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「現状維持」への憧れ

最近、急に『老子』を読み始めた。

きっかけはスタンダードブックスの『詩と科学』の中で、湯川秀樹がこう書いていたことだった。

中国は文化が古くて、古典的古代というべき時代に生まれた思想が、すでに青年期のものではなく、また壮年期のものでさえもなく、「老成した」というべき思想だ、という感じを私は昔から持っていた。
(中略)
日本は相当古い国ではあるが、まだ青年期的な傾向が強いように思う。昔も今も、異国の事物に対する好奇心が恐ろしく強い点で、青少年的である。
現代中国はおそらく若返っているのではないかと思うが、とにかく老子のような思想家が出てきた古代中国は、すでに老年期的であったと言えるのではないか。

老子が書かれたのは2000年以上も昔のことだ。
文明も政治体制も未成熟で、現代に比べるとお世辞にも発展しているとはいえない時代だったはずだ。

しかし湯川秀樹は、現代日本よりも当時の老子の思想こそが成熟した考え方だと主張していた。

『成熟』がひとつのキーワードでもある私にとって、はるか昔にすでに成熟した社会のあり方を提言していた老子の思想は避けては通れないもののように思え、早速手に取ってみた。

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