いろいろな言語で丸《。》[マル]と点《、》[テン]
9月24日はアメリカにおける句読点の日である【National Punctuation Day】です。
日本語の句読点では、終止符ピリオド《.》に対応する句点《。》と休止符カンマ《,》に対応する読点《、》があります。
句点は〈まる / 丸〉[ma.ɾɯ], 読点は〈てん / 点〉[teɴ]という別名があります。
今回はいろいろな言語で日本語の丸と点を取り上げます。
各言語における日本語の丸と点の転写・翻字
日本語で《⭕️》を意味する〈まる〉は句点などの小さいものの《丸》の他に、大きいものの《円・圓》があります。
インド系文字における〈てん〉の転写・翻字は、母音の長短や撥音の位置、日本語本来の歯音《त / T・t》か英語経由のそり舌音《ट / Ṭ・ṭ》かの語源によって表記が著しく異なります。【まる〈Maru〉―てん〈Ten〉】ほとんどのラテン文字使用言語
【まる〈Maru / 𐑥𐑸𐑵〉[ˈmɑː.ɹuː マールー]―てん〈Ten / 𐑑𐑧𐑯〉[tɛn~ten テン]】イギリス英 - Maruはアクセントの無い場合はシェイヴィアン文字表記で〈𐑮𐑼𐑵〉[mə.ɹuː マルー]と綴りが変化。
【まる〈Maru / 𐐣𐐪𐑉𐐭〉[ˈmɑː.ɹuː]―てん〈Ten / 𐐓𐐯𐑌〉[tɛn]】アメリカ英
【まる〈Marou〉―てん〈Ten〉】フランス - 実際は英語と同一表記となる。
【まる〈Vanzu / Vanƨ / 丸〉―てん〈Denj / Denз / 点〉】東干
【まる〈Μαρού , Μαρου-〉―てん〈Τεν〉】ギリシャ
【まる〈ⲙⲁⲣⲟⲩ / ⲘⲀⲢⲞⲨ〉―てん〈ⲑⲉⲛ / ⲐⲈⲚ〉】コプト
【まる〈ⲙⲁⲣⲟⲩ / ⲘⲀⲢⲞⲨ〉―てん〈ⲧⲉⲛ / ⲦⲈⲚ〉】ヌビア
【まる〈𐌼𐌰𐍂𐌿〉―てん〈𐍄𐌰𐌹𐌽〉】ゴート
【まる〈Мару〉―てん〈Тен〉】ほとんどのキリル文字使用言語
【まる〈Мару〉―てん〈Тэн〉】ロシア、ベラルーシ、モンゴル、カザフ
【まる〈Ван〉―てん〈Дян〉】東干
【まる〈Մարու〉―てん〈Թէմ〉】西アルメニア
【まる〈Մարու〉―てん〈Տեն〉】アルメニア
【まる〈მარუ / ᲛᲐᲠᲣ / Ⴋⴀⴐⴓ〉―てん〈ტენი , ტენ- / Ⴒⴄⴌⴈ , Ⴒⴄⴌ-〉】ジョージア、メグレル、ラズ
【まる〈ᎹᎷ / Malu〉―てん〈ᏖᏂ / Teni〉】チェロキー
【まる〈מארו〉―てん〈טין , טינ־〉】ラディノ
【まる〈מארו , מרו־〉―てん〈טן , טנ־〉】ヘブライ
【まる〈מאַרו〉―てん〈טען , טענ־〉】イディッシュ
【まる〈مارو〉―てん〈تن〉】ペルシア
【まる〈مارو〉―てん〈تين〉】アラビア[تين]
【まる〈مارو〉―てん〈تين〉】ウルドゥー[تین] - ウルドゥー語で英語の《10》は〈ٹین〉と転写。
【まる〈مارو〉―てん〈تێن〉】ソラニー
【まる〈مارو〉―てん〈تېن〉】ウイグル
【まる〈مارو〉―てん〈ٹین〉】西パンジャブ
【まる〈މާރޫ , މާރު〉―てん〈ޓެން〉】ディベヒ - 丸における語頭・語中はRU《ރު》, 語末はRUU《ރޫ》と母音の長短が変化する場合がある。
【まる〈मारू , मारु〉―てん〈तेन , तें-〉】ヒンディー - 丸における語頭・語中はRU《रु》, 語末はRUU《रू》と母音の長短が変化。英語の《10》は〈टेन〉と転写されるが、日本語の《点》などテンの漢字音の転写に用いられる傾向がある。
【まる〈मारू , मारु / 𑌮𑌾𑌰𑍂 , 𑌮𑌾𑌰𑍁〉―てん〈तेन् , तें- / 𑌤𑍇𑌨𑍍 , 𑌤𑍇𑌂-〉】サンスクリット - 丸における語頭・語中はRU《रु / 𑌰𑍁》, 語末はRUU《रू / 𑌰𑍂》と母音の長短が変化。英語の《10》は〈टेन् / 𑌟𑍇𑌨𑍍〉と転写されるが、日本語の《点》などテンの漢字音の転写に用いられる傾向がある。
【まる〈মারু〉―てん〈তেন〉】ベンガル - 英語の《10》は〈টেন〉と転写されるが、日本語の《点》などテンの漢字音の転写に用いられる傾向がある。
【まる〈ਮਾਰੂ〉―てん〈ਤੇਨ , ਤੇਂ-〉】パンジャブ - 英語の《10》は〈ਟੈਨ , ਟੈਂ-〉と転写されるが、日本語の《点》などテンの漢字音の転写に用いられる傾向がある。
【まる〈མ་རུ་ , མ་རུ།〉―てん〈ཏེན་ , ཏེན།〉】ゾンカ - 英語の《10》は〈ཊེན་ , ཊེན།〉と転写されるが、日本語の《点》などテンの漢字音の転写に用いられる傾向がある。
【まる〈མ་རུ་ , མ་རུ།〉―てん〈ཐེང་ , ཐེང་།〉】チベット
【まる〈મારૂ , મારુ〉―てん〈તેન , તેં-〉】グジャラート - 丸における語頭・語中はRU《રુ》, 語末はRUU《રૂ》と母音の長短が変化。
【まる〈ମାରୁ〉―てん〈ଟେନ୍ , ଟେନ〉】オリヤー
【まる〈மாரூ〉―てん〈தென் , -த்தென்〉】タミル - 英語の《10》は〈டென்〉[テン]と転写されるが、日本語の《点》などテンの漢字音の転写に用いられる傾向がある。
【まる〈మారు〉―てん〈టెన్〉】テルグ
【まる〈ಮಾರು〉―てん〈ಟೆನ್〉】カンナダ
【まる〈മാരു〉―てん〈തെൻ , -ത്തെൻ〉】マラヤラム - 英語の《10》は〈ടെൻ〉[テン]と転写されるが、日本語の《点》などテンの漢字音の転写に用いられる傾向がある。
【まる〈මරු〉―てん〈ටෙන්〉】シンハラ
【まる〈မရု〉―てん〈တင် , တင်း〉】ビルマ
【まる〈မာရူ , မာရု / Mārū , Māru〉―てん〈ဋေန , ဋေံ- / Ṭena , Ṭeṃ- , Ṭeṁ-〉】パーリ - 丸における語頭・語中はRU《ရု / RU・Ru・ru》, 語末はRUU《ရူ / RŪ・Rū・rū》と母音の長短が変化する場合がある。点における日本語の発音に近い表記は〈ဋေံ / Ṭeṃ , Ṭeṁ〉[ʈẽː テーン]だが、現代パーリ語の外来語では鼻母音で終わるのは稀。点々の転写は〈ဋေဏ္ဋေန / Ṭeṇṭena〉[ʈeɳ.ʈen.ɐ テンテナ]と長母音が短母音に変化。
【まる〈𑄟𑄢𑄪〉―てん〈𑄖𑄬𑄚𑄴〉】チャクマ
【まる〈ម៉ារូ〉―てん〈ថេន〉】クメール
【まる〈มารู , มารุ〉―てん〈เต็ง , เท็ง〉】タイ - 丸における語頭・語中はRUU《รู》, 語末はRU《รุ》と母音の長短が変化。点は無気音タ行《ต》[t]か有気音タ行《ท》[tʰ]のいずれかで、固有名詞によって異なる。なお、英語の《10》は〈เท็น〉と転写される。
【まる〈ມະຣຶ〉―てん〈ເຕັງ , ເທັງ〉】ラオ - 点は無気音タ行《ຕ》[t]か有気音タ行《ທ》[tʰ]のいずれかで、固有名詞によって異なる。
【まる〈ꦩꦫꦸ / Maru〉―てん〈ꦠꦺꦤ꧀ / Tèn〉】ジャワ
【まる〈ᬫᬭᬸ〉―てん〈ᬢᬾᬦ᭄〉】バリ
【まる〈ᮙᮛᮥ〉―てん〈ᮒᮦᮔ᮪〉】スンダ
【まる〈ᨆᨑᨘ〉―てん〈ᨈᨙ , ᨈᨙᨊ〉】ブギス - 語末の《ン》[-n]は本来表記されないが、近年は子音字NA《ᨊ》を配置するヒンディー語など北インド諸言語の末子音表記で示される場合がある。
【まる〈ᜋᜇᜓ / Maru〉―てん〈ᜆᜒᜈ᜔ / Ten〉】タガログ/フィリピノ
【まる〈ᜋᜎᜓ / Maru〉―てん〈ᜆᜒᜈ᜔ / Ten〉】イロカノ
【まる〈ᜫᜭᜳ〉―てん〈ᜦᜲᜨ᜴〉】ハヌノオ
【まる〈ᝋᝍᝓ〉―てん〈ᝆᝒ〉】ブヒッド - 点の撥音《ン》[-n]は表記されないが、発音される。
【まる〈ᝫᝮᝳ〉―てん〈ᝦᝲ〉】タグバヌワ - 点の撥音《ン》[-n]は表記されないが、発音される。
【まる〈丸 / Wán〉―てん〈點 / 点 / Diǎn〉】中国
【まる〈丸 / ㄨㄢˊ〉―てん〈點 / ㄉㄧㄢˇ〉】台湾華
【まる〈丸 / Jyun⁴〉―てん〈點 / Dim²〉】広東
【まる〈丸 / Oân〉―てん〈點 / Tiám〉】台湾
【まる〈丸 / Hhuóe〉―てん〈点 / Dī〉】上海
【まる〈마루 ; 환 / 丸〉―てん〈텐 ; 점 / 點 , 奌〉】韓国 - 点の漢字表記の後者《奌》は韓国における人名用漢字。
【まる〈ማሩ〉―てん〈ቴን〉】アムハラ
【まる〈ꕮꖩ〉―てん〈ꗳꘋ〉】ヴァイ
【まる〈ߡߊߙߎ߫〉―てん〈ߕߍ߲〉】マニンカ
漢字圏における乗り物の【◯◯丸】表記
漢字圏では日本語における船《🚢》などの乗り物の接尾語〈◯◯丸 / ◯◯ Maru〉に同じく乗り物の接尾語《◯◯号》を付加した表記となります。
【Vanzhau / Vanƨhau / 丸号】チワン - 日付の“-日 / -にち / -nichi , -niti”の意である号は《Hauh / Hauƅ / 号》と第1声調から第6声調に変化。
【Ванхо】東干
【丸號 / 丸号 / Wánhào】中国
【丸號 / ㄨㄢˊㄏㄠˋ】中国
【丸號 / Jyun⁴hou⁶】広東
【丸號 / Oân-hō】台湾
【丸号 / Hhuoehhao】上海 - エクスプレス式上海語ローマ字では声調が変動する理由から、接尾語の場合は声調記号が付加されない。