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新型コロナウイルスに罹患しながら帰省した彼女の行動を、論理的に振り返る

連日で同じ話題になりますが、気になって仕方がないので触れたいと思います。昨日、『新型コロナウイルスに罹患しながら帰省した彼女の失敗を、自分事として学ぶ』という記事を書きました。

中国武漢市を発症とする新型コロナウイルス感染症に罹患の疑いがありながら、東京都と山梨県を往復してしまった20代女性の話題です。

20代女性の行動に非難の声

ニュース記事を漁っていると、やはり彼女の行動を非難する声がマスメディアでも上がっています。本日5月4日の「羽鳥慎一モーニングショー」でもこの話題に触れられて彼女の行動の悪い点を指摘していたそうです。(わたしはテレビを見ていないので、スポーツ紙などの情報を元としています。)

私も大いに反省すべきではありますが、結果を見て断罪するのは誰でも出来ます。これは後知恵バイアスという認知バイアスのひとつです。後知恵バイアスとは、物事が起きた後にそれがあたかも起こるのが予見できたと考える人間の性質です。

彼女の行動を後悔情報を元に振り返れば感染症を拡散しうる危険な行動をとっていたと言わざるをえません。私達がそう思うのは、私達が彼女の行動を「結果」しか見ていないからです。

後知恵バイアスが働いている状態で反省をしようとすると、改善策を誤ります。この話題を反省材料として利用するのであれば、彼女がその時々でどう考えてどう行動したかという振り返りが必要です。それも、精神論ではなく論理的に考えなければなりません。私のように「想像力が足らない」と断ずるのは精神論です。

PCR検査陽性後にバスに乗るべきだったか

昨日の記事の執筆時から新しい情報として、彼女は東京で犬を飼っていたという事実が明らかになりました。この点において論理的に考えてみます。

前提として、彼女は山梨県内で受けたPCR検査で陽性の判定を聞きました。このときは東京都に帰るバスに乗る直前だったそうです。東京都の自宅には飼い犬が待っています。果たしてこの状況で、彼女にバスに乗るなと言えるでしょうか。論ずるべきはこの状況下でどのような判断が必要だったかという論点だと思います。

ちなみに「そもそも山梨県に行くべきではなかった」というのは反則です。過去の行動を戻すことは誰にも出来ませんから。

この前提に立った時に、私は彼女と同じ行動を取るかもしれないと思いました。まず、当人は確実に正常性バイアスに陥ってます。正常性バイアスは「私は大丈夫」と思い込んでしまう人間の性質です。

もうひとつ、この時に既に罪の意識があります。罪悪感を抱えて不安な状態であれば、最も安心できる場所に帰ろうという意識(ホメオスタシス)が働きます。最も安心できる場所は生活拠点であり愛犬のいる自宅でしょう。彼女にとて、PCR検査の結果如何に関わらず、自宅に帰るという選択肢を選ぶのは当然だったのではないかと想像します。

これを反省点として活かすのであれば、必要だったのは専門的な知識を備えた相談相手だと思います。多忙な医療機関や専門部隊はPCR検査の結果を伝えるのが精一杯だったと想像します。本来であれば、そこで彼女の葛藤を聞くための受け皿があるべきだったと考えます。あるいは、自宅まで搬送するための手段です。改善できる点としてはそこだと思います。

そもそも山梨県に行くべきではなかったのでは

「そもそも山梨県に行くべきではなかった」という点も一応、考えておきます。ほぼ昨日の記事の通りなので簡単に書くと、彼女は正常性バイアスに陥っていたはずです。彼女一人の判断で山梨県行きを中止するのは不可能だったと思います。

昨日の記事から新しく得た情報として、彼女は山梨県内で整体を受けたそうです。実際のところは分かりませんが、整体はたいてい予約が必要だと思います。もともと予約をしていたのであれば、尚更に帰省の予定は変えにくかったでしょう。

人間は一度手にしたものを手放すことに抵抗を感じてしまいます。これを保有効果と言います。無価値なものであっても「捨てられない」という心理現象がこれです。彼女はこの度の規制で多くの予定があったようです。実家の家族に会い、友人とバーベキューの約束をし、整体の予約もしていた、おそらく高速バスの予約もしていたのでしょう。一度組んでしまった予定を反故にするのは心理的に抵抗があるのは人間の心の働きとしては自然です。

そもそも帰省の予定を組むべきではなかったのでは

さらに遡って「そもそも予定を組むな」という点についても振り返りましょう。

この点においては、彼女の情報収集能力の低さを嘆くしかなさそうです。それは彼女自身が反省すべきなので、適度にしていただければと思います。

世間の話題が新型コロナウイルスで一辺倒にも関わらず、彼女が帰省の予定を組んでしまったのはなぜでしょうか。それは正しい情報が伝わっていなかったからだと考えます。

記事が長くなってきたので端的に申すと、改善点はマスコミと政府の発信の仕方に問題があると考えます。聞くところによると、マスコミは不安を煽るばかりで正しい情報が得られにくい状態になっているそうです。政府は性格な情報を出してはいますが、誰にも分かりやすい形で伝えていたかと言えば、そうは思いません。

マスコミが不用意に煽らずに科学的に正確な情報を流していれば、政府が誰にも分かりやすいように発信していれば、もしかしたら彼女は予定を組まなかったかもしれません。具体的にどうしていればよかったかは、無責任は承知ですが分かりません。

玉川徹氏が主張するような罰則は不要

もうひとつ、気になる切り口がありました。テレビ朝日系「羽鳥慎一モーニングショー」では、玉川徹氏が『もしかすると、それに対しては罰則がある法律をつくってもいいのかもしれないですね。』と発言したそうです。

 続けて「もしかすると、それに対しては罰則がある法律をつくってもいいのかもしれないですね。昨日、憲法記念日で緊急事態条項の話、やっぱり出ましたよね。出るんだろうと思ってましたけど。憲法の中に緊急事態条項をつくっちゃうと、何でもできるようになっちゃうっていうところが、かえって危ないって僕なんかは、ずっと思っているんですけど。だからこそ、いろんな主権の制限に関しては法律できっちり考えて、国会で議論したうえで法律つくって、そういうふうなことを罰するなら罰するってことが必要だと僕は思っています」と持論を展開。

ここまで読んでいただければ明らかですが、この事件を振り返ってみて必要だったのは罰則ではありません。玉川徹氏の言っていることは的外れです。憲法改正への反対意見を論ずるために無理やり結びつけた意見ではないかとすら思えます。

罰則を作ってしまうと、今度は日本の経済活動がより一層に萎縮してしまいます。現状は半強制的な自粛で感染拡大は抑えられています。感染症による死者よりも経済困窮による死者が増えてしまっては元も子もありません。

罰則を作る代わりに補償もセットにすれば良いではないかという意見もありそうですが、それも違います。長くなるので省略します。

感情的な反応をする前に・・

テレビの情報番組に毎日のように出演して意見を求められると、どうしても条件反射での回答をせざるを得ないと思います。一呼吸おいて論理的に分析する時間はあまりないのでしょう。私も毎日のようにこうしてnoteを書いているので、その難しさは痛感しています。

条件反射で感情的な表現をする際は、いちど立ち止まりましょう。それが「後知恵バイアス」による意見ではないか、一呼吸をおいて考えてみると良さそうです。


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