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コンサートホールでドラムセットを演奏するにあたって、機材選定を色々試行錯誤した話

こんにちは。マナセです。
今回は「ドラムセットの機材選びについて」ということで、ちょっとマイナーな話題をお届けします。

私は別に機材オタクでもなんでもないのですが、たまにはドラマーっぽい拘りも皆さんに知ってもらえたらいいなーというエゴと、「コンサートホールでのドラムス演奏」に関するノウハウとか発信記事ってなかなか見当たらないなと思ってのモチベーションで執筆しています。

さて、先日無事に終演致しました シルバーミレニアムフィルハーモニー(銀フィル) にDrumsパートとして参画させていただきまして、最終的には以下の画像のようなドラムセットで全ての曲を演奏いたしました。

まぁ、変わったところもなくスタンダードなセットの組み方ではあるのですが、このセットに至るまでいくつか試行錯誤した過程がありまして、せっかくなのでそのまとめを発信したいと思います。

アマチュアドラマーとドラムセット

ドラマー以外の方にも事情を理解していただくために、機材選びの前提条件となる背景を簡単に説明させてください。

機材の用意は「①自分の楽器を持ち込む」「②レンタル業者に依頼して調達する」「③レンタルを利用しつつ自持ち楽器を組み合わせる(①と②の合わせ技)」の3つに分かれます。

特に、①の自持ちの機材だけで完結させる場合は、ドラムセット一式を自身で所有しており、それに準じた運搬手段(はっきり言えば車)を用意できることが必要になります。
そして音楽のことを考えるならば、上記に加えて「その音楽で演奏するにふさわしい音が出る機材を所有している」をことも条件になってきます。

潤沢に楽器を所有しており運搬手段にも問題ない場合は良いのですが、私のようなアマチュアだとそうもいかずでして、私の観測範囲では、多くのアマチュアプレイヤーが③のようにレンタルを援用しつつ自持ち楽器を組み合わせて機材を賄っているように思えます。

レンタル業者によっては様々なラインナップのドラムスを扱っていることもあり、完全にレンタルに依存する②でも問題ないシーンは多いですが、やはり細かいところ・痒い所に手を伸ばすにあたっては、自分で欲しい音の楽器を持ち込んでる人が多いイメージですね。

というわけで、今回は「この音楽を演奏するにふさわしいセット作り」に挑んでみました。以下、いちアマチュアのドラマーなりの考えになりますが、ご興味ある方は是非お読みください。

演奏会の概要と大まかな方針

編成

オーケストラ(弦楽器・管楽器)にコーラス(合唱)とバンドセクション(グランドピアノ、エレキギター、エレキベース、ドラムス)を加えた100人規模の編成で、コンサートホール上でPA付きの環境で演奏しました。

まぁとにかくバラエティに富んだ編成でして、扱う音域も上から下まで満遍ない印象です。自分の音の立ち位置をはっきりさせて、客席にも舞台上にも、聞こえるべき音を聞かせる努力が必要だな、というのが真っ先に考えたところです。

今回演奏する曲たち

セーラームーンシリーズの劇伴音楽が中心で、原曲に忠実なアレンジでした。故に「90年代のあの音(伝われ)」を頭に留めておくことにしました。

大まかな指針

今回オーケストラで演奏するにあたって、念頭には私の尊敬するアレンジャー・プレイヤーである、ながはなさんの記事がありました。たくさんの示唆に富む記事ですのでぜひお読みください。

詳しくは上記記事にお譲りするところですが、「大きい箱で音がモヤつきやすい環境であれば、コンパクトなセットで音をまとめる努力が必要」という方向で理解しました。

選定と試行錯誤

試奏会

ホールが所有しているYAMAHA Rock Tour Customで演奏しています。スネアドラムはLudwigのLM400を持ち込み、ジェルミュートを貼っています。

シンバルは ハイハットにZildjian Newbeatの14"、 クラッシュにA Zildjian の 16", 18"と22"のライドがついており、SABIAN AA の10" スプラッシュを持ち込みました。

実際どんな音かは聴いていただくのが早いですね。

試奏会時点ではそんなにサウンドに課題感がなかったところだったのですが、これが何によるものかはあまり分析できていないのが正直なところです。(バタバタと演奏していたので、サウンドにまで気が回っていなかっただけかもしれません)

初回練習

試奏会に続き、今度は本番で利用するホールでリハです(これはこれで大変贅沢なことです。この決断をされた運営の皆様に感謝)

モデルはPearlのMR Serieseだったと記憶しています。バスドラムについては、よく普及しているサイズの22"からひと回り小さく20"のモデルを選定し、トムトムはひとまず据え置き、12"、13"、16"のツータム・ワンフロアの構成で挑みました。スネアドラムも変わらずLudwig  LM400を持ち込んでいます。

ここでいくつか大きい問題が発覚しまして、本腰を入れて機材の選定に入っていきます。

・シンバル類が響きすぎる
→ANATOLIAN Ultimate シリーズでご用意いただいた16"と18"のシンバルたち。今思うと適切にミュートすべきでした
・スネアドラムの胴鳴りがエグくて音がまとまらない
→加えて、演奏途中まで鍵のじゃらじゃらミュートを置いてたのでそれも悪影響。これは演奏中に不要と判断してジェルミュートに切り替えましたが、それでもなおまとまらない

上記二つに関しては確実に対処が必要な状況でした。

機材の見直し

その後も数回練習を重ねて最終的に至ったセットがこちらになります。
初回練習で使ったセットはバスドラムの響きがあまり好きじゃなかったので、別のモデルに変更しています(正確にいうと、希望したモデルの在庫がなかったので第二希望のセットを選択したところ、案の定好きな音じゃなかった、という状況)。

セット(レンタル):
Pearl - Reference RF
20"のB.D.をご用意いただき、音の輪郭を出すためにサウンドホール付きのフロントヘッドにしてもらいました。私がよく叩いているYAMAHA のレコーディングカスタムと迷いましたが、こちらを試してみてしっくりきたので採用となりました。

トムトム(レンタル):
こちらも太鼓の口径を落とし、10", 12"のトムと、14", 16"のフロアタムを加えたツータム・ツーフロアの構成で挑みました。
バスドラムの口径を落としたことで、太鼓の口径も小さくまとめた方が収まりが良く感じたため、10"を加えています。

一方で、やっぱりどっしりした低い音も欲しいぜ、という気持ちも捨てきれず、16"は残留させ、2フロアにしています。
フロアタムたちはリングミュートと養生テープ・マスキングテープ・楽器クロスを用いてバチバチにミュートしています。

メインでは10", 12", 14"のタムで演奏し、ここぞというところで16" のフロアをドシっと鳴らしています。

スネアドラム(持ち込み):
13" あたりの小さめのスネアを用いることも検討しましたがいい感じの楽器が見つからず、たまたまメルカリで見つけた中古の14" x 3.5" のピッコロスネアを使うことにしました。

こちらはPearlのフリーフローティングシステムを用いたピッコロスネアの代名詞的なモデルのようです。

胴はメイプル、フープはダイキャストでピッコロなのに骨太な音。響き線もPuresoundのものに交換し、打点がはっきり出せるよう、フロントヘッドはCSコーテッドを用いています。

結果的にかなりいい音になったのでお気に入りです。ダイキャストフープのおかげか、はっきりくっきりとした存在感のある音が出ますし、クローズドリムショットの抜けも抜群です。

リハではリングミュートをかけていましたが、当日ホールの響きを見ながら、最終的にはジェルミュートを載せるくらいで落ち着きました。

音のサンプルをイシバシ楽器が出していたのでこちらをどうぞ。私はシンプルにハイ〜ミドルくらいにチューニングしています。

シンバル全般(14" H.H.と 16" Crashのみレンタル、ほか持ち込み):
ANATOLIAN Ultimate シリーズからZildjizenの A Custom シリーズに変更。K Custom とも迷ったのですが、ポップスやるなら明るめのほうがよかろう、というあたりでA Customをチョイス。レンタル業者にダメ元で頼んだら在庫があったのでラッキーでした。

ハイハット除く全てのシンバルにはCympillowを用いて美味しい音を漏らさず鳴らせるようにしておきました。

実はそこそこな値段のするCympillow。贅沢に5つ使います。

シンバル(左のクラッシュ、持ち込み):
とにかく立ち上がりが遅くてモヤついてしまっていたので、口径を落としつつ、アタックはあるけどサスティンは短い系のクラッシュを一つ用意することにしました。Zildjian の14" A Fast Crash を用意しました。

こいつをメインとして左に配置し、右には16” A Custom Crashを合わせました。

シンバル(右のクラッシュ、レンタル):

この16"のクラッシュも結構派手になってくれるため、裏面に放射状にマスキングテープを2本貼っています。

シンバル(ライド、持ち込み):
23" A Zildjian 25th Anniversary Ride を持ち込みました。ポップスやるから基本は明るい音でいいんだけど、落ち着いた響きも欲しいなーというあたりで口径大きめのライドです。
こいつも良く鳴るので、裏面に放射状にマスキングテープを4本貼っています。

シンバル(その他、持ち込み):
SABIAN のParagonシリーズの10"スプラッシュ1枚と、PST X DJs 45 Crash (12")を1枚合わせています。

Paragonシリーズは自分好みの明るく落ち着いた音があり、スプラッシュで困ったら必ず加える一枚ですね。

DJs 45 クラッシュは、それなりに攻撃的な音のするエフェクトシンバルですが、どうしてもこの音が欲しいシーンがあり、鳴らす回数は少ないものの登板したかたちです。

フットペダル(持ち込み):
この演奏会のリハではずっと SONOR のPerfect Balance ペダルを使っていたのですが、最後のリハを機にDW 9000 XFに切り替えました。

今回の劇伴音楽のようにシンプルなエイトビートをひたすら刻むにあたって、一定の音量感で粒立ちよく演奏し続けるためには、ベルトよりチェーンの方が良いかと思っての選択でしたが、最終リハでこちらに変更して問題なさそうな感触を得たため、本番でも採用となりました。これに関しては私の技量不足も大いにあるところと自覚していますが、ペダルに助けてもらったかたちですね。

その他:
PA環境で1本マイクありの状況で、クリアソニックを用いてアクリル板で周囲から半隔離された状況でした。正直音響に詳しくはないのですが、背後にモニター用のスピーカーを置いていただけたおかげもあり、スムーズな演奏ができました。

見直した結果

我ながら結構いい音に仕上がったのではないかと自画自賛しておりますが、最終的にどうであったかは実際にコンサートをお聴きになった皆様のお気持ち次第、というところでしょうか。

というわけで、全部組み合わせた最終形を再掲。

お礼・最後に

機材選びにあたっては、多くの有識者に相談・アドバイスをいただきまして、大変参考になりました。また、演奏会でレンタル楽器を利用するにあたって、私のわがままな要望を最大限叶えていただいた演奏会運営チームの皆様は頭が上がりません。この場を借りて改めてお礼申し上げます。ありがとうございました。

そんなわけで、この記事があなたのドラムセット音作りの一助となれましたら幸いです。

おまけ:
スティックは VATERのUniversal を使っていました。スティックワックス塗ってもリハ中に良く落とすので、絶対落とさない気合いと共にグリップを巻きました。

かいあって、もちろん本番では落としませんでした。PearlのタイトグリップTG-2、おすすめです。


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