長女は全員、自分の中の「押切もえ」と戦っている
正直に言うと、私は彼女のことが苦手だった。
私の大好きな選手と交際宣言をしたときも「えー、あの子と結婚しちゃうのかあ、やだなあ」と思っていた。
今になって思えば、この「苦手」な感情は、同族嫌悪に近いものだったのかもしれない。
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私がなぜ彼女を苦手だと思ってきたのか。
その理由が、「美人百花」に載っていた彼女のインタビューを読んではじめてわかった。
彼女は、あまりに「長女的」なのである。
やるからにはすべてを完璧にしたいと思い、そして実際に完璧に仕上げてしまうことによって嫌が応にも周りからの期待を押し上げてしまい、そうやって自分をどんどん苦しめていく。
このスパイラルに陥っている人は、長女に多い。
トップモデルとして活躍しながら作家としての一面も持ち、料理をはじめとする家事も完璧にこなし、茶道や乗馬といった趣味にも精を出す。
まるで雑誌から抜け出てきたかのような「理想の女性」である。
しかし、皮肉にもその完璧さが近寄りがたさをうみ、同時期に活躍していたエビちゃんや山田優と比べるとどことなく「負け組」のような扱いをされてきたように思う。
「結婚だけが是ではない、独身でも人生は謳歌できる!」というロールモデルになろうとしているのはわかるのだけれど、どことなく無理をしている感が否めない。
それがなんだか自分の未来を直視しているようで、彼女のことを避けてきたのかもしれない。
実際に当時の彼女がどう思っていたかはわからないけれど、インタビューの中でも「結婚について考えることを避けている時期があった」と語っていた通り、やはり心からシングルライフを楽しんでいたわけではなかったのだろう。
こうした「〜しなきゃ」という思考や「自分の本音をごまかして蓋をする」という行動は、長女に多い傾向がある。
実際に彼女は弟がいる長女だし、さらに「自分は長女気質が強い」とも言っていた。
これはもちろん人によるのだけど、長子というのはどうしても両親の期待を一心に背負う分「〜しなきゃ」「〜してはダメ」と言われて育つことが多い。
よって、長女はこなさねばならないマイルールやマイタスクを膨大にもっていることが多い。
すると、大人になってからも「○○をしない私に価値はない」「○○じゃないと認めてもらえない」と頭の中が「should」や「have to」ばかりになってしまい、自分のしたいことより相手の気持ちや状況を重んじてしまうのだ。
あらゆる問題に対する長女の解決策はいたってシンプル。
それは「私が我慢すること」なのである。
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はじめは「この人たち絶対すぐ別れるでしょう」と思っていたカップルだったけれども、結婚を発表するころには心から応援できるようになっていったのはきっと、好きな選手以上に彼女自身がとても幸せそうだったからだと思う。
雑誌を見ていてもInstagramを見ていても、無理してがんばっている感じがなくなって、今本当に心から幸せなんだろうなと感じることが増えた。
それと同時に彼女に対する苦手意識が溶けるようになくなって、今では好きな芸能人のうちの一人といっても過言ではない。
インタビューの中にあった「はじめてこの人の前では無理しなくていいと思えた」という言葉は月並みではあるものの、これこそが長女にとって最大の「赦し」だと思う。
もちろんその相手は異性でなくてもいいのだろうけど、やっぱり同性同士というのはどこか弱さを見せきれない部分がある。
私たちは別に結婚がしたいわけじゃなくて、等身大の自分を受け入れてくれる相手を求めて四苦八苦しているのだろう。
長女に限らず、誰にでも心の中に「ちゃんとして!」と注意してくる「押切もえ」を飼っていて、やりたいことよりもやらねばならぬことを優先してしまいがちになる。
でも、彼女自身がその呪縛から解き放たれた今、私たちも人の期待より自分のしたいことにちゃんと耳を傾けていくべきなんじゃないだろうか。
自分に厳しいのは長女気質の美徳のひとつではあるけれど、たまには自分も周りも甘やかしていこう。
今の私なら、自分の中の「押切もえ」とうまく付き合っていけるかもしれない。
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(Photo by tomoko morishige)
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