「サーバーは増やすんじゃなくて、時代はもうクラウドなんですよ」はその通りなんですよ

蓮舫議員がWEBについてよく分かっていらっしゃる方だとは思いませんでした。

時代はもうクラウドなんですよ

6月11日の参議院予算委員会で切り取られて話題になっていた蓮舫議員の発言です。マイナンバーの関連システムが負荷に耐えられなかった事象について、サーバを増やして対策するというとした総務省に対する発言です。

蓮舫「サーバーは増やすんじゃなくて、時代はもうクラウドなんですよ。だからね、これまでの積み上げてきたもののベンダーのツギハギのシステムではなくて、本当に問題はどこにあるのかというのを確認をして、それで予算付けをするなら分かるけど、言われたまんまにお金を支払う。税金は限りが有る。大臣、これはしっかり機構の人を呼んで、確認をして、そして本質的な改善策を講じていただきたいと改めてお願いをいたします。」

クラウドコンピューティング(以下、クラウド)というのは仮想的なコンピューティング環境です。AWS(Amazon Web Services)であればAmazonが抱える巨大サーバ群の中で動いているコンピュータ領域です。使い慣れた言い方をすると「仮想マシン」です。パソコンの中でパソコンを動かすようなことをした経験があるかたは想像しやすいと思います。

クラウドの特徴はサーバ(=仮想マシン)を自由に利用できることです。10台必要であれば10台借りれるし、不要になったら0にできます。料金は借りた分だけ請求されるので、利用量に応じて値段を最適化できます。

クラウドのサーバは何台でも借りたり返したり出来ます。負荷に応じてサーバを増やしたり減らしたりもできます。そしてその動作はプログラム可能です。CPUやメモリの使用量などをクラウド内のプログラムに監視させして負荷が高まってきたらサーバの台数を倍にしたり、逆に負荷が低くなってきたらサーバの台数を半分にしたりできます。このような増減はクラウドの中で勝手に実行できます。

今のクラウド時代に「負荷対策としてサーバを増やす」のは前時代的です。クラウドにおいては負荷対策というのはサーバを増やして行うものではありません。負荷に応じてサーバが勝手に増えるのです。

もはやクラウド全盛期の時代に「状況に応じた負荷対策」なんてのは死語になりつつあります。総務省ないし政府の皆さん、サーバを増やすなんて前時代的な対応をしなければならないシステムからは卒業しましょう。時代はもうクラウドなんですよ。クラウドコンピューティングで最適化されたシステムに刷新しましょう。

クラウド化は結構大変

蓮舫さんは「本質的な改善策」を求めています。私もこれは素晴らしい提言だと思います。精鋭を集め何カ年計画とか立てられれば何とかなるのではないでしょうか。

総務省が抱えているシステムの規模感は分かりませんが開発費用だけだと何十億円かで実現できると思います。精鋭は何人集めればいいのだろうか。もしかしたら何十億では済まないかもしれません。そしてゼロから作るよりも大変なのは間違いないでしょう。

そもそもクラウド化にあたって必須となりうるGitとかAWSとか使えるのか分かりません。クラウド化するのであればAWS(Amazon)とGCP(Google)の二択です。これらのクラウドサービスのデータは世界各地のサーバに分散して保管されています。国民の個人情報をアメリカの企業のどの国にあるか分からないサーバに保管させるためには、国民の合意が必要でしょう。場合によっては法制度的な観点での改革が必要です。予算云々よりもこちらの制約のほうがクラウド化を阻害している気がします。

蓮舫議員を擁する立憲民主党は今後はきっとクラウド化して小回りの効いたシステムを実現するような予算や法制度の提案等をしてくれるのでしょう。もしそうなればその点に限っては応援したいと思います。

総務省のサーバを増やす対応は妥当

今回はマイナンバーに関連するサービスが落ちるという事象に対する対応として、サーバを増やすという対策がとられたようです。こういうのはすぐに対応しなければな無いので、直近の対策としては至極真っ当な対策だと思います。クラウド化というのは将来的な話なので、喫緊の対策とは別の話です。

ちなみに私はそんな前時代的なシステムからクラウドへの移行を粛々と進める仕事をしています。クラウド化する対象は10年もののシステムです。クラウド化前後ではシステム設計の勘所や考え方が全く異なるので、ほぼゼロから作り直しのようになっています。およそ3年程度はこの業務に携わっていますが、予算(=人員)の制約がある事情も合って道半ばです。けっこう大変です。

そして偉そうに論じてみましたが、全ての言葉が私自分にブーメランとして刺さってます。頑張っているつもりなのですが、知識も経験も全く足りません。精進します。

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