いろいろな言語でホビット
9月22日はホビットの日で、1937年9月21日に南アフリカ出身のイギリスの作家で言語学者のJ.R.R.トールキン博士(1892~1973年)による文学作品『ホビットの冒険』がイギリスで刊行された翌日であることと、9月22日が同作の主人公ビルボ&フロド・バギンスの誕生日であることにちなむアメリカなどにおける記念日です。
ホビットとは、J.R.R.トールキン博士の文学作品『ホビットの冒険』や『指輪物語』シリーズに登場する種族のひとつで、ニュージーランドとアメリカの合作である実写映画『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズや『ホビット』シリーズは国際的な大ヒット作となりました。
童話『白雪姫』などに登場する妖精の種族・ドワーフの日本語名が〈こびと / 小人 / Kobito〉という名称となっていて、ホビットの語源のように思われます。
アメリカのテーブルトークRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』ではホビットの影響を受けた架空の妖精種族で〈ハーフリング / Halfling〉が登場し、日本のテーブルトークRPG『ソード・ワールドRPG』ではホビット及びハーフリングの影響を受けた架空種族の〈グラスランナー / Grass Runner〉が登場します。
アメリカのコンピューターRPG『ウィザードリィ』シリーズや日本のTVゲームRPG『ドラゴンクエスト』シリーズにもホビットが登場し、アメリカのコンピューターRPG『ウルティマⅢ』に〈ボビット Bobbit〉という似たような名前の種族が登場します。
今回はいろいろな言語でホビットを取り上げます。
いろいろな言語でホビット
言語によっては〈ホビット〉系統または〈ホビ〉系統に大別されます。
ロマンス諸語では一部を除き〈オビット / オビ〉系の読みとなります。
インド諸言語など各メディアや年代でホビットの表記が異なるものも見られます。
ホビット系統
【Hobbit】ほとんどのラテン文字使用言語
【Hobbit / ·𐑣𐑪𐑚𐑦𐑑】イギリス英[ˈhɒ.bɪt ホビット]
【Hobbit / 𐐐𐐱𐐺𐐮𐐻 , 𐐐𐐪𐐺𐐮𐐻】アメリカ英[ˈhɑ.bɪt ハビット/ˈhɑː.bɪʔ ハービッ] - デセレット文字表記の後者は現代音に近い表記。
【Hobbit / 𐒔𐒙𐒁𐒁𐒘𐒂】ソマリ
【Hobbiti】アイスランド
【Hobbitus】ラテン
【Hobbîto / Һоббито】クルド
【Hobit】チェコ、セルビア・クロアチア、スロベニア、低地/高地ソルブ、シレジア、フリウリ
【Hobit / 𐔌𐔖𐔁𐔍𐔝 / 𐕼𐖮𐕲𐕾𐖵】アルバニア - 作品名では英語と同一の綴りになる場合がある。
【Hobitas】リトアニア
【Hobite】ノヴィアル
【Hobito】中南米スペイン、エスペラント
【Hobits】ラトビア
【Hobitti】フィンランド、スコルト・サーミ
【Hobijdwz / Hobiзdɯƨ / 霍比特】チワン - 種族を表す接頭語は《Vunz- / Vunƨ- / 伝-》[ヴン]だが、中国語由来の接尾語《-yinz / -yinƨ / -人》[イン]も用いられる。
【Hopita】ハワイ
【Hòbbit】カタロニア、オック
【Hốp-bít】ベトナム - 現行正書法では英語と同一表記。
【Hɔbit】クリオ
【Mhobiti】スワヒリ
【Xobbit / Hobbit / Хоббит】ウイグル
【Χόμπιτ】ギリシャ
【Ὅββιτος / ͰΟΒΒΙΤΟΣ】古典ギリシャ
【ϩⲟⲃⲃⲓⲧ / ϨⲞⲂⲂⲒⲦ】ヌビア
【ϩⲟⲡⲓⲑ / ϨⲞⲠⲒⲐ】コプト
【Хоббит】ほとんどのキリル文字使用言語
【Хобит】ブルガリア、セルビア、マケドニア
【Хоббіт】ウクライナ
【Хобіт】ベラルーシ
【Хуобитә】東干 - 種族を表す接尾語《-人》は〈-жын〉と表記。
【Ҳоббит】タジク、ウズベク
【Гобiт】ウクライナ
【Һоббит】アゼルバイジャン
【Հոբիթ】アルメニア
【Հոպիթ】西アルメニア
【ჰობიტი / ᲰᲝᲑᲘᲢᲘ / Ⴠⴍⴁⴈⴒⴈ】ジョージア
【האָביט】イディッシュ
【הוביט】ヘブライ
【חוביט】ラディノ
【حوببيىت】カザフ
【حۉبٖىت】ボスニア
【خوببىت】ウイグル
【هابیت】ペルシア、タジク、マーザンダラーン、南アゼルバイジャン
【هابېټ】パシュトー
【هوببيت】ジャウィ
【هوبٽ】シンド
【هوبیت】エジプト・アラビア、ダリー - イ段の本来の字母はペルシア語イェー《ی》で、パシュトー語ではネット上でこの表記になる場合が多い。
【هوبيت】アラビア、モロッコ・アラビア、パシュトー - イ段の本来の字母はアラビア語ヤー《ي》で、エジプト・アラビア語ではネット上の場合、各種アラビア語文字コードの関係上、この表記になる。
【هوبيط】スーダン・アラビア
【هوبّيت】ヒジャーズ・アラビア
【ھۆبیت】ソラニー
【ہابٹ】ウルドゥー
【ہابِٹ】カシミール
【ہوبٹ】西パンジャブ
【ހޮބިޓް】ディベヒ
【ܗܘܒܝܛ】アッシリア現代アラム
【ܗܘܒܝܬ】シリア
【हबिट】ネパール
【हाबिट् / 𑌹𑌾𑌬𑌿𑌟𑍍】サンスクリット
【हॉबिट】ヒンディー、マラーティー、コンカニ、アワディー
【होबिट】ヒンディー
【হবিট】ベンガル、アッサム
【ਹੋਬਿਟ】パンジャブ
【ਹੌਬਿਟ】パンジャブ
【ཧོ་པི་ཐི , ཧོ་པི་ཐི།】チベット
【ཧོབ་བིཊི་ , ཧོབ་བིཊི།】ゾンカ
【𑐴𑐧𑐶𑐚 / हबिट】ネワール
【ꯍꯣꯕꯤꯠ / হোবিৎ , হোবিত】マニプーリ
【હૉબિટ】グジャラート
【હોબિટ】グジャラート、カッチ
【𑂯𑂰𑂥𑂱𑂗 , 𑂯𑂷𑂥𑂱𑂗 / हॉबिट】アンギカ - アンギカ語を表記する文字体系の1つであるカイティー文字ではデーヴァナーガリー表記に用いられるチャンドラ記号が存在しないため、2つの代用表記が存在。
【𑂯𑂷𑂥𑂱𑂗 / होबिट】ビハール/ボージュプリー
【𑒯𑒽𑒥𑒱𑒙 / हॉबिट】マイティリー
【𑠪𑠬𑠠𑠭𑠔 , 𑠪𑠵𑠠𑠭𑠔 / हॉबिट】ドーグリー - ドーグリー文字ではデーヴァナーガリー表記に用いられるチャンドラ記号が存在しないため、2つの代用表記が存在。
【𑚩𑚭𑚠𑚮𑚔 , 𑚩𑚴𑚠𑚮𑚔 / हॉबिट】カーングリー - タークリー文字ではデーヴァナーガリー表記に用いられるチャンドラ記号が存在しないため、2つの代用表記が存在。
【ହବିଟ୍ , ହବିଟ】オリヤー
【ᱦᱚᱵᱤᱴ】サンタル
【ஹொபிட்】タミル
【హాబిట్】テルグ
【ಹೊಬಿಟ್】カンナダ
【ಹೊಬ್ಬಿಟ್】カンナダ
【ഹൊബിറ്റ്】マラヤラム - 映画『ホビット』における表記。
【ഹോബിറ്റ്】マラヤラム
【හොබිට්】シンハラ
【ဟောဗ္ဗိတ / Hobbita】パーリ - パーリ文字HO《ဟော》[hoː ホー]は二重子音の前では短母音HO[ho ホ]となる。
【ဟော့ဘစ်】ビルマ
【ᩌᩬᨷᨷᩥ᩠ᨴ】カム・ムアン/ラーンナー
【𑄦𑄮𑄝𑄨𑄖𑄴】チャクマ
【ហោបប៊ីត】クメール
【ฮอบบิท】タイ
【ຮອບບິດ】ラオ
【ꦲꦺꦴꦧ꧀ꦧꦶꦠ꧀ / Hobbit】ジャワ
【ᬳᭀᬩ᭄ᬩᬶᬢ᭄】バリ
【ᮠᮧᮘ᮪ᮘᮤᮒ᮪】スンダ
【ᜑᜓᜊᜒᜆ᜔ / Hobbit】タガログ/フィリピノ
【ᜱᜳᜪᜲᜦ᜴】ハヌノオ
【霍比特 / Huòbǐtè】中国 - 種族名の場合、接尾語の《-人 / -rén》が付加される。
【霍比特 / Hôkbidhek】上海
【호비트】韓国 - 映画『ロード・オブ・ザ・リング』公開以前の訳語。
【호빗】韓国
【ホビットゥ / Hobittu】沖縄
【ホンピッ / Hompit】アイヌ
【ሆቢት】アムハラ、ティグリニャ
【ⵀⵓⴱⴱⵉⵜ】アマジグ
【ꖽꔫꔳ】ヴァイ
【ߤߐߓߌߕ】マニンカ
【𞤖𞤮𞤦𞥆𞤭𞤼】フラニ
ホビ系統
【Hobbi】フェロー
【ᨖᨚᨅᨗ】ブギス
【ᝑᝓᝊᝒ】ブヒッド - 語末子音は表記されないため、フビ[ˈhu.bi]ともフビット[ˈhu.bit]とも読まれる。
【ᝣᝳᝪᝲ】タグバヌワ
【哈比人 / Hābǐ-rén】中国 - 種族を示す接尾語《-人 / -rén / -ㄖㄣˊ》は、日本語における男性人名接尾語では《-と》[-to]とも読まれるため、当て字のように見える。地名の場合、ホビット村は〈哈比村 / Hābǐ-cūn〉, ホビットンは〈哈比屯 / Hābǐtún〉と表記される。
【哈比人 / ㄏㄚㄅㄧˇ ㄖㄣˊ】台湾華
【哈比人 / Haa¹bei² jan⁴】広東
【哈比人 / Hah-pí-lâng】台湾 - 台湾語で《-人》は〈-lîn , -jîn〉[リンまたはジン]とも読まれる。ホビットの影響を受けたテーブルトークRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』の種族・ハーフリングの英語表記〈Halfling〉に似た発音。
その他
【Hob】スウェーデン[ホッブ]
【Hobad / Һobɑꝺ】アイルランド[ホバッド]
【Hobys】コーンウォール[ホビス]
【Holbytla】古英[ホルビュトラ]
【Homp】スウェーデン[ホンプ] - 初期翻訳に見られる表記。
【Hoppeli】フィンランド[ホッペリ]
【Hàbad / Һɑ̀bɑꝺ】スコットランド・ゲール[ハーバッド]
本来の名称と異なるもの
【Babó】ハンガリー[バボー]
【Kääbik , Kääbikud】エストニア、ヴォロ[カービク, カービクト]
【காபிட்டு】タミル[カービットゥ] - 映画『ホビット』における表記。タミル文字KA《க》は位置によってはハ行音[h]に変音する場合がある。