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W・Wenders に憧れて

カメラを買う切っ掛けはいろいろあるけれど、案外多いのが、「憧れの写真家××××さんが使ってるから――」という動機。

機種として多いのは、ペンタ67(6×7)やプラウベルマキナ67、あるいは2眼レフのローライフレックスなどだろう。

僕にも、そういう動機で買ったカメラがある。フジカG617(パノラマカメラ レンズ固定式)だ。憧れの写真家は Wim Wenders 。もっとも、ヴィム・ヴェンダースが使っているパノラマカメラは、フジではなく、リンホフテクノラマ617(おそらくレンズ交換ができる機種?)だったと思う。

フジカG617は、20年近く前(?)、東上野の中古カメラ店で購入した。リンホフを買う予算が足りなかったので、フジのパノラマにした。(富士フィルムの名誉のために書くけれど、フジカG617も写りはとてもいい)

ヴィム・ヴェンダースは、写真家としてよりも、映画監督として名を知られている。代表作は、『パリ、テキサス』、『ベルリン・天使の歌』、『さすらい』等々。『パリ、テキサス』と『さすらい』は、いわゆるロードムービーの傑作である。

いっぽうで彼は、日本人の映画監督小津安二郎の作品に心酔しており、小津の代表作『東京物語』に対するオマージュらしい『東京画』という映画も撮っている。映画『東京物語』の舞台の一つになった広島県尾道市を、スチールカメラで撮影している。

ヴィム・ヴェンダースはドイツ人だが、彼の写真は、写真史においては、アメリカン ニューカラーのジャンルに分類されるようだ。ヴィム・ヴェンダースも他のニューカラー世代の写真家たちのように、平原に放置された昔懐かしのアメ車や、廃墟と化したレストランやモーテルなど、撮影時より少し前のアメリカンシーンを被写体にしている。
だが、彼の写真は、他のニューカラー世代の写真家たちの写真よりも、明らかに湿度が高い。『尾道への旅』の尾道水道の夕景を撮ったパノラマ写真(画像2枚目)などは、あからさまにメランコリックですらある。

ちなみに、『deja-vu』第3号には、ヴィム・ヴェンダースと写真家の藤原新也さんの対談が掲載されている。その対談の中でヴィムは、『Written in the West』で撮影したアメリカ西部について、「ふーっと(風が)吹くと、粉になって消えてしまうような、はかなさがある」と発言をしている。ヴィム・ベンダースの感性と日本人のそれには、通底する点があるのかもしれない。ちなみに、『尾道への旅』には、パートナーのドナータ・ヴェンダースがライカで撮ったモノクロ写真(粒子の荒れた)も、数多く収められている。これがまた素晴らしい。

↓ ヴィム・ヴェンダースの公式サイト

Wim Wenders | Welcome to the official Site of WIM WENDERS

ヴィム・ヴェンダースは二年ほど前、ニューカラーの写真家たちに強い影響を与えたと言われているアメリカの画家エドワード・ホッパーの絵画を動画に再構築した作品(movie ではなく3D installtion と紹介されている)を作っている(下記のURL参照)。
https://www.youtube.com/embed/wxRT_eXGYvg?feature=oembed                                                                                                                                                                                                                                                                          

さて、Wim Wenders の映画の最新作は、今年のカンヌ映画祭で役所広司さんが男優賞を受賞した『Perfect Days』。
東京の渋谷(のトイレ)が主な舞台で、役所さんは、トイレの清掃員の役だそうだ。先ごろ、YoutubeにTrailer がアップされた。
https://www.youtube.com/watch?v=HTgWYojq-z8

あらすじによれば、主人公の日々の愉しみの一つは、古い小さなフィルムカメラで木々の写真を撮ること。
Trailerのちょうど1分あたりに、そのフィルムカメラがチラッと写っている。オリンパスのμ(ミュー)PANORAMAかもしれない。
ただ、現在のところ『Perfect Days』は日本では公開未定らしい。どうにか観られるようになりませんかね?


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