小さな戦争。
楽しく呑んだ後の帰り道。
1人、反対方向へ。
感傷に浸るには完璧なセッティング。
十分に時間もある。
けれど、泣いてはいけない。
そんな思いで必死に堪える。
改めて、私は自分の存在を確かめる。
約2ヶ月前、突然にお空へ向かった人。
その人から遺されたもの
その人と関わりのあった人
思い思いの丈は
当然に重く意味のあるもので。
私の我慢をもろともせず
改めて涙が出た。
どうして、と思うのは、
その人が旅立とうと思った理由ではなくて。
どうして、と思うのは、
旅立たせてしまった社会について。
我々のようなセクシャルマイノリティは
日本でもたくさん存在している。
息を潜める人もいれば
矢面に立ち戦いながら生きる人もいる。
今、アメリカではまた差別が過激化していると聞く。
どうして、と思う。
仕方がないことなんて絶対にないから。
あの子は。
あなたは。
私は。
みんな他人に厳しい。
あなたは自分に厳しいの?
生きたくて生まれたわけじゃない。
生きるしかなくて生きている。
それなのに
生きることすら
そこにいることすら
許されないことがある。
あの子は。
あなたは。
私は。
多分きっと、他人事で。
どうでもいいと思いながらも
自分の側に置くことは嫌がるんだよね。
いつまでも腫れ物で
自分に関わりがなければ
当然に無関心でいられてしまう
そんな時に関わりを持ち始めることがあれば
偏見まみれの嫌な関心を向けてしまう。
あの子は。
あなたは。
私は。
私は違うから。
そう言うんだよね。
良かったね。いつまでも安全圏で。
生まれた時からマジョリティで。
だからあの子は
とか
あなたは
とか平気で言えるんだ。
迷惑をかけなければなんて理論は
こっち私だって同じだ。
私を否定しないのなら
居てくれたって構わない。
迷惑をかけないなんて
当たり前の道徳を
倫理を
守れていないのはどっち?
どれだけ攻撃されようと
私が手を出すことはない。
これは小さな戦争。
やり返すことがないから。
でも本当は大きい戦争。
世界中でずっと起きているから。