2020年版「わたしの口に刺身が届くまで」
2006年の暮れ、祖母が自分の口で咀嚼ができなくなり、点滴になったとたん3日で逝ってしまったことをきっかけに、専門学校と大学で「わたしの口に刺身が届くまで」と言う授業をやってきました。
14年目になります。私自身もたくさんの気づきがあって、一度まとめることにしました。
コロナ禍で、人との接触を少なく、家で過ごす時間が増えた。それでも食べるものはいつだって必要で、テイクアウトやuber eats、amazonを使って家まで届けてもらうと、移動にエネルギーも使うし、プラスチックゴミも増える。食べることを考えると、食べ物そのものの生産や加工のことだけでなく、輸送や保存のことも考えることになる。今、目の前にあるものの生い立ちや背景を知ると、自分の環境は一体どこまでで、どこに関わって何ができるんだろう?と思う。ステイホームの今、そんなことを考えるのはちょうどいいのかもしれない。
それでは2020年、常葉大学造形学部2年生23人と行う「わたしの口に刺身が届くまで」の授業の様子を記録していきます。
【第一回・授業の進め方】
①くじ引きによる3〜4人の1グループで「わたしの口に刺身が届くまで」を模造紙(1091mm×788mm)に、図解。
②各グループごとに、描いた図を発表。
③気になったことを調べてみる。
10月8日(木)
蜜を避けるために広い教室に、テーブルで6つの島を作って、くじ引きで決めたグループごとに着席した。樋口勇輝さんに映像の記録を撮ってもらうので、声が籠もらないよう、私も学生も初めてマウスシールドをした。このところ、人がしゃべる口を見て話す機会が少なかったので、なんだか新鮮。
いきなり、「それでは、みなさん。テーブルにある模造紙に、『わたしの口に刺身が届くまで』を図解してください!」と伝えた。30分後、6グループの描いたものを並べて白板に貼った。
*(映像に残るからと緊張して、口頭で伝えたらタイトルがばらばらになった。ガックリ。↓)
6グループの描いたものが、ほぼ同じ。海で釣る(釣竿または網)→漁港→せり→出荷→加工(スーパーか飲食店で切る)→買う→食べる。一人の学生が「テレビで見て、知ってることだね。」と言った。
次に、疑問点をスマートフォンで検索してもう一度、模造紙に描いてもらった。
Fグループさん。
「川魚って刺身で食べないよね?」
「寄生虫がいるからじゃない?」
「海の魚だっているでしょ?なんだっけ。アニサキス?」
「そもそも生で食べるの、いつから?日本だけしょ?」
と調べた結果、調味料の発明は大きいこと、刺身を食べるのは文化だわ!に行き着いた。醤油、すごい。
そっかぁ。現代は冷凍処理をすることで寄生虫を死滅させられるんだね。
Eグループさん。
「卵って、どんだけ生まれるの?」
「どれくらいの確率で生き残るの?」
「どこ、泳いでるの?止まると死ぬんでしょ?」
カツオの泳ぐ時速の比較対象がウサインボルトになってる。カツオが食べる「おきあみ、いか、たこ、いわし、かに、とびうお」を人間も食べるね。卵一つの実寸が直径1mm。10万粒〜200万粒の卵から生存率0.001%で育った4年目くらいのカツオが食べ頃だそう。私はこの日、夕飯で明太子を食べながら、一粒一粒をあらためて「卵か。」とじっくり見た。
Aグループさん
「マグロの平均寿命、何歳?」
「人間の平均寿命は?」
「マグロ、何食べてるの?」
植物プランクトンと動物プランクトンがいるのを、私も初めて知った。太陽光と水中の栄養分で光合成をして有機物をつくる植物プランクトンを、動物プランクトンが食べる。魚が動物プランクトンを食べて、人間が魚を食べる。これまで学生たちと話すと、人間は海中の食物連鎖に横入りしているみたいな気持ちになったけど、植物プランクトンすごい。「でも、太陽がいちばんすごいっすよ!」と学生が言った。
<追記>
教室で調べごとをするのに、インターネット検索でオッケーとは思ってないです。サイト制作者のフィルターを通した情報だから、検索の仕方によっては情報は偏るでしょう。また、私は陶芸家ですし、広範囲な内容に稚拙な誤りもあると思います。適宜、おしえていただくとありがたいです。