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映画「巴里のアメリカ人」を読む①

 
⚠︎︎ネタバレを含みます。あらすじ解説を短編小説風に書いてみました。映画の細かいところやツッコミどころも描いてみました。サークル活動で制作したものをそのままアップしています。このシリーズで、本編の映画にも原作であるガーシュウィンの音楽にも興味を持っていただければ幸いとの思いで書いております。

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〈メインキャラクター〉

 ジェリー(ジーン・ケリー):本作の主人公。アメリカ人。軍を退役した後もパリに留まり、かねてからの夢であった画家の修行を続けている。同じアパルトマンに住む、ピアニストで作曲家のアダムという友人がいる。いささか強引なところがあると思うが、人当たりの良い魅力的な男性。

 リズ(レスリー・キャロン):本作のヒロイン。フランス人。香水屋で働いている。ジェリーとは、ある晩のジャズバーで出会った。両親とは幼い頃に生き別れている。ちょっとばかりチョロい女性。

 アダム(オスカー・レヴァント):ジェリーの友人。ピアニスト兼作曲家。よく友人に振り回され、制作の邪魔をされる。本作屈指の苦労人。友人に有名歌手のアンリがいる。因みに、俳優がガチのピアニストなのでめちゃくちゃピアノが上手い。

 アンリ(ジョルジュ・ゲタリ):明るい性格のフランスきっての有名歌手。演奏旅行の合間に久しぶりにパリに帰ってきた。アダムとは友達。地元の喫茶でジェリーと知り合う。愛する人がいる。普通に今作の一番の良心、だがジャズの魅力には気付いていない。

 ミロ(ニナ・フォック):パリに訪れていたアメリカ人。ジェリーの絵に才能を感じ、パトロンになった貴婦人。あくまで絵の才能をかっているというが、ジェリーに惚れているのも事実。よく考えるととても不憫、しかし魅力溢れるしたたかな女性。
 
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〈ストーリー〉

1.パリのアメリカ人
 第二次世界大戦後のパリ。占領の抑圧から解放され、パリの街は以前の賑やかさと陽気さを取り戻していた。

 ───アメリカ人のジェリーは、軍を退役した後も祖国へは帰らず、この街に留まっていた。長年の夢だった画家になるためだ。気ままに街の何処かの絵を描いてはモンマルトルの道端で売っているが、売れ行きは決して良いとは言えない。そんなわけなので、暮らしは質素なアパルトマンでの地味なものだったが、案外悪くない。
 アパルトマンの下には近所の子ども達がよく遊びに来るので、風船ガムをあげたり、英語の歌やタップダンスを披露したりしている。
 階下には喫茶店があり、よく入り浸っては絵や音楽について語っている。音楽といえばそう、隣に住むピアニスト兼作曲家のアダムとは良き友だ。

 ───ちょくちょく押しかけてくるので困っているが、なんだかんだジェリーとは仲が良いアダム。アダム曰く、さしずめジェリーは『未来のレンブラント』。
 有名歌手のアンリは、アダムの友達だ。あるとき自分が作った曲をアンリに提供し、彼が舞台の上で歌ってから仲良くなった。アンリはフランスの大スターでツアーで各地を飛び回っている。対して、アダムの方はというと。最近は特に、めっぽう仕事が舞い込まないので困っている。大舞台で演奏をする夢と共に、今日も紫煙をくゆらせ、作曲活動に勤しんでいる。

 ───久しぶりに地元に帰ってくるとやはりいいものだなどと考えながら、アンリは歩いていた。
 しかしアダムの伴奏はよかった、また共に演奏をしたいなと思いを巡らせる。よく見知った喫茶の主人と久方ぶりの再会を喜んでいると、上にはちょうどアダムが在宅しているという。
 階下から声をかけると、アダムも気が付いたようで「すぐ降りるよ」と笑って踵を返した。
 

2.アダムとアンリ
 何やら浮かれているような面持ちで、アンリは
「この間はリズとジュアンレパン(アンティーブ岬の海辺のリゾート地)にいたんだ」
 と口を開いた。
 ふうんと相槌を打つアダムに、アンリは楽しそうに肩を揺らし、さらに続ける。
「そうそう、リズとコンサートにも行ったんだよ。彼女は初めての経験に目を輝かせていた」
「リズって誰なんだ?今で名前がもう二回も出てきたぞ」
 とアダムは問うた。よくぞ聞いてくれたというふうに身を乗り出したアンリはここぞとばかりに「純粋な子なんだ」「だがシャイじゃない、陽気だよ」「熱心な読書家だ」云々───という具合に、彼女のことを様々に形容して説いてみせた。アダムがその圧に気圧されてしまったのは言うまでもない。
 どうやら、彼女の父親がレジスタンス運動で捕まってしまったときに、アンリが引き取って育て、共に暮らした仲だという。
「そうして過ごすうちに、いつの間にか僕は、恋に落ちていたんだ」
 とアンリは言った。
 

3.ジャズは嫌いか
 金欠だと言いながら喫茶へやってきたジェリーは、店のピアノを弾いていたアダムを見つける。彼は即興で考えたジャズを弾いていた。
 いつものように「やあ」と声を掛ける。するとアダムは顎をしゃくって、奥で新聞を読んでいる男の方を示した。
「そうだ、紹介するよ。彼は僕の友達のアンリだ」
「ああ。存じ上げています、あなたの歌声は最高だ」
 ジェリーはそう言ってアンリの方へと歩み寄ると、手を差し出した。
 ジャズは野蛮だと言うアンリに、ジェリーは半ばむっとしながら質問を返す。
「では他に何がある?」
「彼はワルツが好きなんだ」
 アダムはそう言うと、先程までのジャズのリズムとは打って変わった、三拍子を刻む。
「ああ、古きウィーンだな!」
 とジェリーは頷いた。「ワインだ」「シュトラウスだ」と銘々の思い描くウィーンを言い合いながら、「やはりシュトラウスは最高だ!」と陽気にワルツを踊るのだった。

 

4.ジェリーとミロ
 モンマルトルの街角でいつものように絵を売ろうとするジェリーがいた。通りかかった貴婦人は軽く挨拶を交わしてジェリーの絵の前に立つ。
 暫くして「私この二枚が好きよ、頂くわ」と絵の購入を希望した。まさか買うと言われるとは思わなかったと吃驚したジェリーに、貴婦人は和やかに微笑み、名を『ミロ』と名乗った。
「お金はホテルにあるの」
 ミロはそう言うと、ジェリーを車に乗せた。

 その夜、わざわざ夜に約束を取り付けてまでジェリーを引き留めたミロに訝しげに問いただす。
「貴方は何故そう僕に肩入れするんです?」
 「私は貴方の絵を気に入ったの、きっとよい画家になるわ。ぜひ私に支援させてもらえない?」
 応援するくらいは良いでしょとミロは言う。ジェリーは「こんなことは初めてだ」と驚きながらも、彼女の真摯な申し出を承諾することにしたのだった。

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参考:
 映画「巴里のアメリカ人」(1951年)
 巴里のアメリカ人 映画 画像/Web検索

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