「大阪モデル」が絶賛される理由を調べてみた

「大阪モデル」という単語をよく耳にします。中国武漢市を発症とする新型コロナウイルス感染症の対策にあたって、大阪府が緊急事態宣言下の裁量範囲内で示した、行動自粛要請の解除条件です。

この大阪モデルは政治的イデオロギーの左右関係なく絶賛されています。誰もが政府に期待していた答えを、政府でなく大阪府が出したという流れにおいて高い評価を得ています。具体的に何が良いのか、掘り下げてみます。

出口戦略なき緊急事態宣言延長

今般の緊急事態宣言の延長を巡って注目を浴びていたのは、緊急事態宣言をいつまで継続するかだったかと思います。既に延長となるのは報道されていました。日本全体をみた感染症の状況においてはピークを少し過ぎた程度なので、延長そのものに疑問の余地は無かったかと思います。

もうひとつ注目を浴びていた観点があります。それは「出口戦略」です。平易に表すと、どうしたら緊急事態宣言が解除されるかです。

「出口戦略」は投資などでよく用いられる用語です。株や物件などの売買で利益を得ようとした際に、どの段階になったら売却するかという判断基準を定めることです。株は購入しただけでは利益を生みません。売却して初めて利益が出ます。この時に感情に任せて判断をすると、売りどきを逃して大損をしやすくなります。感情に左右されず論理的に判断するために、客観的な数値を基準として売却の判断をします。

出口戦略については野村不動産の記事がわかりやすく書いてありました。元々は軍事用語だったらしく、他にも経営などにも応用されているようです。

緊急事態宣言によって自粛を余儀なくされている企業にとって、出口戦略は非常に重要です。このような企業は現在は赤字を垂れ流している状態です。いち早い営業再開を望んでいます。

政府から発表されたのは5月末までの延長という結論のみでした。出口戦略の発表は無しです。

政府から出口戦略が示されなかったことにより、5月末まで本当に営業を自粛しなければならないのか、6月に入っても続くのか、経営者は事前の予測がつけられません。そしてその予測に基づいた営業再開の判断もできません。「こうなったら緊急事態宣言を解除する」という出口戦略が示されていれば、報道などで示される数値を見ながらその判断が可能となります。

大阪モデルで明確な基準が示された

政府が出口戦略を示さなかった一方で、明確な出口戦略を打ち出したのが大阪府です。大阪府が示した出口戦略を「大阪モデル」と言われています。

大阪モデルの特徴は4つの数値指標と評価方法を明確に示している点にあります。4つの指標はいずれも計測可能であり、客観的に評価が可能な数値です。評価方法も明確です。

大阪モデルの詳細については、エルマガジェイピーの記事を拝借します。

大阪府では5月5日、『大阪府新型コロナウイルス対策本部会議』が実施され、約1カ月延長が決定した緊急事態宣言の規制を早期に緩和させるための独自基準「大阪モデル」を決定。吉村洋文知事は、「感染状況を4つの信号に分ける。警戒信号が7日間点灯しなかったら自粛を解除する」と発表した。

(中略)

1つめは、新たに発見された感染経路(リンク)不明陽性者の増加比(前週比1未満)
2つめは、新規陽性者におけるリンク不明数(10人未満)
3つめは、新規PCR検査での陽性率(7%未満)
4つめは、重症の患者を受け入れる病床使用率(60%未満)
(5月4日時点で、1=0.68、2=7.29人、3=4.5%、4=33%とすべて基準値以下)

この4つを「警戒信号」とし、陽性者の発生を抑えて4つの信号すべてが原則7日間消えれば自粛は段階的に解除。一方、解除後であっても1から3までの信号が全点灯した場合には、改めて府民へ自粛などの対策を要請するという方針だ。

出口戦略の基準設定において、計測可能で客観的な数値を用いるのは基本中の基本です。

基準が計測可能で客観的な数値によって定められたことにより、企業は基準値をよく見ながら営業再開の準備を進められます。市民は基準から落とし込んだ個々の行動指針に則って行動をすれば済みます。

解除後に再び自粛要請が発令される事態になっても、その基準値に基づいて説明されれば納得感があります。

一方で計測不可能な基準が設定されていた場合、市民は漠然とした対策をするしかありません。つまり今回の場合は感染症対策におけるゼロリスクに走らざるをえなくなります。「少しずつ」というのが難しくなります。それも、いつまで続くのか分かりません。5月末になってリーダーの鶴の一声を待つしかありません。

緊急事態宣言下での生活に慣れた方もいれば、我慢の限界にきている方もいらっしゃると思います。我慢も気分的な不満程度なのか、生きるか死ぬかの程度なのかという違いもあります。出口戦略があれば先が見通せます。達成可能な基準があり、かつ先が見通せたほうが「もう少し頑張ろう」という気になって安心して頑張れます。

大阪府もとい維新の会がお手本となる行動を示してくれました。私は東京都民なので東京都と政府の判断下にあるのでその恩恵は受けられません。政府や東京都が政治的イデオロギーを乗り越えて出口戦略を明確に示してくれるのか否か、注目です。

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