技術革新を目前に控えた今、消費者もシステム障害と対峙する心構えをもっておきたい
2月12日にPayPayや楽天ペイなどの決済系のサービスが軒並み使えなくなる障害が発生しました。原因は共通のサービスで起きた障害です。複数の決済サービスが同時に倒れる事態となって話題となっていました。
決済処理の共通サービスで障害発生
「PayPay」などのスマホ決済で2月12日、一部加盟店でコード決済できない障害が発生した。障害は午後4時ごろに復旧した。PayPay、LINE Pay、d払い、楽天ペイらに影響が出た。
(中略)
原因は日本ユニシス傘下のキャナルペイメントサービスが提供するゲートウェイサービスの障害。同社では午後0時10分ごろから4時10分にかけて、サービス提供各社と加盟店のネットワークがつながりにくい状況が発生していた。
この記事を最初に読んだ時、「PayPay、LINE Pay、d払い、楽天ペイ」という並びを見て意外だと思ったのが最初の印象でした。競争相手でありながら共通のシステムを介しているからです。
意外と思った後にキャナルペイメントサービスの事業内容を知り、納得しました。同社は店舗端末との仲介をしているということでした。それであれば共通化されているのは必然です。
今回の騒動で問題となったのは、必然的に集約されているシステムでした。しかし、このような「共倒れ」を起こす障害は今後も度々起きやすくなる予感がしています。
情報技術分野で求められている観点
情報技術分野におけるサービスは変革期にあります。核となっているのが5G(第5世代通信)とAI(人工知能)です。あらゆるサービスでAIが導入されるのが当然となり、5Gのサービス開始によりインターネットが抱えていた常識は覆されます。
これまでの環境での競争で優位だったサービスが、一気に覆されるかもしれません。変革期において生存競争に不安を抱えている企業は少なくないと思います。
この変革期を迎えるにあたって重視されているのが「変更に強いか」という観点です。変革の波に合わせてシステムの仕様を変更をする際に、躊躇なく安全に短期間で入れ替える必要があります。
「変更に強く」なるクラウド化の本質
「変更に強い」という観点から注目されて進められているのが「クラウド化」です。クラウド化というと、単純にインターネット上に移管していく作業のように聞こえます。しかしその本質は、普遍的な部分を外部に委託する点になります。
「クラウド化」という単語で語るので、サーバを例にして進めます。
かつては自社でサーバルームを抱えるなど閉じた環境で専門の技術者が管理をしていました。しかし、サーバの管理というのは各業者が抱えるサービスにおいては本質的な業務ではありません。それに加えて変更に弱くなります。
新しいサービスを始めるのにサーバを増やしたいとなった時に、場所の確保やサーバの手配など、余分な作業が発生しています。サーバの手配や構築という業務の質はサービスにとって本質的な影響をもたらしません。「クラウド化」という作業でそれらの本質的でない業務をAmazon(AWS)やGoogle(GCP)に委託することで簡略化しています。
サーバの例と同様にして、サービスの本質ではない部分においても外部に委託する傾向は増えていきそうです。冒頭の例で引用した障害もまさにその一例だと思います。決済業者とはいえ、QRコード決済の店頭での手続きは共通化された分野であり、各業者が独自に管理する必要のない領域でした。
別の例でいうと、フリーランスで働く方が税務を税理士に委託したりするのも同様ですね。それが目に見えない情報技術分野の中でも粛々と進んでいます。
各事業者はサービスの本質となる部分のシステム開発において開発費を集中させます。おそらく自社内でデザイナやエンジニアなどの専門家を抱えて経営者と同じ視点でサービスを発展させていくのだと思います。一方で、競争が生まれにくい普遍的な部分は外部のサービスに委託していくのだと思います。
災害と同様の心構えを
私たちの生活の核となっている行為も情報技術の恩恵を受けられるようになっています。しかし、今回のような障害に困惑する局面も同時に増えてきそうです。
例えば、決済サービスの障害があれば、買い物ができません。IoTの仲介サービスに障害があれば、もしかしたら家の鍵を空けられないかもしれません。便利で何気なく使っているサービスほど、いざという時に困ります。
システム障害というのは自然災害のように突然起きます。既に使い古されている結論になります。地震や台風の様な自然災害に備えるのと同様に、システム障害に備える危機管理も心がけておきたいですね。
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