パートナー戦略の立て直しから分かった、重点支援すべきパートナー企業(代理店)の選び方
皆さんこんばんは。
パートナーセールスの葛西です。
先週のnoteでは、パートナーセールス部門に異動した後の悲惨な状況と最初の3ヶ月間でやったことについて書かせていただきました。
今回のnoteでは、パートナー戦略を立て直したからこそわかった、適正なパートナー企業様の選定軸について書きたいと思います。
また、ここ数ヶ月でさまざまなSaaSベンダーのパートナーセールスの方々と情報交換をさせていただいた中で、重点支援パートナー企業様のよくある選定軸をまとめてご紹介します。
はじめに
先週のnoteでも書いた通り、パートナー契約を締結したらパートナー企業様が勝手に自社プロダクトを売ってきてくれると考えるのは大きな間違いです。
完全に夢物語です。
(※プロダクトのブランド力・知名度が高く、競合がいない or 寡占市場の強者に当たるベンダーであれば話は別かもしれませんが。。)
そのため、限られているリソースをどのパートナー企業様に張るか、考えなくてはなりません。
パートナー企業が数社しかおらず、自社のパートナーセールスリソースもふんだんにあるようであれば、全リソースを全パートナーに張っても良いかもしれません。
しかしながら、そもそもパートナー契約時に適正パートナーを精査していない場合や、自社のパートナーセールスリソースが潤沢に無い場合は、全パートナーを精査し、どの属性のパートナーに対して重点的に支援をするのかを決めなくてはなりません。
重点的に抑えるべきパートナーの条件(選定軸)
1. 営業人員数が多いか (必須)
営業人員数の多さは、重点支援すべきパートナーの選定軸において非常に重要な条件です。
理由としては、「営業人員数が多い=取引社数が多い」→つまり、広範な顧客ネットワークを持つパートナーだからです。
その分、自社プロダクトの拡販に有利になります。
ですので、パートナー企業または担当事業部に所属する営業人員数をヒアリングすることは非常に重要です。
もちろん取引社数をストレートに聞いても問題ないですが、実際に常時稼働している取引社数は開示したくないと仰られるパートナー様も一定数いるため、営業人員数をヒアリングした方が確実です(もちろん取引社数を聞けるようであれば聞いてください)。
2. 提案先企業(既存取引先)の属性が合うか(必須)
パートナー企業の既存取引先や提案先が自社プロダクトのターゲット企業とマッチしているかを確認することは、重点支援すべきパートナーの選定軸において非常に重要な条件です。
例えば、ある業種への特化型SaaSだった場合、パートナー企業の既存取引先が以下のような項目に当てはまるか確認しましょう。
自社がターゲットとしている業種の社数が十分あるか
エンタープライズをメインターゲットとしている場合はエンタープライズ企業の取引社数
パートナー企業に地方開拓を期待しているようであれば強いエリアがあるか
人事領域のSaaSであれば提案相手(CP:カウンターパート)が人事部長や人事担当者であるか
等です。
ただし、実際には、これらの提案先企業(既存取引先)の属性情報については、パートナー契約を締結する前に確認しておくべきでしょう。
3. 自社プロダクトのマージンが営業担当の成績に反映されるか(必須)
自社プロダクトを契約した際(商談設定課金モデルの場合は商談設定した際)、そのマージンがパートナー企業の営業担当の成績に反映されるかどうかというのは、重点支援すべきパートナーの選定軸において非常に重要な条件です。
理由としては、もし営業担当の成績に反映されない場合、自社プロダクトを拡販してくれる力学が非常に弱くなり、売れなくなるからです。
営業担当は誰しもが目標予算を背負っておりますので、どうしてもその目標予算に最も近づける方法というのが最優先されてしまうというのが営業の世の常です。
実際に私がパートナーセールス部門に異動し、支援するパートナー企業の選定をした際にも、自社プロダクトのマージンが営業担当の成績に反映されないというパートナー企業が一定数ありました。
それでも異動当時は、マージン以外のメリットをうまく見せられれば、拡販いただける可能性はあるのではないかと考え、試行錯誤してみました。
しかしながら、やはり営業成績に反映されないとなると営業が拡販するインセンティブがあまりにも弱いため、全く動きませんでした(もちろん、私の営業力が足りなかったという可能性もありますが)。
さらに加えて、営業担当の成績に反映されるかを確認する際に、以下についても同時にヒアリングしましょう。
組織で追ってるKGI、KPI、目標数字
営業担当個々のKGI、KPI、月間(または年間・半期)予算
4. 営業担当とのコミュニケーションが直接取れるか(必須)
営業担当と直接コミュニケーションが取れる環境があるかどうかという軸は、重点支援すべきパートナーの選定軸において非常に重要な条件です。
理由としては、コミュニケーションにより営業力が強化されるからです。
結局はエンドの顧客に提案するのはパートナーの営業担当です。
なので、個別案件相談や自社プロダクトの提案にあたっての課題・困っていることなどの吸い上げが直接できた方が解決も早いです。
また営業担当の方々との距離も近づき、拡販してくれる可能性が高まります。
直接コミュニケーションを取るための手段として、下記のような手段が有効ですので、これらの手段を取らせてくれるパートナー企業を優先順位高めに支援されると良いかと思います。
i)チャットツール
→パートナー企業の社内でslackやchatwork等のチャットツールを導入されている場合は、そのパートナー企業で利用されているチャットツール内に自社プロダクトへの問合せ用チャンネルを設けてもらい、そのチャンネル内に全営業を入れていただくという手段は有効的です。
理由としては、パートナー企業の社内で利用しているチャットツールはメール以上にパートナーの営業担当が見ているためです(相手側が使っているチャットツールに合わせるというのが肝)。
ただし、セキュリティの兼ね合いで、どうしても相手側の利用チャットツールに入るのが難しい場合は、ii)に記載のメールアドレスの情報をもらったり、自社が利用しているチャットツールでチャンネルを設けるという形が良いかと思います。
ii) 営業担当全員のメールアドレス・携帯番号
→パートナー企業内でチャットツールを導入されていない場合は、営業担当全員のメールアドレスや携帯番号等、直接のコミュニケーションが取れるような情報をいただけるかどうか交渉してみてください。
iii)パートナー企業に常駐する
→パートナー企業へ定期的に常駐させていただくことが可能かどうかは非常に重要なポイントです。オンラインでのコミュニケーション以上に、オフラインでの対面コミュニケーションの方がパートナー企業の営業担当との距離もかなり近づきますので、パートナー企業のオフィス内での常駐が可能かどうかは必ず確認すべきポイントです。
これらi)〜iii)は、特に重点支援すべきパートナーを選ぶ上での必須条件になると考えています。
逆にi)〜iii)の全てがNGとなるパートナーについては、重点支援の優先順位を下げて良いかと思います。
5. 自社プロダクトのマージンは営業担当にとってインパクトが大きいか
3.で自社プロダクトのマージンが営業担当の成績に反映されるか?を確認することが重要であると述べましたが、「そのマージンは営業担当にとってインパクトが大きいのか?」という軸も重点支援すべきパートナーの選定軸において非常に重要な条件です。
上述3.に関するヒアリングをする流れで、マージンが営業担当の成績に反映される場合は「そのマージンは営業担当にとってインパクトが大きいのか?」も必ず確認してください。
そのマージン金額がパートナーの営業担当にとってインパクトが大きいということであれば、それだけでもパートナーの営業担当が拡販するための力学になるため、重点支援すべきパートナーとして優先順位を高めても良いかと思います。
一方、マージン金額のインパクトがさほど大きくない・小さいというような回答であった場合は、マージン以外のポイントでパートナー企業の営業担当が拡販してくれる力学を作り出す必要があります。
その別の力学でマージン金額のインパクトの弱さをカバーできるようであればそのまま重点支援パートナーとすべきですし、逆にマージン金額のインパクトの弱さをカバーできない・別の力学が作り出せないようであれば、重点支援するパートナーから外した方が良いかと思います。
また、マージンの営業担当にとってのインパクトの大きさをヒアリングするにあたって、以下の項目もついでに聞いてください。
競合他社プロダクトの取り扱い有無
そのマージン金額(教えてくれれば)
競合プロダクトの拡販状況
過去に最も効果的であった販促キャンペーン施策など
6. 決裁者と直接接点が取れる、取りやすいかどうか
営業組織が一気に動き出す要素として、決裁者(社長や役員、事業部長等)からのトップダウンほど有効的な手段はありません(決裁者を抑えるというのは営業にとっての鉄板です)。
特に、営業組織の強いパートナー企業であればあるほど、決裁者からのトップダウンは有効的な手段であると言えるのではないかと思います。
ですので、自社プロダクトの窓口となっている担当の中に決裁者(社長や役員、事業部長等)がいるようであれば、重点支援すべきパートナーとして優先順位を高めるべきかと思います。
もし決裁者との直接の接点がなくとも、決裁者との接点を取らせていただけるようであれば、重点支援すべきパートナーとしても良いかと思います。
一方で、自社プロダクトの窓口となっている担当の中に決裁者がいない場合や決裁者への接点を取らせていただけない場合は、重点支援の優先順位を下げて良いかと思います。
7. 拡販推進の担当者を置いていただけるかどうか
自社プロダクトの拡販推進担当者(チャンピオン)を立てていただけるかどうかという軸は、重点支援すべきパートナーの選定軸において非常に重要な条件です。
上述の4.でも述べた営業担当との直接のコミュニケーションが取れる環境もあって、さらには拡販推進担当者(チャンピオン)を立てていただける場合は重点支援の優先順位を上げるべきかと思います。
チャンピオンを立てていただくことで、以下のようなメリットがあります。
営業担当へのサービス浸透・認知度向上ができる
営業担当への直接のコミュニケーションでは実現することが難しいような社内巻き込みをチャンピオンを通じて実現できる等
さらに、チャンピオンのMBO・KGI/KPIに「自社プロダクトの拡販」を入れていただけると、よりチャンピオンが積極的に動いていただけるので非常に有効です。
追加のtipsとして、指名されたチャンピオンがもともと巻き込み力・推進力が弱い方というケースがあります。
圧倒的な巻き込み力・推進力のあるタイプの方であればいいのですが、このケースだとあまり拡販が進まないこともあります。
その場合は、4.で述べた「営業担当と直接のコミュニケーションが取れる環境があるか」でカバーします。
8. 共同でのマーケティング施策(空中戦)へ協力的かどうか
ここでいうマーケティング施策は、以下のようなものです。
パートナー企業の既存顧客やハウスリストへのCRM配信や共催でのセミナー開催
パートナー企業のHPへの自社プロダクトの掲載
オウンドメディアへの記事掲載
これらの共同マーケティング施策に協力的かどうかという軸は、重点支援すべきパートナーの選定軸において重要な項目です。
なぜならば、パートナーの営業を教育できるからです。
もちろん直接的には、リードが増え自社プロダクトを拡販するためのチャンスも広がります。
一方でそれと同時に、
リードが獲得できることで必然的にパートナー企業の営業担当も自社プロダクトの提案をしなくてはならない=自社プロダクトの商品知識を身に付けなくてはならない
という教育の機会が間接的に得られます。
これはパートナー戦略の成功において非常に有効な手段と言えるでしょう。
9. パートナー企業の本業とのシナジーが強いか
パートナー企業の本業とのシナジーの強さは、重点支援すべきパートナーの選定軸において重要な条件です。
営業へのマージンのインパクトが弱い
トップダウンでの推進を図りたい
拡販推進の担当者を置いてもらいたい
こういう場合に特に効きます。
「自社のプロダクトが売れる=エンド顧客の課題が解決できる」という構図は大前提どのSaaSプロダクトにもあると思います。
それに加え、自社プロダクトを拡販することでマージン以外でどんなメリット得られるのか、つまりはパートナー企業・エンド顧客・自社がWin-Win-Winとなる大きな絵を描き、その大きな絵の実現に向けての合意形成が取れると、パートナー企業が自社プロダクトの拡販に動いていただけることが多いです。
そのため、このWin-Win-Winとなる大きな絵を描くためにもパートナー企業の組織(会社)としてミッションやビジョン、事業戦略やターゲット顧客(重点支援顧客)、主要KGI・KPIなどは必ずヒアリングすべき項目です。
しかし、このパートナー企業・エンド顧客・自社がWin-Win-Winとなる大きな絵を描くということ自体に非常に高い事業開発スキルが必要となります。そのため、かなり難易度の高い業務となるため、大きな絵が描ける人材をアサインする、または採用する必要があるかと思います。
1〜9の選定軸(条件)に関する優先順位
上述のように重点支援すべきパートナーの選定軸(条件)を9つ挙げさせていただきました。この9つの選定軸(条件)の中で、以下は重点支援すべきパートナーを選ぶ上で必須の条件です。
1.営業人員数の多さ
2.提案先属性のマッチ度
3.マージンの営業成績への反映
4.営業担当と直接コミュニケーションが取れる環境
この4つの選定軸(条件)を一つでも満たさない場合は、重点支援パートナーからは外すべきであると私は考えています。
残りの5つの選定軸(条件)については、当てはまる条件が多いパートナー企業ほど特に重点支援すべきパートナーとなります(つまりは、5.〜9.は加点方式です)。
5.マージンの営業へのインパクトの強さ
6.決裁者との接点
7.拡販推進担当者の設置
8.共同でのマーケ施策
9.パートナーの本業とのシナジー
仮にこの5つの全て、または4つ以上を満たせるようなパートナー企業がいる場合は、そのパートナー企業は最重点支援パートナーとするべきでしょう。
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今週のnoteには特典を付けさせていただきます!
先週のnoteで書かせていただいた、「最初の3ヶ月間でやったこと」のうちの
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それではまた次回の更新をお楽しみに!