『かもめ食堂』を観る
夏の旅の序盤で現地の日本人ガイドの谷口さんが『かもめ食堂』のロケ地の話をしていた。そのときは映画のことは露とも知らず、ふ〜んと聴き流してしまった。旅を経て、あの場所の(夏の?)ゆったりとした人とか自然、街並みにすっかり魅了されて、旅を終えてから数ヶ月、この映画はアマプラのウォッチリストに入れたままになっていた。
話の舞台は、ヘルシンキの街角にオープンした日本人女性による日本食の食堂。もはや説明はこのぐらいでもいいかもしれないと言うほど、大きな山場もストーリー性も無くて、「眠くなるような日常」が続いていく感じ。
(実際、ここ1週間ほどの疲労もあって途中で2回寝てしまったので2回巻き戻しました。2回目はエンディングで起きました…笑)
でも、これが意外に心地良かったりもした。
話の途中で出会い、主人公の店を手助けしていく2人の日本人女性がいる。彼女たち3人がなぜここに来たのか、なぜ店を手伝うのか、なぜフィンランドなのか、説明されないモヤモヤもたくさん。
けど、その説明されない部分を補おうとして、あの場所に魅了された自分の体験が引き出されて、物語と結びつく。
「ここならお店をやっていけると思ったんです」
それしか語らない主人公についても、なんとなく理解できるような気がする
フィンランドの料理は(それほどたくさん食べたわけじゃない)、割と日本人の口にも合うなと思っていたけど、あれは素朴さみたいなものなのかなとか。それは逆の立場でもそうなのかなとか。
あの場所の(夏の?)人たちってなんかこう余裕があって、ゆったりしていて心地よさそうに見えるんだけど、それは夏の長い日とか壮大な自然が影響してるんだろうなとか。
自分の体験が、物語を補完する。
各所にちりばめられたセリフについて考えるのもいい。
「みんな何かを食べないと生きていけないんですね」 「誰だって、悲しい時は悲しいし、寂しい時は寂しい」 「(無くなったカバンに)何か大事なものは入っていたかしら?」
(だいたいのニュアンスで)
退屈でとっても心地いい映画でした。ぜひ。