ピースの残り香。
その日、星空を見た。
決して、見ようとして見たわけではなかった。
私にとってはいつでもそこにあるもので、
注意していないから
きっと全ての星が無くなっていても気づかないようなもの。女の子の前髪よりもけったいな。
なのに自然と目に入ってきた。
肺から吐き出した煙が世界を汚しても
その光はまっすぐこちらへ向かって来ていた。
月の位置すら探せない私にも
あの十字は何よりも美しく見えたんだ。
背筋を伸ばしながら、「南十字だ」と思った。
安直にも。
少し間をおいて、オリオン座かもと思った。
教養がないことを恥じるばかりの毎日に
誰にでも平等なあの空までもが
私を貫く刃となるなんて思いもしなかった。
夜空は味方だと思ってたはずなのに。
傲っていた。
夜空の夜の字も知ろうとせずに。
あぁ、別れ際のカップルみたいだ。
あとから調べた限りでは、
上と左はふたご座で、
下はこいぬ座の一等星、
右はオリオン座の一等星だったんだと思う。
それぞれが違う星座だった。
私ならその4つを線で繋げちゃうけどなぁ。
安直に。
午前2時32分。
少女との電話を終えて凡そ15分が経った頃だった。
2時間に満たないその電話は、間違いなく今の私たちのピークだった。
私たちは移り変わる。明日は明日の私たちがいる。
実際にそうだった。
お酒の抜けた君は別人で、いつもの姿だだった。
そんな距離感を感じるくらいには、まだうぶな2人。
これくらいがいい、なんて。
夢見る少女は慰めキッスの夢を見ない。
あれから日がすぎて、連休が終わろうとしている。
私たちは、夏休みの宿題をようやく終えたばかり。
それでもまだきっと、チューニングは合ってない。
同じ時間を過ごしたい。那須のお土産だって渡したい。
それが叶わないのは、人目が苦手な少女だからかな。
バイトが忙しい少女だからかな。
私が嫌いな少女だからかな。考えるのをやめた。
読書感想文、まだ出してないや。
あの日の空は、遠く離れた西の街でも見えていたんだ。
同じものが見えていても、同じところから見えていないのは
ちょっとだけ寂しい。
私だって苦手に感じるところはある。
それでも隣にいたいって思えるくらいに
気遣い合っていける人だと思うの。
関係が深まると、ううん。訂正。
距離を縮めるのに、なおざりにしようとするのはどうしてなんだろう。
少し前に、ずっと気張っている感じだと言われてしまった。
距離を感じたみたい。
私はそれが居心地よかったのにな。
別に今が居心地悪いわけじゃないけれど。
人間としての尊敬を
タメ語で表現することはできないのかな。
わたし、気づいたかも。
友達になりたいんじゃなくて
パートナーになりたいんだ。
バディとかコンビの方が誤解がないかな。
お互いを称え合って
存在を確かめ合えるようなニコイチに。
それが友情とか恋愛とかって言葉で覆われてもいいから
あの日の星空と私のようにはならないで
常に存在を確認し合える関係に。