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一反木綿

良く妖怪を見ていた、というと大体の方が驚く。

特に小さい頃の話なので夢だったのではないかと思われるかもしれない。

私としては夢でもなんでも良いのだけれど、あれほど毎日見て、遊んでもらっていたので空想と片付けてしまうのは彼等にも申し訳ない気持ちになる。

色々見てきた中でやはりキャッチーなのが一反木綿だ。

ゲゲゲでおなじみの白い反物で、切り刻まれても一昼夜水に漬けておくと元通りになるという、九州地方の妖怪。ということになっているが、私が見たのは東京のど真ん中。

最初はもちろんトイレットペーパーでも浮遊しているのかと思ったが、どうも意思のある飛び方をしている。そしてトイレットペーパーよりもずっと幅が広い。

水木御大の描かれる一反木綿は尻尾?に向かって細くなっているが、私がみたものは薄く灰色がかり少し汚れた白い反物そのものだった。

結構な遠くで飛んでいるはずなのに、やけにくっきり見え、左に向かっていったかと思うと右に戻ってくる。上下にも動くしくるりと弧も描いた。妖怪辞典で見たものと変わりない一反木綿だと確信した。

しばらく茫然と眺めていると、スーっと立ち昇りそのまま空に消えてしまったのも妖怪らしくて素敵だと思った。

これが、一回目。

その後も何度か大都会を低空飛行している一反木綿を見かけたし、物心もいいだけついている状態だったのでやはり間違いないと思う。しかし環境の変化を好まないのか、都市開発が嫌いなのか、次第に遭遇することはなくなった。

今でも空を見上げると白い反物が飛んでいやしないかとちょっと期待するのだが、20代前半以降は見ていない。

絶滅しないでいてもらいたい。

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