サービス比較表をパートナー(代理店)へ展開する際の注意点とリスクを避ける展開方法
皆さんこんばんは。
パートナーセールスの葛西です。
パートナーセールスをやっている人であれば、どなたも「競合製品との比較表が欲しい」とパートナー(代理店)さんから要望を受けたことがあるのではないでしょうか・・・?
パートナービジネスを展開する上でサービス比較表の用意は必須であるというのは間違いない事実であり、サービス比較表を用意すべきであるといった内容がパートナービジネスの一般的なノウハウ記事やガイドブック等にもよく書かれています。
一方で、サービス比較表をパートナー(代理店)さんへ展開することで抱えるリスクや注意点について言及している記事を私が1度も見たことがありません。
そのため今回は非常にマニアックではありますが、サービス比較表を展開する際の注意点とそのリスクを避けてパートナーさんへ展開する方法について書かせていただきます。
サービス比較表の必要性
サービス比較表は、パートナービジネスで必須ともいえる営業支援ツールの1つです。
パートナーさん側がエンド顧客に提案をする際、高確率でエンド顧客側から「他のサービスとの違いは何ですか?」と問われるため、その問いに回答するためにもだいたいのパートナーさんが比較表が欲しいとご要望されるため、必須のツールです。
もしくは、同じ領域の商材を複数取り扱っているパートナーさんであると、最初からこの比較表を元に同領域の取り扱い商材を並べて提案し、エンド顧客に選んでもらうという営業スタイルを取るパートナーさんも多かったりします。
ですので、複数商材を並べて提案したいというニーズから比較表が欲しいとご要望されるケースもあります。
また、多数の商材を取り扱っているパートナーさん側の営業担当の皆様に1商材の細かな機能や他社との違い、サービスの選定軸などを細かくインストールしてもらうというのはかなりハードルが高いのが実情です。
そのため、サービス比較表はパートナーさん側の提案ハードルを下げる、パートナーさん側が説明しやすいようにするためにもサービス比較表は最適なツールであると私は考えています。
※逆に言ってしまうと、サービス比較表が用意できていない場合は、早急に用意すべきです。
サービス比較表を展開する際に注意すべきこと
サービス比較表はパートナーさんへ展開すべき優先順位の高い営業支援ツールである一方で、展開する際に注意すべきポイントがあります。
これはベンダー(メーカー)側のパートナーセールスをやっている方々の中にも結構知らない方が多いのですが、パートナーさんへサービス比較表を展開することで「不正競争防止法」に抵触するリスクがあるということです。
不正競争防止法とは、国民経済の健全な発展を目指し、「事業者間の公正な競争を促進」および「これに関連する国際約束の実施」を図るための法律です。
※不正競争防止法の詳細まで書くと長くなってしまうため、詳細は下記をご参照ください。
不正競争防止法第2条1項にて「不正競争」の定義がいくつかされている中で、そのうちの1つとして積極的に他社に損害を与える「信用毀損行為」も禁止しています。
具体的には「競争相手にあたる他人の信用を害する、虚偽の事実を告知・流布する行為」のことです(第2条1項21号)。
SaaSは常に新しい機能が開発し続けられるもの。
そのため、パートナーさんへサービス比較表を展開する上で、下記のようなリスクがあります。
ベンダー(メーカー)側が作成した比較表に競合サービスの最新の機能アップデートが反映されていない状態で展開されることで、虚偽の事実を告知・流布する行為に該当してしまう
仮にA社・B社・C社というようにどこの会社かを具体的な名称を付さなくても、この会社がどこの会社のことを指しているのかわかってしまう場合には不正競争防止法に抵触する
故意・過失を問わず、何かしらの形でパートナー側から競合サービス側に比較表が渡ってしまうリスク
→例えば、パートナーさん側が競合サービスの提案を行う際に、その競合サービスの営業担当が同席していて比較表の存在が発覚、等
そのため、万が一、証拠として競合企業にこのベンダー(メーカー)側作成の比較表が行き渡ってしまった時には、競合企業から訴訟されるリスクがあるのです。
なお、この不正競争防止法は対パートナーのみのお話ではなく、直販の営業においても同様に引っかかります。
※例:直販の営業マンが競合企業とのサービス比較表をエンド企業への提案資料に入れ込んで提案した結果、そのエンド企業から競合サービスの企業へ展開されてしまった、等
サービス比較表をリスクを避けて展開する方法
この不正競争防止法ですが、実は皆さんが知らないところでちょくちょくSaaS企業間での訴訟が起こってします(どこの企業というのはここでは言及しませんが)。
大手企業以上に、スタートアップですとこの訴訟によって余計な業務工数が取られたり、賠償金請求により経営上に大きなダメージを負ったりといったリスクもあるため特に注意が必要なポイントかと思います。
とはいえ、サービス比較表はパートナービジネスで必須ともいえる営業支援ツールの1つですので、どうにかしてパートナーさんへ展開したいものです。
そこで、なるべくリスクヘッジをした形でパートナーさんへサービス比較表を展開する方法を下記にまとめます。
①パートナーさん側で比較表を作成していただく
これが最もリスクが低い方法です。
しかし、パートナーさん側にサービス比較表の作成を丸投げという形では、パートナーさん側でサービス比較表を作成していただけることはほぼほぼありません。
自社で作れない、または自分で作るのが面倒なので依頼してきているので当たり前ですよね(パートナーさんからの依頼は絶対に無碍にしてはダメです)。
そのため作成をパートナーさんに丸投げするのではなく、オンラインMTGか電話等のエビデンスが残らない形で、パートナーさんへご案内しながら一緒にサービス比較表を作成すると良いでしょう。
※もちろん大前提、競合サービスのことを悪く見せたり、虚偽の事実を書いたりということは一切せずに、自社のできないことや弱い部分もしっかり書いてもらいます。
また、完成したサービス比較表は、その依頼いただいたパートナー側の営業担当の方から全体へ必ず共有、自社の資料格納ポータルにも必ず格納いただくようにしましょう(あと、ちゃんと対応してくれたかの後追いも必須)。
②自社のパワポフォーマット以外で作成して展開する
自社のパワポフォーマットを利用すると自社の企業ロゴやサービスロゴなどが入っていたりするため、サービス比較表の資料が1人歩きしてしまう可能性があるのでリスクが高いです。
そのため、どうしても自社(ベンダー)側でサービス比較表を作成する必要がある場合は、自社のパワポフォーマット以外(自社のロゴなどが入っていないフォーマット)で作成してパートナーさんへ展開する、
もしくは、パートナーさん側のパワポフォーマットをいただいて、そこにサービス比較表を作成してパートナーさん側へお渡しすることをお勧めします。
ただこの比較表作成・お渡しのフローだと、メールやチャットにエビデンスがどうしても残ってしまうため、①と比較してリスクという観点では若干グレーな部分が残ります。
また、流石にここまで対応しなくても良いかもしれませんが(これは各社のリスク許容度に任せます)、パートナー向けのポータルをお持ちのベンダー企業については、サービス比較表をパートナーポータルに格納しておかない方がリスクヘッジにはなります。
理由としては、パートナーポータルに入っているサービス比較表=ベンダー(メーカー)側が作成したサービス比較表と捉えられてしまうためです。
(パートナー側を疑うわけではないですが)万が一、どこかのパートナーさん経由で、競合サービスの企業にパートナーポータルからダウンロードしたサービス比較表であるということを伝えられてしまい、その事実が証拠となって競合サービスに訴訟されるというリスクも一定あります(かなりリスク考えすぎって感じではありますが)。
ですので、ここまで制限するかどうかは各社のリスク許容度によるかと思いますが、一定リスクがあるよということは認識されておいた方が良いかとは思います。
※ちなみに、私の現職ではサービス比較表はパートナーポータルに格納しておりません。
③パートナーさんが運営しているメディア等で作成してもらう
これは対応できるパートナーさんが限られてしまいますが、パートナーさん側が運営しているメディア等があれば、そのメディア内でのコンテンツとして比較表(比較記事)を作成してもらうという方法もあります。
ベンダー(メーカー)側のメディアでサービス比較表を作成してしまうと、「競争相手にあたる他人の信用を害する、虚偽の事実を告知・流布する行為」に当然抵触してしまいます。
しかし、パートナーさん=(中立な)第三者となるため、パートナーさん側のメディアのコンテンツ(記事)としてパートナーさん側に作成してもらえるようであれば、ベンダー(メーカー)側が競合サービスから訴訟されるリスクはほぼゼロです。
もしパートナーさん側でメディア等を保有しているようであれば、メディアのコンテンツとしてパートナーさん側に作成してもらうという手段が最も良い比較表の作成・展開方法なのではないかと考えています。
加えて、「比較系の記事」はSEO上がりやすい部類の記事ですし、PV数等も見込める部類の記事なので、作成したパートナーさん側にとってもリード獲得増加につながるという大きなメリットにもなるかと思います。
まとめ
サービス比較表の展開が不正競争防止法に引っかかるリスクがあるということを認識しているパートナーセールスの方がどれほどいらっしゃるでしょうか?非常に気になるところです。
資料関係は前提、「1人歩きするもの」と基本的に考えて、作成するのが鉄則です。
パートナービジネスは攻めの要素ももちろん大事ですが、このような守りの要素も非常に大事です。
大手企業にとっては訴訟を受ければ社会的信用力の低下や株価の低下などにつながりますし、スタートアップにとっては経営への大きなダメージとなるリスクもあります。
今回はリスクを低減しながらパートナーさんにサービス比較表を展開する方法についても書かせていただきましたが、このやり方以外にもリスクヘッジしながら展開する方法はあるとは思います。
他社さんがどのように展開しているのか、また是非聞いてみたいと思いますので、何か良い展開方法がある方がいらっしゃいましたら教えていただけたら嬉しいです!
それではまた来週!
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