仮名文字の欧文風筆記体
令和5年10月13日公開の岩井俊二監督による東映系映画で、アイナ・ジ・エンドさん初主演映画『キリエのうた』のタイトルロゴ(ツイッター内の映画公式アカウント https://twitter.com/kyrie_uta 参照)が、カタカナとひらがなを筆記体の字形にアレンジしたものとなっていて、ラテン文字のスクリプト書体系統になっていて素晴らしいクオリティになっています。
仮名文字を欧文筆記体にアレンジするアイデアは明治時代の新国字で多数生み出されました。
仮名文字の筆記体化
明治時代の頃から日本語の仮名文字を改造した人工文字が多数生まれ、それに合わせて仮名文字の筆記体が続々生まれました。
20世紀中頃ではカナモジカイでカタカナの欧文風筆記体の研究が行われたこともあり、雑誌『カナノヒカリ』で連載がありました。
各種新国字のほとんどは図書館などで閲覧できる資料も含め国立国会図書館デジタルライブラリーで確認できます、同サイトへのリンク先に筆記体の字形が記載されています。
自由仮名(作成者: 小森徳之) - 欧文風にアレンジした筆記体が存在。同文館・刊『世界文字学』(高橋竜雄・著)に紹介された後、横書片仮名専用会・刊『国字ノ一定ト横書片仮名ニ就イテ』で横書片仮名としてラテン文字筆記体により近づいた字形にリニューアルされた。
生命の日本字(作成者: 山崎笛郎) - カキトリモジと呼称される筆記体が基本字形で、花文字も存在。印刷体はカタカナをアレンジした字形。
大日本改良文字(作成者: 増田乙四郎) - 仮名文字を改造した人工文字で、豊富な書体が特徴。筆記体は大文字2種と尋常文字と呼称される小文字2種が存在。
筆記用新邦字(作成者: 衣笠寛) - 自費出版の書籍『邦字元服論』に掲載されている筆記体。大小文字の別が存在。
横書片仮名(作成者: 木村鷹太郎) - カタカナをそのまま筆記体にしたもので、異体仮名NE《子》が含まれる。『世界文字学』(Googleブックス内)に記載。
ヨコガナ(作成者: 前田直平) - ヨコガナヒロメ会『国字問題の解決 : 附・国語及国際語問題』に複数の筆記体案が見られ、79ページに新国字各種のサンプルが見られる。
拡張ラテン文字系新国字の筆記体
昭和時代に入ってから目立つようになってきたラテン文字を改造した字形となっているもので、主に活字体と筆記体がセットになっているものです。
母音字の小文字は原則的にラテン文字筆記体と共通で、ア《𝓪》, イ《𝓲》, ウ《𝓾》, エ《𝓮》, オ《𝓸》という風になっているものが目立っています。
石原式新カナ文字(作成者: 石原忍) - 小文字のみの字形。
漢字に代はる新日本の文字(作成者: 稲留正吉) - 大小の別があり、筆記体は“花文字”と呼称。基本文字と特殊記号(小文字のみ)がある。
国字改良カナの横文字(作成者: 中村猪三郎) - 大文字・小文字の別が存在。筆記体は変体仮名も取り入れた字形。
東眼式新仮名文字(作成者: 石原忍) - 大文字・小文字の別が存在。
独立仮名(作成者: 山田栄造) - 大文字・小文字の別が存在。草書体はスクリプト書体がベース。
ひので字(作成者: 中村荘太郎) - 前期と後期の2つのバージョンがあり、いずれも筆記体が見られる。
横書き仮名文字(作成者: 石原忍) - 大小の別の字形があり、東眼式新仮名文字の改良版となっている。
その他の日本語の人工文字
仮名文字系統やラテン文字系統のものとことなる人工文字です。