女性が多いと会議が長引く?主語を大きくしすぎると反感を買いやすくなる
東京オリンピック・パラリンピック組織委員会(以下、組織委員会)の森喜朗会長の発言が話題となっています。「女性がたくさん入っている理事会ていうのは時間がかかります」という発言が女性蔑視だと叩かれてしまっています。森会長はラグビーワールドカップ日本開催の功労者であり、東京オリンピック開催においても尽力されていると承知しています。それ故に森会長に対しても個人的には応援したい気持ちです。しかしこの発言は弁護するにも苦しい印象を受けました。
客観的に問題となった発言を読んでみます。この発言は日本オリンピック委員会(JOC)でJOCの山下会長に促されて挨拶された際に生じたものです。日刊スポーツが掲載している全文を読むと、山下会長のリーダーシップを称える下りでこの発言が出てきています。唐突に「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかります」と始まることから、「JOCは女性を多く抱えているけど山下氏のリーダーシップの元で上手く組織を統率されている」という賛辞を呈したかったのだと思います。ここでいう「JOCの女性」は発言している眼の前にいらっしゃるはずです、おそらく森会長ならではの「いじり」でありユーモアだったのだと推測します。これがその場でウケたのかは分かりません。
この比較として出されたのが森会長自信も関係するラグビー協会でのエピソードでした。おそらく自虐ネタだったのでしょう。ラグビー協会には5人の理事がいらっしゃいます。女性が多いと大変だというエピソードとして、「女性は競争意識が強い」「女性がたくさん入っている理事会、理事会は時間がかかります」という言葉が出てきました。さらに背景として「女性何割」という割合ありきで抜擢された方々は能力が伴っていないというのを趣旨として仰っしゃりたかったのだと思います。
どの角度から解釈しても現代の価値観とは合わない発言です。組織委員会の会長の挨拶として表に出てしまった以上は謝って幕引きするしかなさそうです。
各メディアと一緒になって森会長を叩いても生産性がないので、何が問題だったのかを振り返ってみようと思います。最も問題なのは主語を大きくしすぎたことだと思います。引き合いに出す「ラグビー協会の女性陣」を「女性」という無機質で大きな括りにしてしまいました。そして「決定に時間がかかる」という負のラベルを付けてしまいました。女性であっても迅速な決定を下せる方はいらっしゃいますし、男性であっても生産性の無い話をして会議を長引かせがちな人(私です)も居ます。ラグビー協会の会議が長引くのが本当に女性陣の性格や能力だけの問題なのであれば、それは「女性」が問題なのではなく、その5名に問題があるはずです。主語を大きくしすぎると、その様な人を無視することになります。そして反感を買いやすくなります。
ちなみにラグビー協会の理事会が長引くのは女性陣のせいなのでしょうか。あくまでも組織として仕事をされているのだと思います。森会長の発言を読む限りだと、女性云々よりも組織として上手くいってないだけなのではという印象を受けます。問題のすり替えがなされてないでしょうか。
逆風の中でオリンピックを開催しようという最中で、妙な味噌がついてしまいました。森会長自身がおっしゃる通り、オリンピックを中止に追い込みたい勢力はいると思います。世論調査でも現状だとオリンピック開催に否定的な意見のほうが多いと出ています。オリンピックを中止に追い込みたい方々にとって、失言王と揶揄される森会長の発言は格好の標的です。言葉を謹んでいただきたいものです。
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