#54.5懺悔
先日、
1人の女性が薬局に来た。
記録が4ヶ月くらい前。その間、他の病院にかかっていたようだ。お薬手帳をぱらぱら捲る。産婦人科から、分娩誘発などで使われる薬を飲んだ痕跡をを見る。
来局時、子どもは連れていなかったけれど、産まれたのかな、授乳中かな、と思い、お薬を渡しながら、「ご出産ですか?」と声をかける。
一瞬、時が、空気が止まる。表情が静かに動く。
予想と違う反応。
ざわりとした空気が肌を撫でる。
彼女の表情は見る間にかたくなり、
小さな声で
「死産しました」と呟く。
そして静かに涙を流す。
私はただ、立ち尽くす。
ごめんなさい、と謝ることしかできなかった。
薬を貰う人と、渡す人の関係性なだけの中で私は傷つけただけで、何も出来なく無力だった。
土足で、心の中に上がり込んで荒らす、とはこうゆうことか、と。
人を傷つける感覚を、手触りを、いまだに忘れられないし、忘れてはいけないのだろう。
一過性の関係の中で、それでも少し関わることにエゴのような自己満足を覚えて、それに浮かれていたのかもしれない。
想像力が足らない。
そして、その場凌ぎで平気でも、本当は傷ついているかもしれない。
そんなことを思う。
彼女が、もう、来てくれなかったら嫌だな。
同じことを別の人が繰り返さないよう、そっと記録に書き残す。
私は、戒めのために、書き残す。
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