ホロライブ格ゲー『Idol Showdown』の異常な愛情 格闘ゲームとVtuberの幸福な出会い
先日リリースされた、ホロライブを題材とした完全無料のファンメイド格闘ゲーム『Idol Showdown』。
格闘ゲームとしてのクオリティがとにかく異様に高い。単にビジュアルや原作再現が優れているだけでなく、対戦ゲームとしてのゲームシステムがめちゃめちゃ作り込まれているのである。
その証拠に様々な格闘ゲームを高いレベルでプレイしてきた、いわゆるガチ勢の配信者が口を揃えてクオリティの高さを褒め、継続的にプレイし続けている。
決してリップサービスで褒めているのではない、と考えている。
なぜなら、仮に実際にプレイしてクオリティがそこまで高くないと感じたとして、「ファンゲームとしてはよく出来ているけど、格闘ゲームとしてはそこそこだよね」くらいの言い方をしても、格ゲー配信者としては特に角は立たないから。
ホロライブファンもそれで納得するだろうし(よほどマッドでなければ)、むしろ面白くない格闘ゲームを面白いと言ってしまうことの方が、格ゲー配信者としての視聴者からの信頼を裏切ることになりかねない。
もちろん視聴者ウケが良いのも継続プレイしている理由だろうが、プロゲーマーが貴重な配信時間を割いて大会予定もないタイトルをプレイしている事自体、プレイすることの価値を認めている証拠だろう。
既存の格闘ゲームの良い要素を織り交ぜつつ、現代格ゲーのシンプルさを取り入れ、高い次元でまとめあげている、というのが自分の印象。
システムはやや複雑だが、操作感は爽快でストレスが少なく、昔ながらの格ゲーマー、特にいわゆるコンボゲーと呼ばれるようなゲームを好んできた人ほどやりこみ甲斐を感じるだろう。
そういった既存のコンボゲーと比べるとキャラクターの空中機動力が抑えられているため(キャラによる)、動きが早すぎて何が起こっているのかわからない状況が起こりにくく(キャラによる)、その点では初心者向けかもしれない(キャラによる)。
リリース初期なため荒削りな部分は多く、明らかに攻めが強すぎるバランスではある。専門的なことを言うと、無敵技始動やスパチャキャンセルに補正がかからずむしろ最大級の火力が出ることと、お手軽な見えないワープ表裏や同技制限を利用したガード不能はさすがにやり過ぎと感じる。
しかし「全キャラが超高性能」という形である意味バランスは取れている、というのが現状の雑感。さながら某世紀末格闘ゲームのように。
それは無料のファンゲームとしてはかなり適切なバランスではないかと考える。
なぜならファン目線からすれば、対戦ツールとしてのバランスが良いことより、自分の推しキャラが個性的で強力な方が嬉しいだろうから。完全無料なら多少のバランスの悪さも受け入れられやすいだろうし。
しかもオンライン対戦まで実装されている。自分はネットワーク関係にはまるで疎いのだけれど、聞くところによるとP2Pではなく公式がサーバーを立てて運用している、とのこと。無料ゲームでなぜそれが可能なのか、皆目見当がつかない。
他にも一人用モードもちゃんと作り込まれているとか、トレモにレコーディング機能もあって充実しているとか、ほぼ毎日アプデで問題点が修正されているとか、特筆すべき点は多数あるが多すぎるので割愛。
はっきり言って、ただホロライブが好きなだけなら、格闘ゲームとしてここまでクオリティの高いものを作る必要は、ほとんど無い。全く無い、と言ってしまってもいい。
ホロライブと格闘ゲームを愛する製作者たちが、ひとえに「良いゲームを作ってホロライブと格闘ゲームを盛り上げたい」という強い情熱(プラス資金力)によって作り上げたのだろう。なお製作スタッフは50人以上とのこと。
愛が成し遂げた奇跡、と言うとカッコよすぎるが、とにかくスゴイことなのは間違いない。
このゲームをきっかけに、ホロライブ沼にハマる格ゲーマーと、格ゲー沼にハマるホロライブファンが増えれば、製作者もファン冥利に尽きるだろう。VTuberと格闘ゲームという、自分が今まで追いかけてきたものが、こんな形で幸福な出会いをするとは、夢にも思わなかった。
個人的には、単なるグラフィックやモーションの原作再現に留まらず、格闘ゲームとしてのキャラクターコンセプトに各ホロライブメンバーのバックボーンが反映されている気がするのもエモポイント。自分の思い込みでなければ。
ときのそらはコンボに必殺技を多く入れてスパチャやゲージを溜めやすいため、より多くコラボでホロメンを呼び出せる。当初はえーちゃんと2人で始まったホロライブに、数多くのホロメンが集まりここまで成長してきた歴史を思い起こさせる。
星街すいせいは自己完結力が高く、単独で強力な攻めを展開できる。個人勢として自らモデルを作って活動を始め、今や『THE FIRST TAKE』出演を成し遂げるほどのスターになった、そのエネルギッシュな行動力が表されているようだ。
他にもこじつけたくなる点はあるが、自分自身、全メンバーを知り尽くしているわけではないのでこの辺にしておこう。