インドで起きた韓国LG化学による毒ガス事件から1週間
5月7日の未明にインドの化学工場から有毒ガスが漏れる事件がありました。発生源は韓国LG化学の向上だそうです。この毒ガスによって10名以上が亡くなり、1000人以上が搬送されています。被害状況はメディアによって異なるので正確な情報は分かりません。少なくともその程度の被害が出ています。
事件当初は大きな事件だと思って関心を抱いていたのですが、日本では検察庁がどうのという話題が先行し、あまり大きな話題にならずに今に至ります。情報が少なくて逆に気になってきたので調べてみました。
重工業が盛んな都市で発生
事件が起きたのはインドのアーンドラ・プラデーシュ州、ヴィシャーカパトナム県という街です。
この街は州最大の都市であり、重工業が盛んだそうです。『経済成長が著しいインドの中でも、特に成長性の高い地域』という評価もあるようです。インターネットで同県を検索すると、日本語の旅行記がいくつか見つかりました。観光地としても有名なようです。
事件はビシャーカパトナム県に所在する韓国LG化学のインド現地法人LGポリマーズ・インディアの工場でした。
ニュース映像を見たところは長閑な場所のように感じました。しかし地図で見ると実際は近くに駅のほか公的機関や商業施設が集まっています。昨今の事情によってどれほどの人が往来していたのかは分かりませんが、影響を受ける人が多かったのは想像に容易いです。
有毒ガスは「スチレン」
漏れた有毒ガスは「スチレン」という化学物質だそうです。このスチレンを発した物質は「スチレンモノマー」という化学物質だそうです。あまり耳馴染みのない化学物質ですね。スチレンを含むスチレンモノマーは私達が普段から利用している「ポリスチレン」の原料となります。
事件のあった工場はそのポリスチレンの製品を生産する工場だったようです。
ポリスチレンは生活空間にありふれた物質ですが、原料となるスチレンは強い毒性を持っています。日本スチレン工業会のWEBページでは以下のように紹介されていました。これは報道にあった人々が路上で次々に倒れる様子を想起させます。
急性影響
スチレンは眼、咽喉、鼻への刺激を引き起こし、疲労感、めまい、頭痛、痙攣などの中枢神経系に影響を与え、高濃度でばくろすると意識を喪失することがある。
http://www.jsia.jp/sm/sm_01.html#T_d
化学物質の発熱と工場再開時に不手際
LGポリマーズ・インディアの工場は都市封鎖に伴って3月24日から閉鎖されていたようです。
閉鎖中は5000トン規模のタンクが2基が放置されたまでした。タンク内で保管されていた化学物質が発熱して流出したようです。一方で工場再開にあたっての作業不手際も指摘されています。
工場は都市封鎖中も職員が駐在していたそうです。都市封鎖は1つの原因に過ぎず、適切に管理されていなかったのが直接な原因だそうです。
また、ガーディアンによると少なくとも2019年の半ばまで違法に操業されていたようです。今回の事件は氷山の一角に過ぎず、以前から杜撰な企業体質であったと想像できます。
文書によると、木曜日の朝にインド沿岸の都市にガスを漏らし、少なくとも12人が死亡し、数百人が病院に入院した化学工場は、少なくとも2019年の半ばまで違法に操業していた。
The chemical factory that leaked gas into a coastal Indian city on Thursday morning, killing at least 12 people and putting hundreds in hospital, was operating illegally until at least the middle of 2019, documents show.
https://www.theguardian.com/world/2020/may/11/indian-chemical-factory-behind-deadly-gas-leak-was-operating-illegally
LG化学の工場再開は不可能か
事件後はインド州政府の指示によって原因となったスチレンモノマーを韓国に引き上げているようです。5月13日にLG化学の職員が8名で現地を訪問し、同物質を引き取ったそうです。
LG化学はホームページで英語と韓国語の謝罪文をモーダルで掲載しています。『事故の正確な原因と被害の範囲について当局と調査を行っており、具体的な情報が判明次第、発表します。(We are investigating the exact cause of the incident and scope of damage with the authorities, and will announce the findings as we have more concrete information.)』ということなので、性善説に則ると何かしらの続報は出してもらえるようです。
私の予想だとおそらく住民感情もあって工場の再開は不可能ではないかと思います。何億円という賠償金も要求されているようです。LGグループの規模からしたらどの程度の痛手なのかは分かりませんが、影響は決して小さくはないでしょう。
亡くなられた方々のご冥福と、被害に遭われた方々の早い回復を祈ります。
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