れます」
このフレーズを何度店長に言ったか分からない。IPhoneだったら「き」と打てば一発で変換できそうなくらい言った覚えがある。
最初は慣れなかったのでメモを取ろうと思い、メモを持っていくとメモが取れない。見返すと甲骨文字でまるで意味をなしていなかった。
とにかく先輩の後を追って業務を覚えるようにして何とか基本作業はできるようにした。

バイトのルーティンとしては
17:00 ドリンク補充、豆腐やこんにゃくの見切り
18:00 買い物かごやカートの整理
20:00 値札の入れ替え
22:00 閉店作業(カートやかごを店内に直したり、チラシの張替えをする)

17:00~のドリンク補充で大きい台車にまとまった飲料を運んで腕がちぎれるかと思ったが、人間の腕は意外と丈夫だった。
このスケジュールを見てもらえればわかる通り、暇だ。
お菓子売り場に行って「これ今度買ってみようかな」と悩んでみたり、売り場を散歩して「このお客さん今日も来てんな」と思ったりしていた。挙句の果てには30分くらいトイレにこもって携帯をいじっていたことだってある。
先輩も愛想のいい先輩と悪い先輩がいた。
愛想の悪い先輩と一緒に業務をこなすと時計の針が時間が経つのがいつも遅いのにさらに遅く感じた。長針と短針を見間違えているのかと思った。
緊張もほぐれ、徐々に一緒に品出しをしている先輩も舐め腐るようになり、先輩に嫌な仕事を押し付けたりしていた。最悪な新入りのガキが完成してしまった。
慣れてきて業務を淡々とこなしている顔をしていたがちょこちょこ、いや頻繁にミスが目立った。飲料売り場の冷蔵庫の温度を出勤してからチェックするのだが、チェックをしていなかったり、温度と名前を書く欄に名前を書いていなかったり。3回目以降の社員さんの顔は呆れを通り越して、しわくちゃになり5歳くらい老けていた気がする。

あくのそしき

1か月が経ったくらいのことだった。高校で部活をしていないということを店長が知っていたためシフトを鬼のように入れられ始めた。
今考えると全く意味がわからないのだが、シフトを提出した覚えがない。
出してと催促された記憶もない。もしかしたら俺を労働させるために現れた悪の組織だった可能性がある。
まぁ別に暇だったのには変わりなかったので文句を言わず最初は言われたとおりにシフトに入っていた。週3~4くらいだったのだが学校に行くので精一杯だった自分は多いなと思っていた。
流石に面倒になってきた自分は学校行事の名を借りて、バイトをサボりにサボった。
「今日体育祭の準備があるのでバイト間に合わなそうなので休みます」
「今日文化祭準備があるので…」
使える言い訳の手札を全部使った。

低空飛行


そこで文句を言わずに入っていたせいか、申告しなかった自分も悪いがテストの1週間前でも平気で同じペースで危機感とともに働いていた。
段々と阿呆らしくなってきた。彼女なしほぼ男子校の高校生が給料を使う先はゲームだった。バイトをする前は休日も友達と遊ぶことなく家に引きこもっていた自分は無料でできるゲームにわざわざ課金して、実家暮らしにもかかわらず働いて使う先がゲームかコンビニ。
「なんのためにバイトをしてるんだ?」
私立高校だったので周りの友達はほとんどバイトをしておらず、働きに出たと思えば40代〜50代の女性からのクレーム。
こんなことなら別に俺1人辞めたって支障が出ない。

3ヶ月で辞めた。

このバイトをして明確にわかったことがある。この時期くらいから自分は労働やその他に対しての意識が全て低くなった。
そこからしばらくバイトをするのをやめた。
この経験から得たことは、中高から部活をしていない人間は大学生になってもバイトと勉強は両立できないケースが多いということだ。異論は認める。
高校生ながら知りもしない4~50のおばさんに、なぜクレームをつけられないといけないのか、ましてやその店舗の一番下っ端の人間だ。と思ってしまったのを鮮明に覚えている。

「労働はクソだ」



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