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大阪湾一回転 (1日目:和歌山・徳島迷走編)
去る5月の二日間で私は大阪湾を一周した。これはその旅の記録である。別に大阪湾を一周したくて旅行した訳ではないが、いつものことながら目的がはっきりしないままふらふら移動してたら結果的に一周してたのでタイトルはこれにする。
今回の旅では自転車、船、バス、電車と様々な移動手段をフル活用した。特に自転車、これがこの旅の鍵となる存在だ。私の愛用する自転車は分解して袋にしまって電車などに積んで持ち運ぶ、いわゆる輪行が可能なタイプなのである。今回はその輪行を使って、住んでいる神戸からそこそこの近場ながらメインで行ったことのない和歌山と徳島、淡路島を回ってみることにした。
唯一の懸念は自転車に乗ったり自転車を運んだりするための体力があるかだった。自慢じゃないがこちとら最近大学との往復くらいしか運動してないなまくら学生なのだ。だが私は、「とりあえず神戸出発して和歌山、徳島と回って淡路島から帰れば兵庫県内やし最悪何とかなるやろ〜」という理系大学院生を名乗るのもおこがましい未曾有のガバガバ計算で出発を決めた。久しぶりのサイクリング旅ということで浮かれていたのかもしれない。まあ無計画はいつものことであるが。
チャリンコ担いでどこへ行く
4時起きである。毎日10時に起きるのも苦労しているのに、やはり旅となればどんな時間でも起きれるものでまったく現金である。ともかく支度をして家を出る。自転車で坂を駆け降りると、なんと信号が全部青だった。兵庫県警管轄の信号のだめさには訳あって詳しいので珍しいと思った(卒論で共同研究した)。
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新在家まで降りて自転車をバラす。手慣れた人だと10分もかからないらしいが、慣れてない上に眠いので20分以上かかった。
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ホームに上がった。まずは阪神電車でなんばまで行く。いや大阪湾一周とか言っときながら大阪までさえも自転車で行かないのかよ、という非難が聞こえる。うるさい、おれにそんな体力は無いのだ、温存だ温存。
尼崎で乗り換えて大阪難波に到着。約30kmを400円で行けるんだから今思うとありがたくて涙が出る。ただ、阪神線の大阪難波駅とこれから乗る南海のなんば駅は500mほど離れているので、自転車を担いでの徒歩はきつかった。都市計画's Lose。
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なんば駅で徳島好きっぷという切符を購入する。これは、南海沿線から和歌山経由フェリーで徳島まで2200円と格安の切符で限界旅行勢には有名だ。ただ、私はてっきり和歌山までの南海線の切符と南海フェリー用の切符が二枚セットで発券されると思ってたので、普通のちゃっちい切符が一枚だけ出てきて驚いた。徳島港行き。これで海を越えられるらしい。ちなみに対照的なことにVISAタッチでチケットレス乗車もいけるらしい。私はそんなスマートなことはしない。
6時台だというのに急行電車はそこそこ混んでいる。大きい荷物を持っている手前、座るわけにもいかないのでずっと先頭車両で立っていた。
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先述したように切符が分かれていると思っていたため、和歌山市駅で降りて自転車でフェリーの港まで行っても大丈夫だろうと思っていたが、どうやら途中下車前途無効らしいので和歌山港駅まで乗るしかないらしい。和歌山港駅は和歌山市駅からたった一駅だが、列車の本数が少ないので、30分も待つ羽目になった。
路地探訪 in 雑賀崎
和歌山港駅に到着。電車だけで大阪湾を約半周してしまったのでタイトル詐欺も甚だしい。すぐにフェリーに乗り換えてもいいが、和歌山も観光するつもりなのでチャリを組み立てる。さてまずどこに行くかだが、まずは雑賀崎という港町に行くと決めていた。
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雑賀崎は左下のでこぼこしている所あたり
前に岸田総理が襲撃された事件で有名になってしまった所だが、それ以前からそのうち行こうと思っていた。地形に惹かれたからである。和歌山港から広い港の道路を南下する。しばらくは平坦な道だったが、雑賀崎は山の裏側にあるので坂を登らないといけない。
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日差しが五月の朝とは思えないほど強く、汗ばんできた。令和ちゃんはいつになったら温度調整を覚えるんですかね、とか思いながら坂を登っていると尾根筋の道に出た。港に降りていく路地は狭くて階段もあるので自転車を止めて歩く。
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いざ路地裏へ突入。家の隙間から海が見えるのが最高。私の路地好きはいつ始まったのかよくわからないが、細く狭い道を通る時特有の、迷い込む、という感覚が好きだ。狭ければ狭いほど、入り組んでいれば入り組んでいるほど好みである。
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住民とすれ違って挨拶を交わした。私と同じようにこういう路地を散策するのが好きな人もいるとは思うが、おそらくまだ知名度が低く、市民権を得た趣味とは言えない。つまり、路地裏を徘徊するよそ者は、他人からすると奇異な、特に住人からは怪しい奴という認識になるだろう。だから私は路地で住民とすれ違った時、とにかく先制で挨拶をするようにしている。見た目の怪しさはどうしようもないので中身の印象だけでもどうにかしようという詐欺師さながらの努力である。そんなことはどうでもいい。お気に入りの路地の写真を見るのだ。
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どういう風に形成されたのか想像するだけで楽しい
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いいとこに巣を作ったな。
迷路のような路地をウキウキしながらうろうろしていると(不審者)、急に視界が開けた。どうやら港まで下ってきたらしい。朝の忙しい時間も終わったのか人もまばらである。
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のどかだ。どれくらいのどかかというと堤防の上でおじいさんがすさまじい光線を受け止めて爆発寸前という感じの大きなのびをしてるくらいにはのどかである。
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うーん、良い。こういう湾曲した斜面に家が密集している地形を私は勝手に三次元的な街と定義している。三次元的な街は天然の良港であることが多く、私が行ったことがある所で言えば、長崎や佐世保、横須賀や北九州の戸畑、坊瀬島や家島など、ぐにゃぐにゃな路地がたくさんある好きな所ばかりだ。ちなみに私が住む六甲付近も坂だらけで好きなのだが、どちらかというと平らな地面を傾けたような感じなので2.5次元の街と呼んでいる。主観なので定義がガバガバである。
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ジブリ映画に出てきそうな感じの光景。我々日本人は、レトロでカラフルかつやや丸みを帯びた物体にジブリを感じるようにDNAレベルで刷り込まれている。
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さっきすれ違った住人とまたすれ違いそうになり、慌てて別の路地に逃げ込む。この行為自体も怪しさの極みなんだが、先制挨拶により最初の邂逅では観光客かな、くらいの認識で済んでいる所にもう一度裏路地でばったりしてしまうともうどうしようもなく怪しい。まあ話しかけられれば誤解を解くように努めるし地元の人と話すのも楽しいのだが、どんな相手にもうまく説明して場をとりなし、すぐ仲良くなれるほどのつよつよコミュ力は残念ながら無いので、路地では三十六計逃げるに如かずである。地元の人とはもっと観光客っぽい場所で出会うのがお互いにとって吉。閑話休題。
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小一時間ほど路地をうろうろして、ようやく自転車を止めたところまで戻ってきた。バッグをハンドルに取り付けて走り出す。自転車涼しい〜
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自転車でしばらく走ると見晴らしのいい場所があった。雑賀崎は万葉集に歌われているほど古くから有名な景勝地らしい。歌いたくなるのも分かる、日本人みんな路地大好きだもんね(そこじゃない)。ちなみに隣の田ノ浦や少し南西の片男波海岸、紀州東照宮のあたりなどを含んでこのあたり一帯の景勝地のことを和歌の浦といい、和歌山の語源らしい。今度はもっとゆっくり来てご飯も食べたい。
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雑賀崎を後にして、となりの集落、田ノ浦にも立ち寄る。こっちも良い路地が溢れていたが、このままだと路地の写真だけで記事が埋まってしまうのでカッツ・アイ。ちなみにこの路地では住民の引越なのか、赤帽のスタッフが荷物を担いで狭くて急な階段を上り下りしていた。スタッフの一人とすれ違ったので挨拶したが、死にそうな目をしてぜいぜいと息をきらしており、挨拶を返す元気も無いようだった。気を強く持って…
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雑賀崎と同じく海に面してはいるが、こちらはなだらかなお椀型に屋根が密集している。ここも良い町だなあ。
(引越屋にとっては絶望の町だろうが)
和歌山迷走
さて、そろそろ和歌山市街に戻る。自転車で坂を駆け下りて和歌の浦町の商店街を抜けていく。
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こんな本屋があった。現役なのがすごい。商店街はあまりスピードが出せないが走っていて楽しい。
路地の登り降りでかなり汗をかいてしまったので銭湯に行くことにした。自転車旅では銭湯は重要な回復ポイントになる。
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外観の写真は撮るの忘れた
11時開店と書いてあったので一番風呂かなと思ったら先客のおじいさんたちが何人もいて賑わっていた。良いお湯だったが、たった一つ。中に貼ってあったクイズが分からな過ぎてのぼせかけた。
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答えは不明。分かったら教えて。
風呂から出て昼飯が食べれるところを探す。ラーメンかなあ、海鮮かなあ、この店混んでるなあ、などとグダグダ悩みながら適当に市街を走り回っていたら12時半になってしまった。外食については本当に優柔不断だと思う。
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最終的に入ろうとしたラーメン屋が混んでいて、そのすぐ近くにあったランチ営業中の居酒屋に落ち着いた。唐揚げと焼き魚の定食って、最高じゃあないっすか。全部かはわからないが地元の食材らしい。うまかった。
店を出たらもう13時だったので港へ急ぐ。出港は13:40だが、自転車をバラして袋に積める時間を考えると結構ギリギリだ。当初は時間あったら紀三井寺や和歌山城、わかやま電鐵などを見に行くかなあ、などと考えていたが、雑賀崎が良すぎて案外時間が無かった。まあまた来ればいいや。
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和歌山港駅のそばのスペースで自転車を袋詰めして、乗船口までの長い歩道橋を渡る。結構距離があって輪行袋を担いで行くのが億劫だなぁ、と思っていたらなんと動く歩道があったので思わず、ありがてぇ!と叫んだ。もう地球表面は全部これでいい。ちなみにフェリーに自転車をそのまま積んでもらうと航送料金が別にかかってしまうが、袋に入れれば無料である。
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徳島までは約二時間かかる。最初は離れ行く本州を名残惜しくデッキで眺めていたが、眠くなったので船内の雑魚寝スペースで寝た。船は結構古そうだったが、快適だった。横になって移動できる乗り物はすべて快適という雑な認識。
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あっけなく着いてしまった。実は徳島市内に宿を取っていたものの、どこに行くか、何をするかなどはまったく決めておらず、乗船時間が二時間もあるからそこで何となく決められるだろうと思っていた。しかし、二時間丸々寝てしまったので無策で四国に上陸。とりあえず、自転車を組み立てる。
未知のマチ、徳島
LINEの友人グループ(限界旅行悪友グループ)で徳島のどこに行くべきか、と聞くと、「眉山、ラーメン屋、吉野川橋、池谷のレンコン畑、リサイクルで有名な上勝町、オーシャン東九フェリーで東京」など貴重かつ微妙なご意見を賜った。最後の一つは論外として、池谷と上勝は遠いので却下、紹介されたラーメン屋は定休日、眉山は言われなくても知っている。まあたぶん全員適当に言ってるんだろうが、他に行く当てもないのでとりあえず残った吉野川橋に行ってみることにした。
吉野川沿いを走る。めちゃくちゃ広い川だ、さすが中央構造線。神戸にはこういうでかい川が無いのだけが残念な所である。坂の多い良港と大河川は地形の成り立ち的にほとんど両立しないのだ。
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これは新吉野川橋という橋らしい。なんかどことなく中国の橋っぽい感じがするが、日本一の大断層の上にある橋なんだからさぞかし丈夫に違いない。
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吉野川橋。水色のトラス橋が遠く向こう岸まで連続していて綺麗である。下では子供が野球をしていた。河川敷という文化が無い土地で暮らしてきたので妙な新鮮味がある。さて、橋は綺麗なんだがあくまで橋なのでずっと眺めているものでもない。LINEグループの紹介だとこれで徳島市の観光地は眉山以外尽きたんですが、どうすればいいですかね。
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何か調和を生み出したかったが生み出せなかった
辺境県庁所在地の儚い行政を実感できる
とりあえず徳島市街を自転車でうろうろ。自転車旅というのは歩くよりも疲れないし早いので、走り回るだけでわりと広範囲の町の雰囲気を味わえるので楽しい。徳島の街は思ったより都会でビルや店も多い。私はいつも訪れた都市と出身地の滋賀県大津市とで都会度を比べる(基準は私の肌感覚)のだが、割といい勝負、やや大津が劣勢と言ったところだろうか。ちなみに今のところ大津が勝てた県庁所在地は一つもない。
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(ストリートビューから取材)
走っていて気付いたが、徳島の市街地はかなり自転車に優しい。自転車の専用レーンや専用信号が整備されていて走りやすいし、平坦なのでスイスイ走れる。
ホテルにチェックインした。旅行支援のクーポンを2000円分もらったので早速使える店を探す。私としては、眉山のロープウェイや阿波踊り会館などの観光地、徳島ラーメンの店などで使えることを想定していたが、なんとまったく使えない。ラーメン屋の一軒くらいあるだろ、と思って調べたが本当に一軒も無かった。それでいいのか徳島県。
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というわけで、クーポンが使えるうどん屋に来ました。豪華に肉うどんと天ぷらをキメる。うめえなあ~、お隣の某県の名物うめえなあ〜
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朝早くから動き回って疲れたので眉山は行かないことにした。おい、唯一の観光地なんだろ、それでいいのかよ、という非難が聞こえるが、私には、また来る時のために残している観光地が結構ある。また誰かと来たら行こう、というふうに初回の楽しみを取ってあるのだ。長崎の稲佐山や札幌の藻岩山、六甲山なんかもそうだ。山頂ってほら、ロープウェイとかお金かかるし、デートスポットですし、陰キャひとりだと目立つというか、ゴニョゴニョ…
ホテルに戻る途中、川沿いを通った。クリスマスから最も遠い季節にもかかわらずイルミネーションが輝いており、滋賀と徳島の都会度勝負は決したかに思えた。しかし、
へえ、徳島も中心部はけっこう都会なんや、綺麗やん....と思わせておいてめちゃめちゃカエル鳴いてるので気分はもう畦道。 pic.twitter.com/cI6op77e8g
— やまりく🚶 (@R_yamariku) May 16, 2023
めちゃくちゃカエルが鳴いている。酔っ払いがたむろする華やかな繁華街の裏で里山ばりにカエル鳴いとるやないかい。
さすがに大津でもこんな中心部でカエルの大合唱聞いたことない。引き分け!滋賀県との田舎度勝負は引き分け!都会の皮を被った田舎、徳島での一幕。ちなみに私が興奮気味にツイートしたこのカエルの合唱、2いいねでした。徳島に興味が無いのか、カエルに興味が無いのか、私に興味が無いのか(最後の一つが濃厚)
ホテルに戻った。疲れた。風呂に入り、アイスを食らい、阪神の勝利を見届けて、寝た。以上楽しい一日目でした。
ちなみに二日目はほとんどセルフ拷問である。
読んでね。