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限界。

皇居外苑に来た。
時計は19時30分を指している。
ここに来るときはもう少し晴れやかな気分で来たかった。
業務に必要な資料を集めるために1日奔走し、さて帰れると思った矢先、足りないことに気づいてここに来た。
正直資料さえ取れれば何でもよかったのだが、こんな機会でもないと来ない。多分そう。とかいう根拠のない自信が優先された。
土地勘がないので全てをナビに頼る。ナビは日比谷駅からずっと歩くといいよと言ったのでそうした。
最悪だった。
歩き回った後に行く場所では絶対にない。
だらだら20分くらい歩いた。
行く途中で結婚式の前撮りだか後撮りだかをしているカップルを2組見た。
似たような景色を去年の冬に東京駅でも見た気がする。
こんな暑いなかよくやるなぁ、と横目に通り過ぎた。
ここに来るならついでに寄りたいカフェがあったので、そこに行くことを自分へのご褒美とした。
こんな時間にこんなところをスーツで歩いている人間なんか自分くらいしかいない。
だんだん悲しくなってきた。
お堀は深そうだし、暗くて鯉は見えないし、蓮とか浮かんでて飛び込んだところで気持ちよくもなれなさそうだし、とりあえず早く休みたいとか内心でぶつぶつ言っていた。
ナビが目的地まであと3分と言ったところで周りの景色に目を向けると、ビルの光がお堀に溜まっている水に反射していた。
雰囲気がよさそうなお店から出ているオレンジや黄色の光がやたらと綺麗で一瞬足が止まった。
写真に撮ろうと思ったけれど、こういうのは肉眼が1番いい。撮りたいものが何も画面に写らなくてやめた。
ご褒美のカフェの目の前に噴水広場っぽいところがあった。
ライトアップされた噴水とゆらゆらした水面に流れていく光が疲労に沁みて涙が出てきた。
一通り資料を揃えてからカフェに入った。
甘味は正義。
ガラス窓から見える噴水を眺めつつ飲み物を楽しんでいたら平静が戻ってきた気がする。店内の調度品や来店客を1時間ほど観察した後、恋人に帰宅の連絡を入れて店を出た。

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