今週読んだ海外記事と雑感(2020.3.28)
今週もNewsPicksでピックしたニュースとコメントを転記してまとめておきます。
文末の有料パートは海外記事の解説です。
今回は、先週更新できなかった分も含んでいるのでいつもより量多め。
▼私のNewsPicksアカウント
新ブランドローンチの是非
今の時期に新しいブランドをローンチすることの是非をそれぞれのメリット/デメリットや分野ごとの考え方、SNSでの発信の仕方などを踏まえて論じた記事。ローンチを延期したブランドもあれば、あえてこの時期でも予定通りローンチしたブランドもあり、前者は「顧客の購買意欲が低下している時期に発売しても意味がない」、後者は「日常に戻ったときに他社はセールや販促施策を行うはずなので先手を打つべき」という考え方で、どちらにも一理あるため何が正解かはわからない状況。
アメリカではすでにD2Cバブルが終焉に向かっており、今後資金調達が難しくなる可能性が高いため、手元に在庫があるならばなるべく販売に踏み切った方がいいという事情もありそうです。
ただ、ローンチするならば今の状況下だからこそ使ってほしいという見せ方だったり、必要な施設に無料配布するなど、通常とは異なるアプローチが必要になるという話は納得。
また商品としてはローンチせずとも、オンライン接客やライブ配信での商品紹介など、今だからこそできる施策をどれだけこの時期に実験できるかも重要になっていきそうです。
インスタにおけるShoppable投稿の最適バランスは?
世界的に外出が規制されている今、どのブランドもこぞってSNSに力をいれはじめています。特にInstagramでは、ECに飛びやすくするShoppable機能を使った投稿が増えているもよう。また、ストーリーズやライブ配信を活用して顧客の質問に答えたり、投票によって意見を聞いたりとコミュニケーションに注力しているブランドも。
今はどうしてもアパレルやコスメなど必需品以外のものを買うムードではありませんが、コミュニケーション欲求まで失われているわけではありません。今回は自然災害とは違って家の中であれば安全が確保されており、人々も健康で時間と気持ちを持て余しているので、こういうときこそ顧客とのコミュニケーションや楽しめるコンテンツを作ることによって関係を構築していくことが重要なのではないかと思います。
コロナがもたらす小売業界の新たな幕開け
アフターコロナ時代に小売が影響を受けるポイントについてまとめられた記事の中で、個人的には「体験経済へのブレーキ」が大きなトピックになりそうな気がしています。1年近くコロナ関連の混乱が続くことが予想される中で、不特定多数の人が触ったものを触ることや換気が十分でない場所に足を運ぶことへの懸念は長く尾を引くはず。日常が戻ってきてからも、今回のようなリスクを織り込んで店舗やイベントのつくりもオンラインへの移行が可能なことを全体に作られることになるのかなと。
「体験」自体はこれからも重要なキーワードであり続けるはずですが、コロナの感染拡大によって単にリアルの場があれば体験は作れる、というフェーズから、オンラインも織り交ぜて総合的な体験を作らなければならないというフェーズに移りつつあることを感じます。
コロナはラグジュアリー市場にどんな影響を与えるか?
https://www.voguebusiness.com/companies/vogue-business-webinar-coronavirus-impact-luxury
コロナの感染拡大がラグジュアリー市場に与える影響と今後の対策について解説したウェビナーの書き起こし記事。市場全体が大幅に業績悪化しているのは言わずもがなですが、復調傾向にある中国では消費の揺り戻しが起こり、洋服と靴がもっとも売れるカテゴリーになっているという話が興味深い。贅沢品を扱う企業にとっては厳しい状況ですが、ある程度落ち着けば消費を控えていた反動が起こる可能性も高いため、在庫の確保など売るための準備を整えておいた方がよさそうです。
コンテンツスタジオとしての「インフルエンサーハウス」の潮流
TikTokerやInstagramerに特化したペントハウス型スタジオが広がりを見せているよう。人気TikTokerが共同生活をはじめたHype Houseのようなかたちもありますが、一方でスタジオを運営している企業がインフルエンサーの撮影に特化した空間を作っている動きも面白い。インフルエンサーは無料で利用でき、企業の利用は有料。また、インテリア系のD2Cブランドが商品を提供するなど、ある意味広告枠として空間を使っているもよう。
私は常々、店舗空間も一部はこうしたインフルエンサー向けの撮影スペースにしてもよいのでは?と思ってきたのですが、「インフルエンサーがいかにいい写真を撮れるか」はこれからの空間づくりのポイントになっていく気がします。
サブスク解約率低下のための4つの方法
サブスクは解約率と顧客1人あたりのLTVが重視されるビジネスですが、「チャーンレートの平均は5%」「顧客の1/3は3ヶ月以内に解約」「半数は半年以内に解約」というModernRetail独自の調査結果は肌感としても納得。解約率を抑えるための方法としては
・すぐに提供できる価値をつくる
・他サービスと連携する
・コスパのいい長期契約プランを提示する
・休眠やプラン降格を容易にする
の4つが提示されています。
ただ、モデルケースとして取り上げられているのがSpotifyやAppleなどの無形サービスが多いため、モノのサブスクだとまた別のアプローチが必要なのかも、と思うところではあります。
4人のサッカー選手がブランドを立ち上げた理由
女子サッカー選手4人がアスレジャーブランドをローンチ。アスリートは日頃からスポーツブランドのアイテムを身につける機会が多いものの、ほとんどが「男性によって」「男性向けに」作られたもののため、自分たちにあうものを作りたかった、というストーリーはまさに現代的なブランドのあり方。
カニエ・ウエストやレディ・ガガといったミュージシャンが自分のブランドを立ち上げるケースも増えてきていますが、ここ数年のアスレジャー人気を見ているとアスリートのブランド立ち上げも可能性がありそうだなと思います。
また、選手単独ではなく4人で立ち上げたという座組みも新しい。選手のファンがグッズとして買うのではなく、4人がアイコンとして立った上でブランドにファンをつけていく思考なのかなと思います。
コロナがレンタル/リセール市場に与える影響は?
これまで順調に成長してきたレンタル/リセール市場ですが、コロナの影響で岐路に立たされそう。特にレンタルはイベントの相次ぐ中止によって利用キャンセルが増えたことに加え、外出禁止の影響でレンタル品を返却できずにいる顧客への対応に迫られているようです。もし返却できたとしてもしばらくは外出ができないため、顧客満足を考えると一時休眠などの措置が必要なのかもしれません。
またレンタルは返却時にクリーニングをはさみますが、リセールはどこまで除菌対応をしているかが不明なために購入を控えるという動きもありそう。特にCtoCにとっては大きな正念場になりそうです。
一方で、家から出られないストレスやこれから夏に向けて買い物をしたい欲求は高まっているはずなので、サイト上で新しいアイテムを「見る」「探す」楽しみを提供することが、現時点で企業にできることなのかなという気もしています。
The Wing成長の光と影
かなり長いですが、The Wingの歩みを考察しながらフェミニズムと資本主義が結びつくことの危険性について考察したさすがNYTとも言える記事。特に、もともと女性に向けたシェアオフィスを提供するという信念が、徐々にインフルエンサービジネス化していくことへの警報は、今後コミュニティを軸にした場作りをする企業が反面教師にすべき点かもしれません。
SNSでも排他性を高めると思想が先鋭化するという問題がありますが、トップ自身が健全な視点を保つためにもこうしたコミュニティを軸にしたビジネスほど、エクスクルーシブにしすぎないバランス感が必要なのかなとも思います。
とはいえ、記事にもあるとおりセクハラなどが根強く残る起業家の世界でエグゼクティブ女性のシェルターとして機能してきたことは事実ですし、理念に立ち返れば再度いいコミュニティになっていくはずだとも思います。
私の英語力では読み取りきれない部分もありましたが、こういう複数の視点から問題を読み解くような記事がもっと増えるといいなと思います。
アルコールデリバリー需要が拡大
人々が家で過ごす時間が長くなったことで、お酒のデリバリー需要が伸びているとのこと。アルコールのオンライン注文は昨年対比61%で伸びており、現在の自宅待機の風潮によってさらに成長が見込まれるとのこと。アルコール市場全体の伸びが5%の中で61%の伸びは大きいですね。
とはいえ、富裕層を中心にウェルネスの流れからくるアルコール離れもあるので、「アルコール」というよりは人が集まる場でコミュニケーションを円滑にするアイテムとしてのドリンクが求められているのかなという気もします。
ポップアップの開催も次々と延期へ
D2Cの盛り上がりと共に年々増加していたポップアップストアですが、アメリカでは次々と夏以降の開催へ延期となっている様子。この2、3年でポップアップも長期化し、数ヶ月のためにしっかり作り込むものも増えていたとはいえ、延期による損失20万ドルは恐ろしい…!ポップアップのディレクション企業はARをやQRコードを活用した新たなポップアップのかたちも模索しているようですが、なかなか損失を埋めるまでにはいかなそう…!
むしろ事前接客から来店までのMAツール開発に期待したいなと個人的には思ったりしています。
Mailchimpがビジネス誌を買収した理由
メルマガ配信ツールのMailchimpがビジネス誌Courierを買収。Courierはこれまでオンラインでの配信をしておらず、紙の雑誌を中心に発行してきたメディアなのでMailchimpの買収によってオンラインコンテンツが充実してくるのではないかとみられています。Awayやユニクロなどブランドが雑誌をつくる流れが生まれていますが、ビジネスツール、しかもBtoB寄りのサービスがパブリッシャーとしてコンテンツを作ろうとする流れは面白い。
記事内の考察によれば、メディアをもつことがコミュニティの醸成につながるという狙いがあるようです。Courierの年間売上は1億円程度とみられているので、Mailchimpもこの事業を伸ばしたいというよりは本業へのブランディング的な貢献を期待しているのかなと。
VCよりも中長期的な視点から成長を目指せるという意味で、インディペンデント系メディアがこうしたメガベンチャーによる買収で資金調達するのはお互いWin-Winの新しい組み方なのかもしれません。
コロナがブランドにもたらす「長期視点」での変化
コロナの影響で中国での生産が難しくなったブランドたちが、原材料の調達先や委託先の工場を中国以外の場所に分散させる決断を迫られているという話。これまでは価格の安さと取引のしやすさから、中国一極集中が危険だとわかっていてもなかなか着手できなかったものの、強制的に他の国での生産や調達を考えざるをえない状況になったことで、長期的にみればここで決断しておいてよかったと言える日がくれば…!という話は納得。
それにしても、小売に関していうと店舗や飲食店の話題が取り沙汰されがちですが、製造分野も相当ストップしているはずなので、2、3ヶ月したら大きな影響が出てきそう。
ものづくりの最適値や本当の意味でのサスティナビリティについて強制的に考えさせられることになりそうです。
タッチ&トライを禁止された今、コスメブランドにできること
コロナの影響でコスメカウンターのタッチ&トライに新しい方法が求められているという話。特に人の顔にふれたり衛生用品をシェアすることがNGとされているため、テスター自体を撤去するブランドもでてきたようです。一方で、記事の最後でふれられている、アンケートに答えていくと最適なアイテムを提案してくれるオンライン接客といった直接会わずにおすすめする方法も各社模索し始めており、これを機にオンライン化が進みそうな予感。
特にデパコスは単価が高い上に一度ブランドを決めたら拘束時間が長くなってしまうため、複数ブランドを扱う百貨店などの商業施設がこうしたサービスを提供し、来店前にある程度目星をつけた上で売り場で相談して購入する、という流れは理想的。こうした来店前のオンライン接客はコロナの影響がなくとも推進されるべき取り組みだったと思うので、これを機に導入スピードがあがることを期待しています。
自宅待機の増加によってオンラインフィットネスサービスの需要が急増
コロナウィルスの影響で、オンラインフィットネスサービスの登録数・エンゲージメント率がともにあがっているとのこと。オンラインフィットネスは日本だとまだそこまで盛り上がっている感じがしないのは、純粋に日本の家が狭くてフィットネスができるような仕様ではないからなのだろうか…!でも任天堂のリングフィットはわりと好調のようなので、「フィットネス」と正面からいくよりゲームの延長線上の方が日本にはフィットするのかも。フィットネスにかぎらず、今後しばらく自宅で楽しめるもの、その上で人とつながれるものの需要が伸びていきそうです。
アフターコロナ時代をどう生きるか
先週から、海外メディアはすべてコロナの話題に。
日本でも今週水曜日の都知事の会見を機に局面が大きく変わりました。
会見を見ていて一番印象的だったのは、コロナの危険性について説明されていた箇所でした。
数時間で人工呼吸器からICUへ、そして意識混濁…と一気に悪化することから現場にいても恐怖を感じるという説明は、これまでどこか他人事だった意識を大きく変えるきっかけになりました。
健康と経済は本来天秤にかけるべきものではなく、経済が立ち行かなくなることもまた命を落とす理由になりえますが、まずは自分の身の回りの身の安全を確保すること、その上でこれからについて考えることが重要だと思います。
そしてある程度自分の状況が落ち着いたら、この先に起こることを考える上でぜひ海外メディアに触れてほしいと個人的には思っています。
というのも、今アメリカやヨーロッパで起きていることはほぼそのまま日本でも起こり得ることだから。
今回ピックアップしている「新ブランドローンチの是非」や「インスタにおけるShoppable投稿の最適バランスは?」といったテーマは、これから日本でも同じ問題に直面することになるはずです。
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