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じゃあ実際「死」にどれだけ抗えるか【KILLAH KUTS感想他】

 最近また事故で死にかけた時のことをよく思い返している。

 あれが自分の中のターニングポイントだったと思っているから時たま考えることがあるし、最近の考えるきっかけのひとつになったのが藤井健太郎演出の『KILLAH KUTS』だ。

 地上波で出来ない配信番組という企画だったが、直後に『EP:2 麻酔ダイイングメッセージ』が日本麻酔科学会から批判を受けて一時配信停止&一部削除修正が入る。
 その後、最近になって藤井健太郎が個人アカウントでディレクターズカットを上げる。

 そらコンプラ的に叱られるよなあとは思う内容ではある。胃カメラ検査のついでという名目でやっているが、細心の注意・配慮をしてはいるが、意図して麻酔に抗おうとしてしまう出演者が不適切に思われるのもわかる。
 有料配信版で削除されたシーンでラランド・ニシダが入眠が浅くて覚醒しかかってしまう。そのシーンでニシダが「東京ホテイソンは... 東京ホテイソンじゃねえわ (それ以外の)誰か大麻やってるみたいな話も聞いたよ」昏睡ゴシップを言い出す。その様子を見たサーヤがふざけて「東京ホテイソン大麻やってる」と真似した結果、東京ホテイソンに大麻疑惑かかるのは現代の情報拡散の適当さを物語っている。

 で、相変わらず良くも悪くも色々話題になっている藤井健太郎演出だが、正直なところ、自分はこの企画をかなり肯定的に興味深く観てしまっている。
『水曜日のダウンタウン』でも企画によって物凄く刺さるか、全く食指が動かないか、不快感を示してしまうかで差が激しいが、これは特大場外ホームラン。

 フィクションなんかで当たり前のように使われる麻酔・麻酔銃。『名探偵コナン』では事件の度に毛利小五郎を都合よく眠らせ、『グラップラー刃牙』では地上最強の範馬勇次郎を鎮圧させる。その他マンガ・アニメで暴れる奴、逃げる奴がいればお約束的にコメディリリーフで眠らせるのに、現実じゃその効果がどの程度なものかわからない。少なくとも害獣駆除用で用いるなら数分は粘らないと効果がないらしい。

 麻酔に本気で抗うのはどんなものなのか。加えてそれをダイイングメッセージを書かせて疑似的な死として扱う。麻酔=疑似的な死に直面して本気で抗おうとしたら人間はどうなるのか、何か人間の本質的なことが見えてくるような気がしないでもない。少なくとも2年前に事故で死にかけた経験がある自分としては結構大真面目に捉えてしまっている。

 殺されたていで犯人の情報を残そうとした結果としては
モグライダー・ともしげ→「麻雀やっているから眠気に強い」と言いながら呂律がまわらなくなりそのまま入眠。
ラランド・ニシダ→粘るが無意味・無関係なことしか言わなくなり状況確認も出来なくなる。入眠が浅く覚醒しかかって昏睡ゴシップや企画としてダイイングメッセージを残せていないことを悔やむことを言う。
みなみかわ→粘るが同じことを繰り返し叫ぶ。犯人を「小太り」と認識したにも関わらず「中肉中背」と連呼する。

 で、この結果、人によるだろと言えばそれまでだが、自分の中ではかなりリアルなんじゃないかと思ってしまっている。

 2年前の夏、原付でトラックと衝突して道路で7m吹っ飛んだ後、救急で運び込まれた自分は担架の上で何をしていたかと言うと
・ひたすら手術を拒んで服を脱がそうとする医者の手を振り払う。
・駆けつけて横で泣きじゃくる母親に対して罵倒する。
・その場にいない先輩に対して謝罪して遺言のように残そうとする。
・スマホのLINEで予定していた打ち合せに対して「事故ったのでリスケ」と重大さを省いて最低限連絡する。
・鞄に入っていたカメラとiPadの動作確認をした後、残っていたら遺族に申し訳立たない不都合なデータを消去する。
・スマホとテザリングして朝まで描いていて置いていた↓のイラストを投稿する。

 自分の中で統括すると、人間が本気で突発的な死に直面したら
・強がる。
・本音を言う。
・自分の死後の事を考える。
・でもそれらの言動が色々と不合理。

に集約されるのではないかと思う。

 麻酔ダイイングメッセージ、不適切だとばっさり切られたり、アナーキーな笑いで終わるだけじゃあまりにも惜しい企画なんじゃないかと。


おまけ① KILLAH KUTS感想

EP:1 スポーツスタンガン

 目玉企画的立ち位置なのもあって、スタンガンという要素が無茶苦茶だが、シンプルに面白かった。スタンガンの性質上2本の電極を同時に当てないといけないので垂直に入れないと有効打にならない、恐怖を煽る手段が強い等、真面目に競技として捉えてやってみないとわからないこともあって、別に第2回はやらなくていいにしても、新しいゲームやルールを作る過程を見ている感じで競技としても企画としても興味深い。

EP:3 右翼左翼レース

 面白くない。政治的な右左の話題はテレビメディアや日常で避けられるとは言っても、気にしない人と気にする人の温度差がある、大抵の人は聞かれればとりあえずは「どちらかと言えば右(左)」と答えられる、一部のネット・SNSでは日常茶飯事で当たり前に話題にされている等、テレビで出来ないけど大して面白くもならない。「右(左)です」と答えてウエストランド・井口やきしたかの・高野が「ヨシ!」or「あぁ~」と反射的にリアクションを取ってしまうのが悪趣味な笑いになっているだけだし、殆どコイントスで結果を決めるのと変わらないのでゲーム性も感じられない。

EP:4 童貞人狼

 そもそも人狼ゲームがテレビショウ的なものでやるのには演出・演者の手腕が要ると思う。

 そこにくると恋愛経験がない童貞×知名度のない売れない芸人というのは知略ゲームをする人材として話術やロールプレイ能力や勘が不足している。回答者は第三者(MC:さらば青春の光)、村人(童貞)全員が人狼(非童貞)を主張する逆の構図でゲームとして微妙。それに右翼左翼と同じで、気にしない人と気にする人の温度差、大抵の人は聞かれれば答えられる、ネット(他、深夜ラジオ等)では当たり前に話題にされている等、配信だからって特段強い企画性でもないし、笑いとしては想像で非童貞語りをする童貞イジリネタであまり新しいものではない。

自分の中でのランク付けとしては
麻酔ダイイングメッセージ>>>スポーツスタンガン>>>>>>>>>>童貞人狼>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>右翼左翼レース


おまけ② 死ぬ前にやりたかったことをするため神戸観光

 事故で入院していた時に病床でぼんやりと人生で何をやり残したか色々考えていた筈だったんだけど、正直なところあんまり思い出せない。それだけ痛みやら絶食の空腹やら退院後のことやらでいっぱいいっぱいだった。そこまでどうしてもやりたいことって自分の中でそんなにないのもある。それで唯一思い出せるのが「ラクダに乗る」なのだ。冗談抜きに。
 やれることとしてかなりハードルが低めなので実行する。ラクダに乗れる動物園に行く。横浜のズーラシアでヒトコブラクダに乗れたが、自分の退院後半年でなくなってしまっていた。他に比較的近場になると神戸どうぶつ王国でフタコブラクダに乗れるので神戸に行く。写真多数。
 静岡から夜行バスで片道約10時間。

静岡じゃ雨ですぐに散ったキンモクセイ

 10年前までは神戸花鳥園で掛川花鳥園の系列で運営されていたが、那須どうぶつ王国の系列に運営が移った。内装とか完全に掛川花鳥園だ。

 人参与えて袖をしゃぶられる。

 足を運んだ相変わらずの別の理由。

ハシビロコウ
ミナミコアリクイ
ウスイロホソオクモネズミ
アメリカバク
コビトカバ
スナドリネコ
オーストラリアガマグチヨタカ
フタユビナマケモノ
フタユビナマケモノ(アクティブ)
フタユビナマケモノ(非アクティブ)
ケープハイラックス
ビントロング
マヌルネコ
レッサーパンダ
レッサーパンダ(食事中)
サーバル(食事中)
プーズー(交尾中)
スナネコ
コツメカワウソ
アフリカクロトキ(カラフル)
バードショー
飼育されていないスズメ
飼育されていないアオサギ

 動物園や博物館に行くと2~6時間は居座ってしまうので中々観光してもハシゴができない。観光下手。

神戸大橋

 行きはポートライナーで帰りは歩き。

六甲山

 神戸に降り立って「発展した地方都市、港町なのに山が不気味なほど近過ぎる」と思った。『ダンダダン』でおなじみのターボババア(ターボばあちゃん)の発祥の地らしいが、文明のすぐそこに自然の未知の領域があるみたいで地理的な要因で近代妖怪が生まれたんじゃないかなあと印象を受ける。

 安直に神戸牛を食べる。テイクアウトのステーキ丼(¥1,900)。値段相応の味だけどもそもそも食に関心がないので感動薄め。南京町の中華街でハイボール路上飲みしながらかっこむ。

 三宮センター街。ストリートミュージアムと称してタイルに美術作品が20個ほど展示されている。アートを身近に的なコンセプトだろうけど、踏まれたり無視されるのはなんかシニカルである。

 ほろ酔いでまた長距離の夜行バスで帰る。USJ帰りの客多数で色んな人間の匂いがする。よくみんな休憩のサービスエリアで体操しなくて狭い中やっていけるもんだ。

 次の日疲れで支障が出る。つくづく観光することが下手だと思う。

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