【受験社会③】新・学習指導要領における変化

こんにちは、ならんはです。
学習指導要領が改訂されたことにより、教科書のカリキュラムが変わるようですね。特に中学社会においても範囲となる用語が一部削除もあるようですが、大幅に増えているそうです。ゆとり教育の終焉に伴う学習量の増加だけでは説明がつかないような内容の変化や増加が見られます。
時事問題や現代社会に関する知識や用語をアップデートしていくのが社会科の良さでもあり大変な科目ですが、具体的にどうアップデートしていけばよいのか参考になれば幸いです。

何が変更になったのか?

・世界史内容の充実
アレクサンドロス大王の東方遠征
モンゴル帝国の歴史
ウィーン会議 など
・日本の領土に関する記載が明確化。
・現代の社会情勢に合わせた用語の増補および時事的な用語
・ベージ数や太字の数が増えた。

高校社会のカリキュラム変更に伴い、高校接続を見据えた指導の形態になっているともいえます。

新しく教科書に出てきた用語の紹介(一例)
【地理】極夜
「白夜」だけでなく、極地域において冬に太陽が沈み続ける現象である「極夜」も教科書に掲載された。
【地理】減災
いう語に対して「減災」と呼ばれる、災害を完全に防ぐというよりどうやったら最小限に抑えられるかという考えから減災という言葉が使われるようになった。
【地理】USMCA
NAFTAの失効により、2020/7から新たに結ばれた自由貿易協定。南米のMERCOSURも併せて確認。
【地理】Iターン・Uターン
地方創生のキーワード。地方で働くことのニーズが増えてきている。
Iターン:都市生まれ→地方で働く
Uターン:地方生まれ都市で勉強など→出身の地方で働く
(ちなみに)Jターン:地方生まれー都市に出る別の地方で働く
【歷史】隈板内閣
日本初の政党内閣。「日本初の本格的な政党内閣」である原敬との違いに注意。
【歴史】台場
砲台がかつておかれていた場所のこと。
【公民】SDGs
持続可能な開発目標(Sustainable Development Goalsの略)
環境・経済・社会の発展を目指し、世界中のありとあらゆる場所での格差をなくすための17の目標。
テーマ例:貧困、教育、環境、技術など
【公民】LGBTとの対比でSOGI
Sexual Orientation Gender Identityの略。LGBTはセクシャルマイリティを中心とした用語なのに対し、SOGIは性に関する全般を指す用語。
【公民】エシカル消費
日本語訳して「倫理的消費」とも言われる。地域の活性化や雇用など、人や社会・環境に配慮した消費行動のこと。かつての南北問題を起因とする、発展途上国の農家などを守るための消費行動であるフェアトレードを広義にとらえたもの。エシカル消費には、フェアトレードだけでなく環境に配慮した製品、寄付付き製品、伝統工芸品、障がい者の作った製品などを消費することや、最近中学受験でもたびたび登場するようになった「地産地消」などを指す。

なぜ変更されたのか?

では、そもそもなぜ変更がされることになったのか。前回の投稿では文部科学省が出している「3つの学ぶ力」の例を挙げて説明しましたが、今回は視点を変えて説明していきましょう。ですので、思考力や表現力を深めるための工夫や仕掛けの部分と、実践的な学びにつながる部分については割愛します。特に「現代社会の情勢に合わせた用語や時事的な用語」のところから。

①グローバル化による「世界」へのまなざしと他者理解

グローバル化が進行したことで、海外から日本への人の流入だけでなく日本から海外へ出ていく中、「使える外国語」を学ぶ重要性が問われてきました。その一例がALL ENGLISHだったわけですが、今回は社会科という観点から議論してみましょう。「世界」についてどう多面的に理解していくかとなったときにはやはり社会科という科目は強いと思います。一つは、世界に関する地理・歴史・公民(社会)のあり方を学ぶ科目が社会科であること。そして、それを義務教育の途中である中学生という課程で学ぶことの必要性が増してきたことにあります。ちなみに世界地理はもともと中1で習う単元でありますが、今回中1単元に「時差についての学習」が盛り込まれることにもなっています。
また、世界史の内容も比重を増したと言えます。もともと中学生で学習する世界史内容といえば、古代四大文明、ローマ帝国の成立から十字軍、ルネサンス、大航海時代を経て宗教改革と近代市民革命までのところの大まかな流れを掴むことでした。日本と関連するところだと大航海時代は、鉄砲の伝来やキリスト教の伝来へと繋がってきますし、近代以降ですと日清戦争や日露戦争そして第一次世界大戦から第二次世界大戦までの一連の戦争は世界との関わりをもつことは言うまでもないでしょう。これは、近代において「国家」という概念が形成され、対外的に領土拡大をしていく帝国主義の歴史ともいえます。そこからさらに、上記の内容が増えるわけですから、中学の社会科担当も世界史の内容を復習しなくてはなりませんね。
公民の分野においては、さらに多岐にわたります。世界の国々における社会や政治、文化、産業、経済など現在に注目した「世界へのまなざし」がよく現れる分野ですね。特に宗教に対する学習(高校での倫理などの接続?)についてはイスラム教だけだったところに、キリスト教や仏教を含めた世界三代宗教の内容も扱うようになりました。より「自分達とは違う」宗教に対する理解を求められていることが感じ取れます。

②「18歳選挙」の開始と若者の選挙率低下による主権者教育

平成初期から、20歳代の選挙率が50%を切るようになり(総務省HP参照)、平成29年度の選挙から18歳選挙が導入されるも、選挙率が40%ほどであったという結果を受けて、「若者に対して、政治への関心を持ってもらおう」という目的で学校教育においていわゆる「主権者教育」が行われるようになりました。総務省HPによれば、具体的には「社会参加の促進」や「政治的リテラシーの向上」が求められており、すなわち主体性を持ち自分でどこの政党に投票すべきかを判断できる主権者を育てることが大切だということです。
語弊を恐れず言えば、これからの社会を作っていく若者が投票に行かずして、若者に寄り添った政治は実現されないということです。高齢者の投票率が上がれば上がるほど、高齢者に寄り添った政策が行われるようになり(その方が国会議員に当選しやすいから)、社会福祉にかけられるお金が増えていくからです。
だからこそ、若者にも選挙に行って投票率を上げることで、質の高い教育や若者への優遇政策もしてもらえる可能性を上げましょう、ということなのです。
そのため、少しでも義務教育のうちから政治に対する理解や選挙の仕組みを学ぶだけでなく実際に政治をはじめとした社会活動に参加をしていく体験をする学習が展開されています。
話は変わりますが、主権者教育と同様に「法教育」というものが中学校でも導入されています。具体的な手法として専門家を読んだり、ロープレやディスカッション、模擬選挙や模擬裁判など様々あるようです(法務省の報告書参照)。
前節変更点の日本の領土に関して言えば、国際法や条約に関連づけて説明することもできますし、①での他国の法を理解するところでは、まさに歴史と関連させて宣言や憲法ができる過程だったり選挙に関する法律や参政権の歴史を扱うこともできます。他国との比較であれば、死刑制度や婚姻制度について学ぶこともできるでしょう。

③持続可能な社会とESD教育

SDGsとの関連で、最近注目されているのがESD教育です。本屋さんに行っても店頭にはSDGs関連の書籍や雑誌で1コーナーが埋め尽くされるほどですから、その重要性は理解していただけるのではないでしょうか。ESDとは、Education for Sustainable Developmentの略で、日本語訳すると持続可能な開発のための教育といったところですかね。簡単に言うと、SDGsの内容を社会科3分野などを総合的にそして多角的に学習していこうという事になるかと思います。
そもそもESD教育にはどのような学習を包含しているのか、確認しておきましょう。まず全体的なコンセプトとして、「環境・経済・社会の統合的な発展」があります。SDGsをベースとしたものですから当然ではありますが、1つ1つの目標やターゲットに焦点を当てるのではなく、SDGsの目標4「質の高い教育をみんなに」を基軸として教育という手段を使いながらすべての目標を達成・実現させるためのものであるといえます。

5.ESDで目指すこと
(1)持続可能な社会づくりを構成する「6つの視点」を軸にして、教員・生徒が持続可能な社会づくりに関わる課題を見出します。
  持続可能な社会づくりの構成概念
  1. 多様性(いろいろある)
  2. 相互性(関わりあっている)
  3. 有限性(限りがある)
  4. 公平性(一人一人大切に)
  5. 連携性(力合わせて)
  6. 責任制(責任を持って)

(2)持続可能な社会づくりのための課題解決に必要な「7つの能力・態度」を身につけさせます。
  ESDの視点に立った学習指導で重視する能力・態度
  1. 批判的に考える力
  2. 未来像を予測して計画を立てる力
  3. 多面的・総合的に考える力
  4. コミュニケーションを行う力
  5. 他者と協力する力
  6. つながりを尊重する態度
  7. 進んで参加する態度

※文部科学省HPより。

内容としては、エネルギー問題・環境問題・気候変動・生物の多様性・世界遺産や文化財・防災や減災・社会福祉・人権・ジェンダーなど幅広い分野が含まれています。
ESD教育を通じて、現代社会において起こっている問題や課題を知り、解決していくためにその地域においてどういった貢献ができるか周囲の仲間と一緒に考えて行動していこうというところが中心となります。


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