誰もがインフルエンサーたりえる時代に
メディアが戦争を「終わらせた」事例として、語り継がれる事件がある。
ベトナム戦争をめぐる国家機密文書をニューヨーク・タイムズとワシントンポストの二紙が掲載し、戦争終結へと世論を動かした「ペンタゴン・ペーパーズ」だ。
スティーブン・スピルバーグがメガホンをとり、メリル・ストリープ主演で映画化もされた。
映画の中で、メリル・ストリープ演じるワシントンポストの社主・ケイは究極の決断を迫られる。
正義のために国家機密を新聞に掲載すれば、承認されたばかりの上場は取り消される可能性がある。
それどころか、自分も含め関係者全員が国家反逆罪として有罪判決を受ければ、会社はもう終わりだ。
自分の生活だけではなく、社員の未来やファミリービジネスとしての歴史もすべて失うことになる。
正義か、保身か。
そんな究極の問いを突きつけられたケイの決断は、その後もメディア史に語り継がれることになる。
50年近くも前の事件を、なぜスティーブン・スピルバーグは2017年に映画化しようと思ったのか。
それは、今またメディアを取り巻く環境が変わり、メディアの役割と倫理観が問われる時代になってきたからなのではないかと思う。
最大の変化は、「個人」と「メディア」の境界が溶け始めていることだ。
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