映画「悪人」あらすじと感想
あらすじ
建築現場で働く宮崎在住の青年、祐一は、スーツ用品店で販売員として働く光代と出会い系サイトで知り合う。
いくつかの共通項から親近感を抱く二人は、互いに孤独を分け合うように惹かれあっていく。
しかし祐一は、光代と出会う前に同じように出会い系サイトを通して知り合った女性を殺害してしまっていたことを光代に告白する。
殺人犯として警察に追われることになった祐一だが、光代はそれでも一緒にいたいと彼と共に逃亡することを決意する。
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感想
どこか同情したくなるような殺人犯、加害者に対してあまりにもひどい態度を取っていた被害者、殺人犯を愛してしまった薄幸の女、殺人には関与していないが被害者やその遺族を馬鹿にした態度を取り続ける男、復讐に燃える被害者の遺族、殺人犯の家族として世間から非難される加害者の家族。
それぞれにフォーカスし、「本当の悪人は一体誰なのか」をオーディエンスに考えさせる映画。
自分の傷つくことを恐れるあまり、割り切ったような態度を取ってしまう不器用さだったり彼のピュアさを見て、祐一に対してものすごく同情してしまい、光代と同じように、彼が悪人であるとは思えなかった。
被害者の女、佳乃と出会わなければ彼は殺人犯になりようもなかったんじゃないかな。
お前はなにも悪くないよ、と佳乃に語り掛ける彼女の父。
きっともっと裁くべき悪人は他にいて、それでも佳乃の両親からしてみたら一番憎みたいのは祐一なんだろうなっていうのも十分に理解できる。
佳乃の父の、「今の世の中、その人が幸せに暮らしているところを思うだけで自分のも幸せになれるような大切な人、その人がいない人間が多すぎる」という言葉が刺さった。
祐一の、自分を好いてくれる人の心の綺麗さに自分の人間性が嫌になる気持ちは痛いほどわかるなあ。
光代と祐一の関係について、お互いを必要としているのは素敵だけども、惹かれあっているような描写が少なすぎて、自分の孤独を埋めてくれる相手なら誰でもいいんじゃないかと最初は思っていた。
けど逃走中の二人の、分かり合うことはできないけどぶつかりながらも二人で生きている感じは、完全に互いが互いの大切な人なんだなってよく分かった。
ラストの祐一の行動は、光代の眩しさから自分を守りたいっていう気持ちを乗り越えて、光代を守ろうとしてのものなのかあと思った。