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ラスアスIIの思い出

※この記事は『The last of us partI』および『The last of us partII』、ついでにドラマ版の内容に言及しています。

HBOのドラマ版『The last of us』がとても面白かった。元々優れていた原作ゲームのストーリーを忠実かつ、細部に良い肉付けを施した、ファンが見ても初見が見ても両方楽しめる秀逸なドラマに仕上がっていた。

第一話、冒頭の討論ショーから始まり、小さな異変が積み重なった末に起こるパンデミック。所々に原作を補強する話を挟みつつ、最後はエリーの母と、その娘がなぜ現状世界で唯一の抗体を獲得するに至ったかを推測させるエピソードが挿入される。
忠実な原作再現と原作から脱却しないエピソードの追加は、まさに実写化のお手本と言えるだろう。俳優陣の演技も素晴らしかった。

――だからこそ、シーズン2にはどうしても不安を覚えてしまう。
全世界のゲームファン(そして俺)をアビ叫喚させたパートⅡのシナリオを、一体どう仕上げるのだろうか。俺が脚本家だったら筆を折って雲隠れする自信がある。

本題に入る前に少し自分語りさせていただく。

コロナ禍の時、やることがなかった当時の自分は、例年以上にゲームをして過ごしていた。ふと海外のゲームもやってみようとリマスター版を買い、猛烈にハマった。

頑張ってクリアすると、その日のうちにAmazonでPARTⅡを注文した。

2枚組のディスクが地獄の片道切符とも知らずに。

モノクロームなIとキタノブルーなII

一つ言っておくと、面白くなかったわけではない。画質、ゲームデザイン、難易度、進化したアクションなど、素晴らしい要素もたくさんあり、コントローラを動かしている間は熱中させられた(あと成長したエリーのビジュアルがめっちゃ好き。目つきの鋭いショトカ女子最高なんじゃ)。


ただ、あの健気な女の子が5年後こんな獲物食ったばかりの豹みたいな女性になるなんて…

そう言うわけで、”ゲームとしては”めちゃくちゃ楽しませてもらった。
だが、シナリオはそうはいかなかった。

なぜなら、この続編は、前作でエリーやジョエルを好きになったファンを地獄の底に叩き落とす物語であったからだ。
近いものでいうなら『龍が如く6』だろうか。あれは後に7や『名を消した男』でそれなりに救われた感があるが、発売直後は桐生ちゃんや遥の顛末に大いに違和感をもったものである。

まず、前作主人公が死ぬ。我々前作をプレイした者たちと苦楽を共にしたジョエルが惨殺される。今作の主人公の手によって。

トレバーおじさんかなんかですか?

そして、ジョエルを殺されたエリーは復讐(今作のテーマ)のためにシアトルへと旅立つ。感染者を薙ぎ倒し、慣れない拷問にまで手を染め、人を殺しかけ、しまいには全てを失ってしまう。

旅を通して彼女が得たものは義父譲りの全身武器庫振りと脇腹に空いた穴くらいで、最愛の存在も、パートナーも、帰る場所も、ぜーんぶその手からこぼれ落ちてしまった。復讐を選んだ対価といわんばかりに指まで欠損し、ギターを鳴らすこともできなくなってしまった。
もぬけの殻となった家を見た彼女は、何も言わず何処へと旅立ってスタッフロールが流れる。

こんなもん、10数えるまでもなく”Fuck you”のひとつも言いたくなる。

対して、ジョエルを殺したアビー。我々前作経験者は、俺たちのジュエルをぶち殺した張本人を結構長い間操作しなければならないのである。

なるほど、新手の拷問だとしたらよく考えられている。

アビーはエリーとは対照的に、守るべき存在と帰るべき場所を見つけ、最後はそこに向かう。彼女は色々苦しんだものの、まあまあいい形で旅を終えるのだ。
散々指摘されているように、これもプレーヤーの神経を逆撫でさせているのに一役買っている。

もちろん、ジョエルは誰かに殺されても文句は言えない人間だ。特に前作の終盤は自分のエゴのために殺戮を働いた。殺して殺して殺しまくり、血に塗れた手でエリーを抱きしめた。この時にアビーの父も射殺したのだから、彼女に殺されることが全く道理がないとは思ってない。

しかし、前作からのプレイヤーはジョエルの人となりを、その過去を知っている。前作では彼を操り、彼になって、探索し、戦ってきた。みんなそうとは言わないが、プレイを通してジョエルに愛着を持ったプレイヤーはたくさんいただろう。

彼は人間臭く魅力のある人物であった(あとイケおじだし、吹き替えの声は山ちゃんだし)。

前作のジョエルがやってしまったことが数年後に返ってきた。直前にジョエルとすれ違いから微妙な関係になっていたエリーは、仲直ることができないまま死別してしまい、そして救いのない復讐劇の幕が開く。
復讐からはじまり復讐に終わる物語に、はじめからハッピーエンドや救済なんてあるわけがない。
最終的にパートナーに背を向けて再び復讐を選んだエリーは、自分から不幸の道に身を投じたのだ(そもそもトミーおじさんが焚き付けなければ良かったんじゃ)。

それはわかる。わかるが、受け入れろと言われたらそれはまた別の話なのである。
俺の場合、エリーにはこれ以上不幸になってほしくなかった。ただそれだけだった。そしてそう思っていたプレーヤーは決して俺だけではないはずだ。

ともかく、クリアした直後、俺は激怒した。俺にはシナリオの良し悪しはわからぬ。だが推しを甚振る邪智暴虐に対しては人一倍敏感であった。

あったけれどもどうすることもできず、ただ超苦いラッピー茶並に後味の悪いものを飲み込んでしまったような気持ちで、ため息ばっかり吐いた。客観的に見て、こんなゲーム体験を今後すべきではないだろうと思う。

もしこれが別ルートのBADENDで、他のシナリオ分岐があるならまだ良い。至急二週目をやってGOODなりTRUEなりに進む方法を血眼になって探し出しただろう。
だが、このゲームは何をしようと決められた地獄行きのレールの上をただ進む。

救いはないんですか?

さて、そんな恐ろしい問題作(仮にもゲームオブザイヤーを獲ってるのに)のリマスターが、今日PS5でリリースされる。
PS4版を持っていると1190円でアップグレードできるらしいので、仕事から帰ったら早速ダウンロードしてみる予定だ。(これが1900円とかなら多分買わなかった)。

前述のようにゲームデザインに関しては文句のつけようがないくらい面白かったので、龍が如く8が出るまでの間、一度冷静になってやってみるつもりだ。

ただ、ムービーはたぶん飛ばすだろう。誰が好き好んでジョエルが死ぬまでのシーンとか見にゃいかんのだ。

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