福島第一原発 廃炉紀行②

前回の日記↓↓↓


車内の線量計の数値が僅かに大きくなり、いよいよ現れる本丸に期待感も増していく。


第一原発 本丸へ(10:40-11:40)

関係者以外立ち入り禁止の区域へ入った。案外、放射線量は上がらない。敷地内には、作業着のみの人もちらほら。

聞くところによると、敷地内のほとんどの場所は現在は防護服なしで歩けるそう。防護服は、汚染物質が直接衣服に付着してしまうのを避けるためのもので、放射線を避けるものでは無いから、だそう。敷地内の広範囲にあった放射線を放出する物質は、現在おおかた取り除かれていて、ダストが空中に舞ってしまうことは無いそうだ。

たしかに放射線量を見ても、敷地に入る前よりも少し下がっているようだった。
【約0.1〜0.3 μSv/h】

少し進んで、入退管理棟に到着。入口から入ってすぐに、身体チェック。金属、放射線汚染物質の付着などを検査する。

個人に番号のついたカードキーのようなものと線量計が割り当てられる。この2つを持つことで入場ができ、入場から退場までの放射線被曝量が
個人データと紐づいて記録される。医療機関でのレントゲンなどの被爆を除いて、生涯の放射線被曝量を累積計算できるシステムになっている。

検査を終えてベストを着用して、再びバスへ。海沿いにある1〜4号機の方へ向かう。

敷地中央まで来ると、線量が上がってきた。
【約0.3〜0.8 μSv/h】

1号機の100mほど手前まで来ると、さらに増加。
【約10 μSv/h】

1号機手前でバスを降り、小高い場所でフェンスに少し身を乗り出すように1〜4号機を眺める。今日は、浜通りでは珍しい大雪が降っていて、空は曇り、奥に見える太平洋も薄黒い。
【約60〜70 μSv/h】

いちばん近くに見える1号機は、上部の構造体が水素爆発によって大きく破損している。使用済み燃料を取り出すために原子炉建屋の上部を覆う大型カバーの完成に向けて、外側に新しい構造体が立ち上げられているところだった。

間近で見る各号機を目の前に、
「こいつらは人間の手に
 負えるものなんだろうか?」
と少し思ったりした。大きな鉄の塊のような構造物の足下で、巨大な無人のロボットが、日々戦っている。

その場所で、参加者全員で記念撮影を行い、かなり寒いのでもうバスに戻ることになった。


5、6号機の方にもバスで移動し、見学した。

穏やかそうなご老人が参加していた。少し北にある出っ張った陸を指さしながら、
「ね、じいさん覚えてる?!
 あのでっぱりの向こうで昔泳いだじゃない」
と、上擦る声。

「懐かしいね。
 これが見れただけで、今日は来て良かったわ」

 

帰路へ

またバスに乗り、入退管理棟に戻り、ALPS処理水の入ったサンプルを見せていただいた。無色透明。何も変わらない、普通の水に見える。このALPS処理水には、水との分離が難しい放射性物質、トリチウムと炭素16が残っている。ただ、これらが放射するのはβ線。β線は本来薄い金属板などでさえぎられるが、トリチウムのβ線はエネルギーが弱いため、紙1枚でもさえぎることができる。

ALPS処理水を使って海産物などを飼育するのにはどんな影響があるのか確認するため、ヒラメなどの飼育施設も設けられていた。ヒラメに吸収される汚染物質の量はある一定のところで止まり、通常の海水に戻すと、ヒラメは自力で汚染物質を外に吐き出すことも知られている。


身体に汚染物質が付着していないかをチェックし、線量計とカードケースを返却する。線量計には、【0.01 mSv】と表示されていた。

約1時間。少しの間は放射線量のかなり高い場所にもいたが、これで歯科レントゲンを1〜2回受けるのと同程度の被曝量。

被災当時の強い放射線量のイメージがまだ残っているのか、案外被爆してないんだな、と思った。事故が元に戻ることはないけど、これは可能な限りの除染をしてきた結果。


メインで案内いただいた東電の方の真摯な姿勢にも安心感を抱いた。

  • 汚染水は何度も希釈をして、基準値を満たすようにして排水すること

  • 原発での労働者が快適に生活できるような整備を行っていること

  • デブリや使用済み燃料の除去には細心の注意を払っていること

  • 各号機の無人ロボットの生産に地元企業が参加し、地元産業を衰退させないこと

など、原発のこれまでとこれからを参加者に理解してもらい受け入れてもらうことを組織として徹底する姿勢がいろんな場面で感じられた。


少しづつではあるが進行し続ける廃炉への動き。もう見られないかもしれないものを見られてよかった。





少し急ぎ気味の結びでしたが、長編紀行、最後まで読んでいただきありがとうございました。

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