自分の感情に素直になる訓練
『素直であること』はいいことだと、いたるところで言われている。
私も素直さはとても大切で、してほしいことや逆にしてほしくないことは、素直に言わないと伝わらないまま負の感情がたまってドロドロに発酵していくと思う。
でも、じゃあどうすれば素直になれるか、というところまではあまり語られていない気がする。
素直になりましょうといって気合いと根性で素直になれるなら、そんな簡単なことはないのだけど、性格の癖というのはそう簡単にはなおらない。
じゃあ、素直に育たなかった人はもう一生素直さを手に入れられないのだろうか。
そんなことを考えていて、ふと思ったのは、まずポジティブな感情を素直に表現するところからはじめればいいのではないか、ということ。
素直になれというとき、大概はネガティブな感情を素直に吐き出せ、という文脈であることが多い。
でも、素直でない人は過去の経験から、悩みや苦労を素直に話すと人に迷惑をかけたり嫌がられたりするという恐怖心をもっていることが多いので、そう簡単に感情を吐き出したりできない。
つまり、『素直に助けを求める』というのは素直じゃないクラスタにとって最上級に難しいことであって、その前にいくつかステップを踏むことが大事なのではないかと思う。
その第一ステップとして、嬉しいとか楽しいとかおいしいとか、ポジティブな感情を素直に表現するというのは最適な気がしている。
ポジティブな感情には『よかったね!』という肯定の言葉が返ってくるはずだし、下手に匂わせるよりも素直に自慢してしまった方が肯定されるという体験は、素直に発言することのハードルを下げる。
特に、目の前の人に対して素直にポジティブな反応をすること。
なにか気の利いたことを言わなきゃとか、相手が喜ぶようなことをしなきゃと考えすぎず、自分が抱いた感情をそのまま体全体使って表現する訓練は、この『目の前の人に』『ポジティブに』という条件からはじめるとやりやすい。
人は、気を使われているときそれを敏感に感じとる生き物だ。
素直であればあるほどより深く仲良くなれるし、例えそれが多少ネガティブなことだったとしても、素直な発言は実は相手に安心感を与える。
そして何より、感情に蓋をしすぎるとだんだん自分のことまで騙すようになっていく。
以前、NewsPicksの生放送番組Live Picksで産業医の大室先生と話していたときに言われたことが今も印象に残っている。
「『でも、あの人のいうことは正しいから…』と無理に自分を納得させる人は、高確率でメンタル不調になる。相手のいうことが正しいからと感情に蓋をせず、ムカついたならムカついた、でいいんですよ」
もちろんこのネット時代を生きる私たちは、迂闊にムカついたとは言えない環境ではあるのだけど、少なくとも自分だけは自分の素直な感情を守ってあげなければならない、と私は思う。
そのためにもまずは楽しいとか嬉しいとか、幸せな感情を素直に出して周りを幸せにすること。
自分が素直であることが、回り回ってみんなのことも幸せにすると腹落ちして理解することが、より幸せな日々を生きるために必要なことなのではないかと思う。