パワプロ2024-2025のOPで泣いた
日本で一番有名な野球ゲームシリーズ『パワプロ』は、タイトルを出すたびにかなり気合の入ったオープニングムービーを用意してくる。
筆者の場合、京都アニメーションが手がけた『8』〜『11』は定期的に見返したくなるほど好きだし、今見ても非常にクオリティの高いCGムービー(+激アツなインスト)を披露した『15』、いつもより一際エモーショナルな歌と「夢を与えるプロになる」というメッセージが鮮烈な『2013』、歴代最高のプロ野球選手登場シーンと言われる『2014』、パワフェスにフィーチャーした『2016』あたりが特に好みだ。
そんなパワプロのオープニングムービーはゲーム界の一つの名物だと勝手に思っていたのだが、30周年記念作品である『パワフルプロ野球2024-2025』のそれは、もはや情緒を破壊するレベルの代物であった。
綺麗なムービーとそれに合った名曲、どこからそんな歌姫を見つけてくるんだと言いたくなるような歌声はいつも通りなのだが、ムービーの中身の気合いの入り方、製作者の選手への敬意に溢れた描き方、どれをとっても尋常ではなかった。
全ての要素を語ると多分1万字の乱文がひたすら続く地獄ノートが完成することは明白なので、以下は特に感極まったポイントを抜粋する。
あとまだみてない人はとりあえずみてほしい。百聞は一見にしかず。
まず、間の抜けた、それでいて記憶に残るBGMがおっさんの情緒を破壊する。そこから今のOPにするりと移行するのも素晴らしい。
歴代のパッケージ絵を並べて歴史を辿っていく。こういうのにオタクは弱い(2回目)。そしてパワプロ君と犬(ガンダー)が球場内を走り抜けていくが、そこには企画当時の絵コンテやキャラのイラスト(パワポケまである!)が地面や壁に落書きのように描かれている。それらが並ぶ中を”今”のパワプロ君がひたすら走っていく。
ここの描写はオタク的に満点すぎる。なぜならこういうのに弱いのだから(3回目)。
近鉄、南海、阪急の旧球団が復活搭載されることは知っていたが、選手登場シーンの一発目が近鉄、そしてノリさんである。原点にして頂点のバット投げにまずやられる。
阪急は世界の盗塁王・福本、阪神は史上最強の助っ人・バースと来て、オリックスは当然イチローだ。あのルーティンを掲げれば、たとえ2頭身のヒキの絵でも誰が誰だかは一目瞭然。月をバックに鉄塔の上で静かに構える様が”孤高”を醸していて語彙をなくすくらいかっこいい。初見では「うわ・・・ァァ・・・」とちいかわになるしかなかった。
広島は鉄人・衣笠祥雄、ロッテは三冠王・落合博満が熱いプレーを披露する中、広場に出たパワプロ君は一旦立ち止まる。
スクリーンに歴代のオープニング映像が同時に映し出され、中でも人気が高いだろう『15』、『2016』、『9』〜『11』が短いながら大写しになる。
そして件のメッセージが映された『2013』の真下、グラウンドへと続く通路へと走っていく。
そしてコンコースを抜けると、今作のタイトルがバックスクリーンに映し出され、花火が上がる煌びやかな光景の中、再びレジェンド選手が姿を表す。
DeNAはハマの大魔神・佐々木主浩、ホークスは強肩強打の代名詞・城島健司、巨人は王貞治と長嶋茂雄の二人が存在感を示す。巨人だけあえて二人でも許されるのは、ONたる故だろう。
楽天は初代のエース・岩隈久志、ヤクルトは球界最高の捕手・古田敦也、西武は平成の怪物・松坂大輔、中日は闘将・星野仙一、日ハムはガッツ・小笠原道大と、彼らが活躍した年代(星野さんは監督として)に少年だった野球好きが歓喜しそうなメンツが並ぶ。
12球団の紹介も終わり、歴代でもよくありがちな投手・パワプロ君が最後に投げて〆と一瞬思ったが、歌がラストサビに変わった瞬間、最もやばいシーンが訪れた。
近鉄、阪急、そして南海――代表は野村克也。他の選手とは違い、ただ投手に向かって気合いを入れるかのようにグラブを叩き、静かにボックスへと戻っていく。
自分はノムさんを尊敬はしているが、めちゃくちゃ好きだったわけでも、阪神・ヤクルト・楽天ファンだったわけでもない。それでも、このシーンを見返すたびになぜか涙が出てくる。なぜかはわからない。この時点で歌も最高潮に達しているからだろうか。
一つ言えるのは、”生涯一捕手”を描くならこれ以上の描写はないだろうということだけだ。三冠王の打棒でも、盗塁を刺すといった捕手の見せ場的シーンでもない。静の中の動――これがいい。
そして投手がマウンドにのぼり、キャッチャーが定位置に戻るなら、必然的に打者がバッターボックスに向かってくる。さあ、そのバッターは――
打席に入るのは日本を背負う大谷翔平。レジェント達を一瞬映した後に、パワプロ君が第一球を投じてこの奇跡のようなムービーは終わる。
良いゲームのオープニングムービーは、とにかくゲームをやる前の気分をワクワクさせてくれる。『時のオカリナ』の静かなBGMに蹄の音を響かせるムードある始まりもドラマの始まりを予感させるし、『真・三國無双4』の一騎当千を絵に描いたようなシーンも最高だった。『ネオ桃山幕府の踊り』のようにあの年代で歌入りのOPがあったのも子供ながらに好きだった。
いろんな良いOPに触れてきたが、今回の『パワプロ2024-2025』のそれは個人的には傑出している。シリーズのファン、野球ファン、自分の中の二つの要素が噛み合ってこの記事を書いている最中でさえ何度となく泣いてしまっている。Xを見ていると情緒を破壊されたのが自分だけではないのがちょっとした救いだ。
最初、「プロスピはPS5に向けて進化したのにパワプロは旧世代機のままか」と少し残念に思っていたが(買うけど)、もはやそんなことはどうでもよくなった。
7月18日を心から楽しみにしています。
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