トリプルスリーはなにがすごいのか、というはなし
昨年"トリプルスリー"が流行語大賞に選ばれ、「トリプルスリーってなに!?」「なんでそれが流行語に!?」と話題になりましたが、トリプルスリーって、ほんとにめちゃくちゃすごいことなんです!!!!!
ということで"トリプルスリー"のなにがすごいのか!?を勝手に解説したいと思います。
トリプルスリー達成者はこれまでたった8人だった
2015シーズンにトリプルスリーを達成した山田哲人は同時にホームラン王と盗塁王、柳田悠岐は首位打者のタイトルを獲得しました。
つまり、トリプルスリーの条件である打率3割、ホームラン30本、盗塁30個というのはそれぞれ1位の結果を残すレベルの数字ということ。
ちなみに打率と長打率を両立させるのは難しく、高打率なアベレージヒッターはまず塁にでることが仕事になるので大振りせずシングルヒットで稼ぐのがセオリー。
対してクリーンナップと呼ばれる3、4、5番のホームランバッターは.250で30本というのがひとつの目安。
トリプルスリーはまずこの両立不可能な数字を両立させていることに凄さがあります。
さらに「盗塁30個」で足が要求されるのもポイント。ホームランバッター型の選手はかなり体が大きいことが多く、あまり走ることが得意でない選手が多い中で盗塁王をとるレベルである30個の盗塁を達成するのは並大抵のことではありません。
これは無理矢理例えるなら、センター試験全教科満点をとるという感じでしょうか。
全教科満遍なく好成績を残し、且つ"1番" "主席"という毎年必ず1人は存在するタイトルではなく、"満点"をとる。それくらいにすごいのがトリプルスリーという成績です。
事実、2014シーズンまでにトリプルスリーを達成したのはプロ野球の長い歴史の中でもたった8人でした。
ちなみに最後にトリプルスリーを達成したのは2002年の松井稼頭夫。
「投高打低」とも言われるほど投手優勢な時代の中で、実に13年ものあいだ達成者がいなかった偉業なのです。
トリプルスリーがでるだけでもものすごいことなのに、2015シーズンは2人ものトリプルスリーがセ・パ両リーグからでたことで野球界は大騒ぎだったのです。
セ・パ両リーグに君臨する2人の天才バッター
打撃は投げる側と打つ側両方あってのものですから、投手の好不調や公式球の飛びやすさといった要因も打撃成績に大きく響いてきます。(もっと細かくいうとファインプレーや盗塁阻止率も関わってくるので相手の守備力からも影響を受けます)
リーグが分かれていることでセ・リーグは投手優勢、パ・リーグは打者優勢という状況もありえますし、そもそもDH(指名打者)制などルール自体が違う部分もあるので「3割30本30盗塁」の難易度もリーグによって、さらにその年によって大きく変わります。
のはずが、同じ年にそれぞれのリーグからトリプルスリーが生まれた2015年。
2人の天才バッターが同じ時代に、それぞれのリーグに舞い降りたのが昨シーズンだったのです。
セ・リーグのトリプルスリーはヤクルトスワローズの山田哲人。
▲セのトリプルスリー・山田哲人(写真:Number Web)
履正社高校出身で甲子園にも出場した山田は当時注目も浴びていたものの、野球選手としては細すぎるという理由から入団当初はあまり期待されていませんでした。
しかし有名な「チーズバーガー増量法(ひたすら好物のチーズバーガーを食べまくる)」によって体重を増し、持ち前の野球センスを生かして徐々に頭角を表していきました。
2014年には一軍スタメンに定着し、打率.324、本塁打29本とブレイク。
「2014がキャリアハイか」と囁かれながらも、2015年にはその下馬評を覆す大活躍で"ヤクルトのエース・山田哲人"の地位を不動なものにしました。
2014年には先頭打者ホームランの多さも話題になり、阪神戦で先頭打者初球ホームランを放ったことも大きなニュースになりました。
先頭打者というのは他の打者に投げるピッチャーの球を見ることができないため癖や調子がわからず、不利なことが多い中で初球からきっちり打っていくバッターというのは恐ろしいものです。
またオフシーズンのテレビ出演やインタビューでのお金・女好きなキャラもよくネタにされますが、これまで浮いた話がでてこないことや真摯に練習に打ち込む姿が度々取り上げられることで表で見せるキャラクターとのギャップもファンの心を掴んでいるポイントと言えるでしょう。
2016シーズンはトリプルフォー(4割40本40盗塁)や三冠王といったさらなる高い目標を掲げていますが、山田なら達成してしまうのではないかと思ってしまう魅力が彼にはあります。
対してパ・リーグのトリプルスリーはソフトバンクホークスの柳田悠岐。
▲パのトリプルスリー・柳田悠岐(写真・侍ジャパン公式)
甲子園にこそ出場していないものの、広島経済大学時代に.528という変態的な高打率を残し広島六大学リーグで首位打者、最優秀選手賞、ベストナインなどのタイトルを総なめ。
2010年にホークスから2位指名を受け入団。
大卒選手のため忘れられがちですが、田中将大や前田健太と同じ黄金世代・88年生まれです。
188cm・93kgという恵まれた体格から放つ打球は非常にパワフルで、2015年の横浜戦でハマスタのバックスクリーンに打球をぶち当ててしまい「誰が弁償するんだろう…?」状態になったことも話題になりました。
豪快なスイングでいかにもホームランバッター!という見た目にも関わらずパ・リーグトップとなる打率.363をマークするなどまさに打率と長打力を併せ持つ男。
ちなみにトリプルスリー達成者の中で首位打者も同時に獲得したのは史上初。
歴代トリプルスリー達成者の中でもトップの打率です。
2015シーズンは西武・秋山と夏頃まで首位打者争いをしており、あっちが打てばこっちも、というシーソーゲームを繰り広げては野球ファンを一喜一憂させていました。
(結果として打席数の関係で首位打者は柳田、安打数は秋山というみんなが幸せな結果に)
打者の指標のひとつに"OPS"というものがあります。
簡単にいうと打率×長打率を掛け合わせたもので、打率は高いがシングルヒットが多い選手は打率は高いものの長打率が低く、ホームランバッターはその逆というようにタイプに関係なく打者を比較する上で重宝する指標です。
だいたいの目安としてOPS .700が平均、.800を超えると一流と言われます。
そんな中で柳田のOPSは1.101。
異次元の数字と言わざるをえません。
ソフトバンクホークスはチームカラーとして力強くフルスイングする選手が多いのが特徴で、柳田もそのひとり。
しかし豪快なフォームに見えて打率の高さはもちろん選球眼もよく出塁率も高いため、それだけ盗塁のチャンスも多く足を使った攻撃も得意です。
2015年オフに結婚と長女の誕生もあり、これからますますの活躍が期待されます。
次に目指すは三冠王!
そんな天才2人に次に目指してほしいのは三冠王。
打撃における三冠王は
・首位打者
・本塁打王
・打点王
の三冠を同シーズン内に獲得することを言います。
これまでに三冠王に輝いたのは戦後ではたった8名。
王貞治、野村克也、落合博満などそうそうたるメンバーが名を連ねます。
三冠王はすべてで1番をとらなければいけない分、トリプルスリーとはまた違った難しさがあります。
昨シーズンのセ・リーグではヤクルトがこの三冠を3人の選手で総なめにしました。
首位打者・川端慎吾、本塁打王・山田哲人、打点王・畠山和洋。
2015シーズンにはそれぞれの打撃タイトル保持者がヤクルトの2番、3番、4番を担いました。
タイトル保持者が同チームというのは心強くもありやっかいでもあります。
川端の打率があがれば自分が首位打者を取れなくなってしまうけれど、塁にでてもらわなければどれだけホームランを打ったところで打点を稼ぐことができません。
逆に自分の打率が上がって出塁が増えると後続のバッターの打点に加算されやすくなります。
もちろん野球はチーム戦ですからチームメイトが強いに越したことはないのですが、個人タイトルを考えればなかなか歯がゆい話です。
対してパ・リーグには絶対的本塁打王・中村剛也(通称・おかわり君)がいます。
2015年には1000本安打と300本塁打を同時に達成し"ホームランのおかわり君"というイメージを不動のものにしました。
打点も両リーグ合わせてもぶっちぎりの124打点と圧倒的な強さで、本塁打の分野で西武中村に勝つのはなかなか至難の技のように思われます。
それぞれに難しい状況ではありますが、山田・柳田の2人ならやってくれるんじゃないか。
そんな夢を見させるのが彼らのプロ野球選手としての魅力といえるでしょう。
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