各言語における国際音声記号の略称
8月第1木曜日は国際IPAの日という『インディア・ペールエール』と呼ばれるビールの記念日ですが、IPAといえば国際音声記号及び国際音声学協会の略称としても知られています。
今回はいろいろな言語における国際音声記号の略語を取り上げます。
ラテン文字使用言語
音声あるいは発音の〈Phonetic〉由来は《P》を採用している系統と《F》を採用している系統が見られます。
文字の意の〈Alphabet〉系統の単語は大半の言語では頭文字が《A》ですが、現行ラテン文字正書法制定の際にヤナリフから一部の字母を受け継いだアゼルバイジャン語では国際音声記号由来のシュワー《Ə・ə》が頭文字となっています。
【IPA】英、ドイツ、スイス・ドイツ、ルクセンブルク、アレマン、スコットランド、北フリジア、イロカノ
【ℑ𝔓𝔄】ドイツ:ドイツ文字 - ドイツ大文字I《ℑ》はラテン大文字《I》と《J》の双方に用いられたが、20世紀後半頃から大文字J《𝔍》が分化している。
【AAI】マダガスカル
【AEF】スコットランド・ゲール
【AFA】マレー
【AFAB】ミナンカバウ
【AFE】ワロン、アルピタン、ハイチ
【AFI】イタリア、スペイン、ポルトガル、カタロニア、オック、ガリシア、ルーマニア、アストゥリア、アラゴン、コルシカ、マルタ、インドネシア、ジャワ、テトゥン
【AFK】ヨルバ
【AFN】シチリア、アルバニア、クルド
【AHS】アイスランド
【AIF / ⱭIꝻ】アイルランド
【AKF】スワヒリ
【API】ラテン、フランス、ノルマン、インターリングァ、タガログ/フィリピノ
【ASE】マン島
【AŞF】ザザキ
【BPQ】ベトナム
【BFƏ】アゼルバイジャン
【CFI】ピカルディ
【DFA】バンバラ
【EFE】ノーフォーク・ピトケアン
【GSR】ウェールズ
【HFE】トルクメン、クリミア・タタール
【IFA】オランダ、フラマン、アフリカーンス、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、リプアーリ、エスペラント、クリオ
【IRH】グアラニ
【KFA】フィンランド
【LFA】ヴォラピューク
【LFE】ブルトン
【MAF】ポーランド、シレジア
【MFA】チェコ、スロバキア、セルビア・クロアチア、ボスニア、スロベニア、高地ソルブ、低地ソルブ、カシューブ
【NAF】バスク
【NFÁ】ハンガリー
【PAF】ワライ
【QSI】オロモ
【RFK】ヴェプス
【RFT】北サーミ
【SFA】ラトビア
【TFA】リトアニア
【UFA】トルコ
【XCC】ソマリ
【XFA】ウズベク
【XFÄ / XFӘ】タタール - 前者は1990年代のラテン文字正書法、後者はヤナリフ。
【XFË / HFE】ウイグル - 前者は現行ラテン文字正書法、後者は旧ラテン文字正書法。
【XYÄ / XJӘ】タタール - 前者は1990年代のラテン文字正書法、後者はヤナリフ。
【YFA】フリジア
【Za̱FBS】カタブ - 正式名称は〈Zwunzwuo-a̱lyem Fonetik Bibyin Swanta〉で、ハイフンで連結された単語の《A̱・a̱》の箇所は小文字となる。
キリル文字使用言語
スラブ諸語の大半では略称が共通になっているのが特徴です。
一部のチュルク諸語では国際音声記号の拡張ラテン文字《Ə・ə》由来のキリル字母シュワー《Ә・ә》が見られます。
【МФА】ブルガリア、ロシア、ウクライナ、ベラルーシ、セルビア、ボスニア、マケドニア、ルシン
【МФ҃А】古代教会スラブ
【АДФА】ヤクート
【АФБ】タジク
【АФА】キルギス
【АФИ】モルドバ、リングァ・フランカ・ノバ
【АФН】クルド
【ÆФА】オセット
【БФӘ】アゼルバイジャン
【ТФА】チュバシ
【ХАФӘ】バシキール
【ХДФА】ラク
【ХФА】ウズベク、アバール
【ХФЕ】ウイグル
【ХФЭ】クリミア・タタール、トルクメン
【ХФӘ】カザフ、タタール
【ХЮФА】イングシ
【ХЯӘ】タタール
その他の欧米の文字
【ΔΦΑ】ギリシャ
【ⰏⰗⰀ , ⰮⰗⰀ】古代教会スラブ:グラゴル文字 - ムィスリテは《Ⰿ・ⰿ》と《Ⱞ・ⱞ》の2種類があり、国や地域によって異なる。
【ՄՀԱ】アルメニア
【სფა / ᲡᲤᲐ / ႱႴႠ】ジョージア、メグレル
【ჽჶა / ᲽᲶᲐ / ჍФႠ】オセット:ジョージア文字 - フツリ字母本来のFIはユニコード未登録。
【𐔀𐔉𐔓】アルバニア:エルバサン文字
【𐕰𐕹𐖅】アルバニア:ビタクチェ文字
【𐐌𐐑𐐁 , 𐐆𐐙𐐈】アメリカ英:デセレット文字 - 前者は〈IPA〉[aɪ.piː.eɪ アイピーエイ], 後者は〈International Phonetic Alphabet〉の頭文字由来。
中東及びアフリカの文字体系
【אפ״ב】ヘブライ
【איפ״אַ】イディッシュ - 本来の表記は〈אינטערנאַציאָנאַלע פאָנעטיק אַלפאַבעט〉。
【أصد】アラビア - 本来の表記は〈الألفبائية الصوتية الدولية〉で、冠詞〈الـ〉を抜いた略語となる。
【ا ف ا】ジャウィ
【ح ف ٵ】カザフ
【خڧئې ، خفئې】ウイグル - ㊨は本来の[f]音を示す字母である上1点付きクヮーフ《ڧ》を用いた略語表記。
【م ف آ】ボスニア
【ބ.އ.އ】ディベヒ
【𐒄𐒋𐒋】ソマリ:オスマニヤ文字 - ラテン文字表記“Xarfaha Codka Caalamiga”はオスマニヤ文字表記で〈𐒄𐒖𐒇𐒍𐒖𐒔𐒖 𐒋𐒙𐒆𐒏𐒖 𐒋𐒛𐒐𐒖𐒑𐒘𐒌𐒖〉となる。
【ߛ ߞ ߖ】マニンカ
インド系文字
【अ॰ध॰व॰】ヒンディー
【अ.ध.व.】ネパール
【আ-ধ্ব-ব】ベンガル
【𑒁𑓆𑒡𑓆𑒫𑓆 / अ॰ध॰व॰】マイティリー
【ᱡ.ᱟ.ᱪ】サンタル
【ส.อ.ส.】タイ
【ສ.ອ.ສ.】ラオ
【ꦄ꧈ꦥ꦳꧈ꦆ】ジャワ
【ᮃ.ᮖ.ᮄ.】スンダ
【ᜉᜒᜓᜉᜒᜓᜀ】タガログ/フィリピノ:タガログ文字 - 子音字を略語表記に用いる場合、イ段上点[i~e]とウ段下点[u~o]を打って示す。ラテン文字表記“Pandaigdigang Ponetikong Alpabeto”はタガログ文字表記で〈ᜉᜈᜇᜁᜄ᜔ᜇᜒᜄᜅ᜔ ᜉᜓᜈᜒᜆᜒᜃᜓᜅ᜔ ᜀᜎ᜔ᜉᜊᜒᜆᜓ〉となる。