改・SYNCROOMでの同期演奏のススメ 〜ステレオ音源編〜
はじめに
快適で素敵なリモートセッションライフをお過ごしの皆様、こんにちは。以前こちらの記事でSYNCROOMでの同期演奏の方法について解説しました。
こちらはGarageBandやStudio One といった比較的普及しているDAWで利用できる方法ではあるのですが、モノラルの音源を利用するという性質上、以下のようなデメリットが生じてしまう場合があります。
・楽器のパンが触れないためボーカルと定位が重なりボーカルの抜けが悪い
・楽器の音に個別のリバーブをかけるとクリックの音が聞こえてしまう
デメリットもさることながら、単純にステレオ音源の方が綺麗に聴こえるという圧倒的メリットもありますので、今回はステレオの音源を利用した同期演奏の方法について解説していきます。
用意するもの
私の環境(macOS 10.14.6)では以下の物を用意しました。
・REAPER(クリック/音源再生用のDAW)
・クリック音源(モノでもステレオでも可)
・オケ/シーケンスがステレオ録音された音源
・Soundflower (仮想オーディオデバイス)
・LadioCast
REAPERはWin/Macを問わず無料で機能制限なく利用できる軽量・高機能のDAWです。以前の記事で導入方法を解説していますので、導入についてはそちらを参照してください。
またDAWは必ずしもREAPERである必要はありませんが、必要なのは複数の出力(3ch以上)をトラックごとに直接ルーティングできる機能です。調べたり試したりしたところではGarageBandや無料ライセンス版のStudio Oneでは利用出来ませんでしたが、Logicであればおそらく実現できると思います。
Soundflower とLadioCast の基本的な使い方についても前回同様割愛しますが、以下の記事が参考になると思います。
REAPER、Soundflower、LadioCastの準備が整ったら設定をしていきます。
1. 音源再生用DAWの設定
まず環境設定で音声出力デバイスをSoundflower (64ch)に設定します。
続いて、プロジェクト画面で以下の設定を行います。
①クリック用のトラックと音源用のトラックを作成する
②片方のトラック(例では音源用のトラック2)のミキサーで「ROUTING」ボタンを押しルーティング設定を呼び出す
③「マスターセンド」のチェックを外す
④「音声ハードウェア出力」のプルダウンメニューから「Output 3 / Output 4」を選択する
DAWの設定はこれだけです。あとはトラック1にクリック音源を、トラック2にオケ/シーケンス音源を配置してください。当然ですがクリックと音源のタイミングはしっかり調整してくださいね。
2. LadioCastの設定
LadioCastの設定は以前のものとほぼ同じですが、わずかに変えます。
・入力側にDAWから受け取る「Soundflower (64ch)」を二つ設定する。
・片方(例では入力2)の出力を「メイン」にルーティングする。音量インジケータ横の数字は触らない。
・もう片方(例では入力3)の音量インジケータ左側の数字を3と4に変え、出力を「Aux 1」にルーティングする。
・出力 メインはヘッドフォン等のモニター用の出力デバイスを設定する。
・出力Aux 1は「Soundflower (2ch)」(SYNCROOMへ渡すための入力デバイス)を設定する。
以前解説したとおりLadioCastの各入力のインジケータ隣の数字は入力chを表しています。入力2はDAWのトラック1からのクリック音源がそのまま出力メイン1に設定した自分のモニターに返ります。入力3の方はDAWの方で設定したOutput 3 / Output 4に対応することになるため、オケ/シーケンス音源がステレオでSYNCROOMに入力されることになります。(ちなみに私は入力1にコーラス・会話・ドラム用のマイクを繋いでいるためそちらもAux 1のSYNCROOMに渡す設定にしています)
3. SYNCROOMの設定
SYNCROOM側の設定は以前解説したものと変更はありません。SYNCROOMのオーディオデバイスの項目で
・入力を「Soundflower (2ch)」に設定する。
・出力をヘッドフォン等のモニター用の出力デバイスに設定する。
これでOKです。入力のモニタリング設定で「モニタリングする」にしているため、やはり音源もちゃんと自分でモニターすることができます。
演奏例
これでステレオ音源を利用した同期演奏が可能になりました。私の記事ではすっかりお馴染みとなったニコチルさんのYouTubeチャンネルで先日配信されたミスチルコピーバンド「ニコチルバンド」のリモートセッション配信ライブでこの設定を使った演奏が見られますので、よろしければご覧ください。特に27:40ごろ〜『DANCING SHOES』では冒頭は生で弾いているエレキギターのアルペジオがフレーズの切り替わりに伴い同期の音源がRchから流れてくるのがわかると思います。