”家族”って何なの? 『万引き家族』
第71回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞、現在日本を代表する映画作家である是枝裕和が監督・原案・脚本・編集と渾身の力を込めた作品です。舞台は東京の下町、リリー・フランキー扮する”夫”と今をときめく安藤サクラ扮する”妻”、晩年は名バイプレイヤーだった樹木希林扮する”夫の母親”、残念ながら最近長く付き合っていたジャニタレと結婚してしまった”妻の妹”松岡茉優、子供なのに撮影当時からの男前ぶりが凄い”夫婦の息子”城桧吏という一見どこにでもありそうな家族の物語です。しかし夫と息子の連携した万引きシーンから始まるというショッキングな出だしが今作の”家族”の異常さを引き出されています。夫婦は現場作業とクリーニング店という危うい雇用環境ながらきちんと働いているし母親の年金もある。決して贅沢な生活をしている家族ではない。そしてネグレクトに遭っていた少女を可哀想と思い保護してしまうような優しい人たちなのです。しかし彼女を保護したことが発端となって何とかギリギリ保っていた”家族”の形態が段々と崩れていきます。工事現場での事故はよくあることだしリストラされていくのは常に社内でも弱い立場の人ですし息子も自分がしている事の善悪は年齢を重ねるごとに徐々に理解していくのは当たり前です。母が誰にも知られずに後ろ暗いことをしていることも決して褒められはしないが彼女なりの生存戦略だと思います。人間誰もが他人に言えない秘密を抱えて生きているし、少なくともあの家族の関係は非常に素晴らしいと思います。(海に行ったことのない少女の為に家族で海に入ってはしゃぎながら戯れるシーンの美しさよ!)
是枝監督は今作を 母を亡くした焦燥感、父になった戸惑い からスタートしたとインタビューで答えています。そこにプラスして現在日本で暮らす市井の人々に起こりうる”ギリギリ”の姿を観客に問いかけたかったのではないでしょうか!今作の翌年にはポン・ジュノ監督の「パラサイト 半地下の家族」がパルムドールや本家アカデミー賞で作品賞を受賞し同時に出品されたケン・ローチ監督の「家族を想うとき」もカンヌで高評価を得ました(恥ずかしながら未見)。近年やっと資本主義のメッキが剝がれてきて立場の弱い人々のことをもっと考えた”政治”を行うべきだとみんなわかってきたのではないでしょうか!そして家族とは血縁だけではなくいろいろな形があっていいんだということを各人が理解して取りこぼされて不幸に遭う人たちを少しでも減らしていく世の中にしていきたいですね。
閑話休題 しかし安藤サクラと松岡茉優はエッチだったなあ…