火事
子供時分の話。
夜自室で寝ていると遠くで消防車のサイレンが聞こえてきました。
普段は眠りが深い方なので夜中に起きることはあまりないのですが、その日は音で目が覚め、頭頂部に何かの気配を感じました。
ベッドのヘッド部分は壁についていましたので、そもそも頭頂部にあるのは板なんですが。
さて怪異現象には慣れていましたが特に金縛られることもないので身を起こし振り返ってみると比較的近所に住む同級生のS木君がいました。
首から上のS木君。
多少驚きましたが話を聞こうと思いじっと見ておりますと、S木君が泣きながら話し始めました。
「ぼくは火事で死んでしまった。クラスのみんなに宜しく伝えてほしい」
あのサイレンは彼の家を鎮火するために向かっていたのかと納得し、最期の挨拶に来てくれたことに感謝を伝え成仏を願いました。
翌日、学校ではS木君が旅立ったことでもちきりに。
とはいえ見える見えないの話は秘密にしていたのでよろしく伝えるというミッションは果たせぬまま今に至ります。
あとから聞いた話ですが、火事の際S木君の寝ている頭上に柱が焼け落ち、頭と体が分断されてしまっていたのだとか。
それで首だけで来てくれてたんですね。