上野聚楽(西郷会館)と浅草観音温泉、浅草ボウル Voigtlander Nokton classic 40mm F1.4 S.C
昔撮影したモノクロフィルムを整理していたら、懐かしい場所を撮ったフィルムを見つけた。
最初の写真は、西郷会館(上野百貨店)の階段の入り口(公園側)を撮ったもの。西郷会館は、にぎわう上野駅の真ん前にあるテナントビル。前面に、”聚楽”と書かれた大きな看板がやたら目立っていた、あのレトロな建造物である。中には聚楽台というレストランが入っていたが、この写真を撮ったころには、もう、建物の取り壊しが決まっており、営業を止めていた。
撮影当時の上野公園には、まだ多くのホームレスの人々が住み、半ば廃墟と化していた西郷会館の内外観とあいまって、一帯は場末のような寂しげな雰囲気を漂わせていた。
西郷会館はそのあと、ガラス張りのモダンなビル(上野3153)に生まれ変わった。
場所は変わって、浅草観音温泉(銭湯)の内部の写真。
浅草花やしきのすぐそばに、かつて、ツタに覆われた廃墟然とした建物(ビル)が立っていた。屋上に設置された錆びついた看板や、入り口の看板を見なければ、この建物が銭湯だとは気づかない。あの一見、正体不明の建物が、浅草観音温泉である。現代的で小綺麗な街に変貌しつつあった浅草6区の中で、一種、異様なオーラを発散させていた。撮影のついでに、2~3度、入浴したことがある。確か、貸しタオルがあって、手ぶらでも入浴できた。内部も外観に負けず劣らず、異世界感に溢れていた。
次は、浅草ボウルの内部の写真。2010年に閉場。跡地には、現在、巨大なテナントビルがそびえ立っている。
ちなみに、最初から3枚目までの写真は、フォクトレンダーのノクトン クラシック 40mm F1.4 S.C.で撮影している。フィルムはネオパンプレスト400、カメラはライツ・ミノルタCLだったか、あるいはフォクトレンダー Bessa R3Mだったかもしれない。
フォクトレンダーのノクトン クラシック 40mm F1.4 S.C.は、今、デジカメ用に使う人が多い。未だに人気があるらしく、新品が手に入る。このレンズの特徴は、絞りを開けた時のアウトフォーカス部分の描写。好き嫌いはともかく、昔日のモノクロの映画のような、何とも言えぬクラシックな味わいがある。
観音温泉の中はとても暗く、絞りを開けて撮影せざるをえなかった。でもそれゆえに、ノクトンクラシックは持ち味を発揮できている。温泉の建物の内部のブルージーな雰囲気、得体のしれない何者かが暗闇に潜んでいるような怪しげな空気を、上手く描き出している。
モノを撮っても、人を撮影しても、実物以上に美しく撮れる(盛れる?)。ある種の広告写真などには、もってこいのレンズだろうと思う。
ただ、できればデジカメではなく、モノクロフィルムをつめたフィルムカメラで使いたいレンズだ。ただ悲しいかな、現時点で、ライカMマウントのフィルムカメラは新品が入手できない(ライカは除いて)。
そこで提案です。コシナさん、またVMマウントのBessaを製造、再販してくれませんか? 最近の中古フィルムカメラの値上がりを考えると、結構、売れると思うのですが……。少なくとも僕は買いますよ。