素人があれこれ工夫を凝らして遠隔同時演奏+生配信をやってみた
自己紹介
note.でははじめまして。りゅーきちという名前でインターネットをやっている者です。良くライブやフェスに行ったり、趣味でDJまがいの行為をしていたり、かつてはバンドでドラムを叩いていたりしたごくごく一般の音楽好きなおじさんです。
はじめに
昨年転勤によりソーシャルどころではないディスタンスを取ることになった友人といかに遠隔セッションで遊べるかということを探っていたことと、コロナ禍によりありとあらゆる配信コンテンツが雨後の筍の如く生まれたお陰かノウハウの収集も容易くなっていたこともあり、セッションの様子を配信すれば擬似的なライブが出来るのではということで話が盛り上がり、先日実際に配信を行ってみたので本記事ではそのポイントをまとめてみます。
なお、基本的な遠隔セッション配信のノウハウについては以下のLITE 武田さんの記事が非常によくまとまっておりますし私も大いにに参考にさせていただきました。マジでこの記事がなければ俺らみたいな素人でもライブ配信出来るんじゃね?という発想にはなりませんでした。
そのため、本記事では上記記事で触れられている点やNETDUETTOの使い方については割愛させていただき、「私の環境ではこうやって実現した」「私の環境ではこんな問題点があった」にフォーカスしたいと思います。悪しからず。
なお、予想通りめちゃくちゃ長文になってしまったので必要な部分だけかいつまんで読むことをおすすめします。
全体の配信環境
今回配信に用いた主要なハードウェアとソフトウェアは以下の通りです。SoundflowerはOSバージョンによっては使えないらしいのでご注意を。
ハードウェア
・Mac book Air (Early 2014, CPU 1.4GHz Core i5, RAM 4GB ):配信用
・Mac mini (Late 2012, CPU 2.3 GHz Core i7, RAM 16 GB):セッション用
・オーディオインターフェース:配信用PCへの入力用
・アナログミキサー:ギターとマイクの入力用
・MIDIキーボード:ドラム音源入力用
・iPad:メイン配信映像用
・iPhone:サブ配信映像用(なくても全く問題ないです)
ソフトウェア
・OBS:配信用
・NET DUETTO2:セッション用
・Ladio Cast:疑似ミキサー
・Soundflower:疑似オーディオインターフェース
・Reaper:ドラム音源再生用DAW
ネット環境
・配信ホスト:光回線、有線接続
・演奏メンバー:光回線、無線接続
また、全体を俯瞰した図は以下のような感じです。
一見複雑に見えてそっ閉じしたくなる気持ちもわかりますが、これから一つずつなるべく丁寧に解説していきます。
セッション用PCの設定のポイント
①:オーディオインターフェースがなかったのでアナログミキサーで代用
いきなりおま環の話になりますが、まともなオーディオインターフェースを持っておらず、手頃なオーディオインターフェースは軒並み品切れ入荷未定の状況であったため、元々持っていたBEHRINGERのアナログミキサーを使ってMacのLINE端子にギターの音とマイクの音をまとめて入力することにしました。
最初期はPODをオーディオインターフェースとして使ってセッションしていたのですが、どうしてもモニタリングして聞こえる音の遅延が気になったのと、やはりマイクで声も乗せたいということもありこのような形に。とはいえ当然一切遅延はないので可能な人はこれでやる方がストレスないかもしれません。
②Ladio Castで入力×2、出力×2を設定
まずInput側で2つ、「内蔵入力」と「Soundflower(2ch)」を設定します。「内蔵入力」は先程のギターとマイクの音を、「Soundflower(2ch)」ではDAWからのドラム音源を拾います。DAWの設定で出力デバイスを「Soundflower(2ch)」にしておきましょう。
そしてOutput側で2つ、出力メインに「内蔵出力」と出力Aux1に「Soundflower(64ch)」を設定し、入力側で「出力メイン」と「出力Aux1」が出力先となるようにボタンを押します。「内蔵出力」は配信用PC及びモニターへの橋渡しとなり、「Soundflower(64ch)」はNET DUETTOへの橋渡しとなります。これで自分の耳とNET DUETTOの先にいる演奏メンバーに自分の音が届くことになります。
③NETDUETTOでの設定
オーディオデバイスは「Core Audio」を選択し、入力に「Soundflower(64ch)」、出力に「内蔵出力」を選びましょう。なおここでポイントとなるのは、モニタリング設定を必ず「モニタリングしない」に設定しておくことです。すでに自分の音はLadio Castで内蔵出力に返って来ているため、NET DUETTOからは演奏メンバーの音だけ内蔵出力に返せばOKです。
配信用PCの設定のポイント
①Ladio Castで入力×1、出力×1を設定
先程の要領でLadio Castを使いセッション用PCから受け取った音を入力に、OBSに渡す用の出力に「Soundflower(64ch)」を設定しましょう。と、ここまで書いておいて最初からOBSの入力に「USB Audio CODEC」にしておけば良かった事に気づきました。ということで配信PCの設定はもっと簡略化できますね…
②OBSの映像ソースとしてiPadを選択
メインの映像としては今回、LINEのビデオチャットを利用しています。映像用なので当然マイクは双方でミュートにしており、LINEである必要はもちろんありません。この辺は武田さんの記事でも触れられているところですね。
個人的に気になったのはLINEのカメラ設定をインカメにして使用していたため、自分の映像がミラーになってしまったところです。Zoomであればカメラ設定でミラーを切ることも出来たはずなので、そこはお好みでという感じでしょうか。
③OBSのサブ映像ソースとしてEpocCamを選択
今回MIDIキーボードを利用してDAWのドラム音源を鳴らす、ということもチャレンジしたので、せっかくなので手元を映せるようにもう一台映像ソースを用意することにしました。
ただし、OBSの制約なのか同時にソースとして認識できるiOSデバイスが1台のみのようだったため、他にカメラとして使えそうなデバイスも持っていなかった私はフリーソフトのEpocCamを利用して2台目のiOSデバイスを映像ソースとして認識させました。まあ結局致命的な問題で使いものにはならなかったのですが、その点は後述します。
ここまで出来れば配信するだけなので、あとはもう度胸とハッタリでやるしかありません。別にいつもと変わらない自宅の環境で、目の前にお客さんがいる訳ではないのに、「配信している」という事実だけでちょっと緊張したりするもんだから不思議なものですね。
配信テストで見つかった問題点
さて上述した構成は最終構成なのですが、そこに至るまでにいくつかの致命的な問題点が見つかりましたので記載しておきます。
問題点①:演奏メンバーの音が配信に乗らない
いきなり流石にクリティカルすぎる問題です。というのも、ハードウェアのスペックを見ていただければ分かる通りセッション用に使っているマシンのスペックがそこそこ高いため、もともとはそちらでOBSも起動して配信するつもりでいましたし、出来たつもりでいました。
ところが、
・NET DUETTOの出力設定を内蔵出力にしている
かつ、
・OBSの入力オーディオ設定でMac内蔵出力は選べない
ことにより、内蔵入力から入ってくる私の楽器と声しか配信に乗っておらず、「セッション」と銘打っておきながらドラム音源に乗せたアカペラ歌唱のみが配信されるという恥ずかしい事態にテストの時点では陥っていたりしました。
もう一つ仮想オーディオインターフェースをMacに設定できれば解決したかもしれませんが、共存出来るのか疑問もあったため力技でもう一台の配信PCを廉価なオーディオインターフェース(UCA222)で繋ぎ、セッション用PCからの標準出力をそのまま配信に乗せることにしました。結果的に自分のモニタリングしている音がそのまま配信に乗ることになるのでバランスの調整もし易かったです。
(ちなみに各種オーディオインターフェースが軒並み品切れになっていた中UCA222だけは6月頭時点でサウンドハウスに在庫があり、注文して翌日に配送されてきました。サウンドハウスの発送体制エグい。)
問題点②:PCでWebブラウザを開くと配信音声が途切れる
「途切れる」と書きましたが、実際は耳障りなノイズのような音が延々と流れているだけで、かろうじて何らかのリズムがあるかもしれない、というのが分かるレベルです。聴けたもんじゃありません。
配信用PC配信だけでなく、セッション用PCでWebブラウザを開いても同じような現象になっていたため、おそらくブラウザのバックグラウンド通信が自宅の帯域になんらかの影響を与えていたんじゃないかと推測しますが、原因は不明です。とりあえずブラウザに限らず余計な通信をする可能性のあるソフトは軒並み落としておいたほうが吉だと思います。(とはいえ同じネットワークでLINE使ってビデオチャットもしている状況なので帯域ではない何かで干渉している可能性がある気もします)
問題点③:EpocCamの映像の遅延が酷く使い物にならない
配信PCの設定でも触れましたが、リハの時点で上手く設定出来ていたように見えたEpocCamのサブカメラの映像ですが、いざ配信が始まると遅延が酷く、とても使えたものではありませんでした。どのくらい酷いかと言えば、しばらく前に曲が終わったのにまだおじさんの指が超スローモーションで鍵盤を叩いているように見える、というレベルの遅延です。完全に処理落ち。
こればかりはちょっとどうしようもなく、最終的に配信中にサブカメラの映像はオフにしてしまいました。PCのスペックの問題なのだろうか…?
演奏メンバーの設定
最後に演奏メンバーについてです。演奏側メンバーは今回一人でしたが、理論上複数人でも問題なく出来ると思います。詳細な設定は不明なため割愛しますが、とりあえず演奏メンバーの目標としては「NET DUETTO上でセッションができるように設定する」でOKです。
あと、今回は演奏メンバー側は無線でインターネットに繋いでいましたが、終始致命的な遅延があるような状態にはなりませんでした。配信ホスト側から見て常時上り30ms、下り40ms程度の遅延だったのでNET DUETTO的にギリギリ許容範囲といった感じです。30分ほどの配信を行いましたが、最後の方で少し遅延が大きくなってしまった以外は概ね問題なく演奏できました。
無論有線接続が出来ればそれに越したことはなく、もっと安定したかもしれませんが、以前別の友人と試したときはお互い有線で繋いでいるのにも関わらずここまで良好な状態にはなりませんでした。流石にここは環境に依存する部分なので仕方有りませんね…。
さいごに
きっかけはコロナ禍による全国的な外出自粛ではありましたが、物理的に如何ともし難い距離がある友人とのセッションと、配信という形ではありますが「ライブ」を一緒に実現出来たことは本当に嬉しかったです。人に見られることを意識した練習が技術の向上にも繋がる、とはよく言われているものですので、せっかく構築したシステムを使って機会があればまた今後も配信をやってみたいと考えております。
素人の趣味でやっている拙い演奏ではありますが、こんな感じになるんだというイメージが伝われば幸いということで配信のアーカイブへのリンクを貼っておきます。
冒頭にも書きましたが、思いの外、ではなく思っていた通りのめちゃくちゃな長文をここまで読んでくださった方にお礼を申し上げます。もちろん一部だけ参照していただいた方にもお礼を申し上げます。また、LITE武田さんの記事は参考になっただけでなく大いなるモチベーションに繋がりました。(何度でも)重ねてお礼を申し上げます。
この記事もまた遠距離で練習やライブがままならないバンドマン、ミュージシャンへの一助になることを願ってやみません。音楽は鳴らし続ける限り鳴り続けるのです。なんつって。