データレスPCの先にあるパソコンのゲシュタルト崩壊
「おまかせデータレスPC」というサービスをNTT東日本が法人向けに提供しているようです。
データ領域をクラウドに上げてしまうことで、パソコン自体の容量を気にせず使えるようにするサービスだそうです。それに加えて、利用者はシステム領域(所謂Cドライブ)の操作ができなくなっています。盗難などパソコン本体に対する危機の対策を売りにしているようでした。
この記事で私が注目したいのは「データレス」の部分です。
上記サービスの場合は1TBと定められています。しかし、つなぐ先はクラウドです。理論上はほぼ無制限に使えるはずです。
データレスは既に手元にある
データレスという単語を聞くと新鮮な気がします。しかし実はそれを既に実現してるプロダクトがあります。それがAppleのiCloudです。
iCloudはAppleが提供するオンラインストレージです。バックアップとして認識されていると思いますが、実はこれこそがデータレスを実現しています。
iPhoneは端末ごとにiCloudと繋がっています。そして、例えば写真などのデータは常にiCloudにバックアップされています。それだけではありません。実は古い写真など利用頻度の低いデータを端末から消しているのです。
その結果、iPhoneの物理的なストレージには最低限のデータのみが保存されている状態になり、実際はそれ以上のデータをiPhoneで利用できるようになっています。
「データレス」は実はもう身近に存在していたのです。
「パソコン」はただの箱になる
今後、データレスは主流になってくると予想します。5Gが一般的になってくることで、各端末がより円滑にネットワーク上のデータを利用できるようになるからです。
まず最初の段階としては、冒頭で紹介した「おまかせデータレスPC」のような、データ領域の完全クラウド化です。パソコンはアプリケーションを保存して動かすだけの領域が確保された商品となります。
次の段階ではシステム領域の完全クラウド化です。パソコンを立ち上げる都度でパソコンにシステム領域をダウンロードして利用します。パソコンは認証するだけの箱と化します。
ここまで実現すると色々とパソコンの使い方が変わってきそうです。
最も大きな変化としては、パソコンを持ち歩かなくなります。パソコンの中身は全てクラウド上にあります。なのでそれを動かす箱は何でもよくなります。会社ではDELLのパソコンで仕事をして、帰宅後に家のVAOIのパソコンで続きから仕事をすることも可能です。
「パソコン」が消える
更に想像を膨らませると、パソコンの箱自体も不要になります。代わりにスマホを使います。スマホのアプリケーションとしてパソコンを起動させてしまうのです。そうなると、パソコンの概念は崩壊して、Windowsというアプリケーションが存在してるだけになります。
全く違和感なく使えるリモートデスクトップのようなものです。もはやパソコンにおけるパーソナルなコンピュータはどこにも存在しません。
このゲシュタルト崩壊の鍵となるのは5Gを皮切りとした高速大容量通信の実用性です。なんと言ってもシームレスに使えなければ意味がありません。
むしろ、課題は通信速度の部分のみかと思います。完全クラウド化は技術的にはiPhoneがバックアップという形でほぼ実現していますから。
家電量販店からパソコン売り場が消えるのは割と時間の問題ではないかと思っています。