いろいろな言語で恵山
日本国・北海道函館市恵山地域にある火山である【恵山】は日本語の訓令式・ヘボン式ローマ字共通で【E-san】と表記され、山の名称ではない地名の場合は【Esan】とハイフンの有無で区別されますが、日本語の仮名文字では【えさん】となります。
各言語の正式名称が判明している多くの言語では恵山は“めぐみ”の意の【恵】の音読みの1つである《エ》[e]と発音される系統が目立っています。
恵山の旧かなづかいでは【ゑさん】ですが、昭和9年の冨山房・刊『国民百科大辞典②』で恵山は【えざん】と表記され、恵山岬の〈えさん・みさき〉とは発音が異なっています。
アイヌ語で“岬”は〈エサン / esan〉で、恵山の名前の由来の一説となっています。
エ系統の発音による字母名由来
アイヌ語ラテン文字の字母名は正式名称が統一されていないことから、恵山の“恵”は現代日本語標準語の音読みである《え / エ / E》に基づく綴りでなされる傾向があります。
なお、恵山の“恵”の旧かなづかい表記はWE《ゑ / ヱ》[e エ]となり、訓令式・ヘボン式ローマ字では発音通りの《E》で表され、かつては英語ラテン文字では“恵比寿; 夷”の〈Yebisu〉など〈YE〉に当てる傾向がありました。
【E】の字母名がイーとなる系統
日本語におけるラテン文字表記である訓令式ローマ字及びヘボン式ローマ字の字母名は英語ラテン文字に由来し、Eは字母名としてはエではなく〈イー〉が正しいとされています。
【Mount E / ·𐑥𐑬𐑯𐑑 ·𐑰】イギリス英
【Mount E / 𐐣𐐵𐑌𐐻 𐐀】アメリカ英
ちなみに昭和46年1月2日~昭和47年3月25日にフジテレビ系列で放送されたピー・プロダクションの特撮『スペクトルマン』シリーズは第1期『宇宙猿人ゴリ』から始まり、昭和46年5月22日からは第2期『宇宙猿人ゴリ対スペクトルマン』、同年10月2日からは第3期『スペクトルマン』というタイトルで放送され、宇宙猿人ゴリ&ラーがやって来た惑星の名称は《E》で、英語ラテン文字の字母名あるいは日本語ローマ字の字母名で〈イー〉と読まれるものになっています。
インド系文字使用言語における英語【E】の字母名由来
南アジア諸言語の大半におけるインド系文字による地名は、英語経由で借用されることが中心となっています。
日本語“絵文字”由来である〈Emoji〉も“電子文字”と解釈されて〈イーモジ〉として借用されるケースも多いことからの推測も含まれています。
イ段長音による【イー山】系統
【E pahaarr / ई पहाड़】フィジー・ヒンディー
【Gunung E / ꤱꥈꤵꥈꥏ ꥆꥇ】マレー - マレーシアの各言語におけるラテン文字の字母名は英語由来。
【ई पर्वत】ヒンディー
【माउंट ई】ヒンディー、アワディー
【माउंट ई / 𑘦𑘰𑘄𑘽𑘘 𑘃】マラーティー
【मावंट ई / ಮಾವಂಟ್ ಈ】コンカニ
【माउंट ई / 𑆩𑆳𑆇𑆁𑆛 𑆆】カシミール
【माउण्ट ई】ヒンディー
【मौण्ट् ई / 𑌮𑍌𑌣𑍍𑌟𑍍 𑌈 / Mauṇṭ Ī】サンスクリット
【ਮਾਊਂਟ ਈ】パンジャブ
【𑐖𑑂𑐰𑐎𑐵 𑐃 / च्वका ई】ネワール
【𑐩𑐵𑐄𑐣𑑂𑐚 𑐃 / माउन्ट ई】ネワール
【ꯏ ꯆꯤꯡꯖꯥꯎ / ঈ চীংজাও】マニプーリ
【માઉન્ટ ઈ】グジャラート
【𑂆 𑂣𑂩𑂹𑂫𑂞 / ई पर्वत】アンギカ
【𑂧𑂰𑂇𑂁𑂗⸱𑂆 / माउंट ई】ビハール/ボージュプリー
【𑂧𑂰𑂇𑂝𑂹𑂗⸱𑂆 / माउण्ट ई / 𑒧𑒰𑒅𑒝𑓂𑒙 𑒄】マガヒー
【𑒧𑒰𑒅𑒢𑓂𑒙 𑒄 / माउन्ट ई】マイティリー
【ஈ மலை】タミル
【మౌంట్ ఈ】テルグ
【ಮೌಂಟ್ ಈ】カンナダ
【ඊ කන්ද】シンハラ
【မာဥဏ္ဋ ဤ / Māuṇṭa Ī】パーリ - インドなどで《E》の読みが英語ラテン文字に基づく場合の綴り。
【အီးတောင်】ビルマ
【ភ្នំអ៊ី】クメール
イ段短音による【イ山】系統
フィリピン諸言語の文字体系では、イ[i]とエ[e]の区別が存在しないため、イ段母音記号を用います。
【इ हिमाल】ネパール
【माउन्ट इ】ドテリ
【ই পর্বত】ベンガル
【মাউণ্ট ই】アッサム
【মাউন্ট ই】ビシュヌプリヤ
【མཱའུནཊི་ ཨི་ , མཱའུནཊི་ ཨི།】ゾンカ
【ꠝꠣꠃꠘ꠆ꠐ ꠁ】シレット
【𑊠𑊀𑊂𑊚𑊐 𑊁】サラーエキー
【ଇ ଶୃଙ୍ଗ】オリヤー
【ಇ ಪರ್ವತ】トゥールー
【ഇ പർവ്വതം】マラヤラム
【လွႆဢီး】シャン
【𑄟𑄅𑄪𑄚𑄳𑄑𑄴 𑄃𑄨】チャクマ
【ᯎᯮᯉᯮᯰ ᯤ / Gunung E】トバ・バタク、ダイリ・バタク - バタク文字の母音字I《ᯤ》はイ段とエ段の区別がされない場合がある。
【ᯎᯮᯊᯮᯰ ᯤ / Gunung E】マンダイリン
【ᯎᯬᯉᯬᯰ ᯤ / Gunung E】カロ・バタク
【ᜊᜈ᜔ᜆᜌ᜔ ᜁ / Bantay E】イロカノ - フィリピノ語で〈Bantay〉[バンタイ]は福建語〈萬代 / 万代〉に由来する“守護”の意味。
【ᜊᜓᜈ᜔ᜇᜓᜃ᜔ ᜁ / Bundok E】タガログ/フィリピノ - フィリピン・ラテン文字《E》の字母名は旧正書法では〈エ〉, 現行正書法では英語由来の〈イー〉となり、フィリピン諸文字のI《ᜁ / ᜡ / ᝁ / ᝡ》はイ段[i]とエ段[e]の区別がされないことから、どちらでも正解となる。
【ᜊᜓᜃᜒᜇ᜔ ᜁ / Bukid E】ビコル
【ᜪᜳᜨ᜴ᜧᜳᜣ᜴ ᜡ】ハヌノオ
【ᝊᝓᝇᝓ ᝁ】ブヒッド - 音節末子音字が表記されないことによる推測読みは、フィリピン諸言語でほぼ共通の〈ブンドック・イー〉あるいは〈ブンドック・エ〉。
【ᝪᝳᝧᝳ ᝡ】タグバヌワ - 音節末子音字が表記されないことによる推測読みは、フィリピン諸言語でほぼ共通の〈ブンドック・イー〉あるいは〈ブンドック・エ〉。
【E】の字母名がエ段となる系統
ラテン文字《E・e》はラテン語では〈エー〉と読まれ、基本的にラテン語とほぼ同一の字母名が中心となっています。
日本語の仮名文字E《え・エ》に由来する字母名も含まれます。
日本語と同じく【E山】と接尾語が《山》となるグループ
【E-Bärg / E-BAERG】スイス・ドイツ
【E-Beag】バイエルン・オーストリア
【E Beorg / ᛖ ᛒᛇᚱᚳ】古英 - アングロサクソン・ルーン文字EH《ᛖ》は“馬”《🐴》が字母名の由来となっている。
【E-berag】フリジア
【E-berg】オランダ
【E-berget】スウェーデン
【E-bjerg】ルクセンブルク
【E-bjerge】デンマーク
【E buyuʼ】サキザヤ
【E Dagy / Е Дагы】トルクメン
【E Dağı】トルコ
【E Dağı / Е Дағы】アゼルバイジャン
【E dağı / Е дагъы】クリミア・タタール
【E-fjall】アイスランド
【E-fjellet】ノルウェー:ブークモール、ノルウェー:ニーノシュク
【E Gora / Е Гора】ボスニア
【E Góra】カシューブ
【E Gůra】シレジア
【E-hegy】ハンガリー
【E Hora】スロバキア
【E Kaʼa】タナイナ
【E karnas】リトアニア
【E karns】ラトビア、サモギティア
【E Keʼe】アトナ
【E lamətay , E lmt. / 𛱇 𛰆𛱁𛰙𛱇𛰃𛱁𛱏 , 𛱇 𛰆𛰙𛰃⸼】チヌーク・ジャーゴン
【E mägi】エストニア
【E-mägi】ヴェプス
【E mendia】バスク
【E-monto】イード
【E Mountn】パトワ
【E Pʋʋ】カビイェ
【E Qullu】アイマラ
【E togʻi / Ъе тоғи】ウズベク
【E Urqi】ケチュア
【E-vuori】フィンランド
【E zoli】ダグバニ
【Ε. Ὄρος】古典ギリシャ
【Е ашьха / ე აშხა / Ე ᲐᲨᲮᲐ / E aſxa】アブハズ
【Е Гора】ブルガリア
【Е хайа】ヤクート
【Е хох / ე ხოხ / Ე ᲮᲝᲮ / Ⴄ ⴞⴍⴞ】オセット
【Լեռ Է , Է լեռ】アルメニア - アルメニア文字EH《Է・է》の数値は“7”。アルメニア語版『ウィキペディア』の【Է_(հրաբուխ)】の項目では“山・エー”の順だが“エー・山”の順である後者も用いられる。
【Է լեռը】西アルメニア
【Ꭱ ᎣᏓᎸ / E Odalv】チェロキー
【𐲉 𐲏𐲉𐲎】ハンガリー
【ᠡ ᠠᠯᡳᠨ / E alin】満州
【ᐁ ᐗᔒ / Ê washii】東クリー
ちなみに、神奈川県藤沢市にある〈えのしま〉は【江の島 / 江ノ島】と表記され、形容詞を表す助詞NO《の・ノ・之》で分割されるのですが、英語の〈Enoshima〉という風に区切り無しで表記されたり、セブアノ語の〈Eno-shima〉という風に形容詞ENO〈江の〉[エノ]と名詞SHIMA〈島〉[シマ]とでハイフンで分割する綴りで表したり、韓国語の〈에노섬〉[エノソム]のように“島”を固有語のSEOM〈섬〉で表す方法があります。
【山・E】という風に接頭語が《山》の意となるグループ
インドネシア諸言語ではインドネシア語ラテン文字《E》の字母名に合わせて〈エー〉系統の読みとなります。
【A̱fan E】カタブ
【Bantay E】イスナグ
【Barg E】低地ドイツ
【Beinn E】スコットランド・ゲール
【Belud E】サマ・バジャウ
【Bepͻ E】アカン
【Bepɔw E】トウィ、ファンティー
【Berag E】北フリジア
【Berg E】ドイツ、オランダ、アフリカーンス
【Bierg E】ルクセンブルク
【Bukid E】ワライ
【Bundok E】カパンパンガン - フィリピン諸言語におけるラテン文字の旧字母名では《E》は“エ”だった。
【Bya E / 岜诶 , 岜E】チワン
【Crëp E】ラディン
【Dutsen E】ハウサ
【Dził E】ナバホ
【Fjallið E】フェロー
【Gaara E】オロモ
【Gomo re E】ショナ
【Gora E】スロベニア
【Góra E】ポーランド、低地ソルブ
【Gunong E】アチェ
【Gunuang E】ミナンカバウ
【Gunung E】インドネシア
【Hora E】チェコ、高地ソルブ
【Huʼidu E】ゴロンタロ
【Iġġi E】イヌピアック
【Intaba i-E】ズールー、コサ
【Intsaba i-E】スワティ
【Mali E / 𐔒𐔀𐔐𐔍 𐔇 / 𐖄𐖗𐖩𐖥 𐕷】アルバニア
【Mauna E】ハワイ
【Maunga E】マオリ
【Maunt E / Маунт Е】トルクメン
【Menez E】ブルトン
【Menydh E】コーンウォール
【Mlima E】スワヒリ
【Monde E】タラント
【Mons E , Mōns E / 𐌌𐌏𐌍𐌔 𐌄】ラテン
【Mont E】フランス、カタロニア、オック、ピエモンテ、ロンバルド、ラディン
【Mont-E】アルピタン
【Monte E】イタリア、スペイン、ポルトガル、ガリシア、アストゥリア、サルジニア、リグリア、インターリングァ、インターリング
【Monti E】エストレマドゥーラ
【Monto E】エスペラント
【Moont E】スコットランド
【Mòn E】ハイチ
【Mònt E】エミリア・ロマーニャ
【Mónte E】ヴェネト
【Moʻunga ko E】トンガ
【Munte E】ア・ルーマニア
【Muntele E】ルーマニア
【Muntele E / Мунтеле Е】モルドバ
【Munti E】シチリア
【Mynidd E】ウェールズ
【Ngómbá E】リンガラ
【Núi E / 𡶀衣】ベトナム - チュノム表記のE《衣》[ɛː˦ エー]は、ひらがなE《え》のルーツと同一字母で、〈山・え➡え山〉となる。
【Ogoon̄ E】オボロ
【Osó Е】グングベ
【Òkè E】ヨルバ
【Paxro E / Пахро Е / पाख़्रो ए】ロマーニー
【Piz E】ロマンシュ
【Phiri la E】トゥンブカ
【Sero E】アルバ・パピアメント
【Seru E】パピアメント
【Sliabh E / Ꞅlıɑḃ E】アイルランド
【Slieau E】マン島
【Tendrombohitra E】マダガスカル
【Tepetl E】ナワトル
【Thaba ya E】ツワナ
【Tundu E】ウォロフ
【Ugwu E】イグボ
【Ulunivanua E】フィジー
【Umusozi wa E】キニヤルワンダ
【Várri E】北サーミ
【Vose E】シャイアン
【Yvyty E】グアラニ
【ⲧⲟⲟⲩ ⲉ , ⲧⲟⲱⲩ ⲉ / ⲦⲞⲞⲨ Ⲉ , ⲦⲞⲰⲨ Ⲉ】コプト
【Гора Е】ウクライナ
【Маунт Е】マケドニア
【Монт Е】ルシン
【Монте Е / Monte E】リングァ・フランカ・ノバ
【Планина Е / Planina E】セルビア・クロアチア
【ཨེ་རི་བོ་ , ཨེ་རི་བོ།】チベット
【မာဥဏ္ဋ ဧ , မာဥဏ္ဋ ဨ / Māuṇṭa E】パーリ - IAST式ラテン文字《E》本来の字母名に基づく綴りの場合。パーリ文字《E》[エー]の前者は現行ビルマ文字に合わせた《ဧ》, 後者はミャゼディ文字から受け継がれたモン文字本来の字形である《ဨ》。
【ကောင်အဲ】パオウ
【เขาเอะ】タイ
【ເຂົາເອະ】ラオ
【ꦒꦸꦤꦸꦁꦌ / Gunung E】ジャワ
【ᬕᬸᬦᬸᬂᬏ / Gunung E】バリ
【ꤱꥈꤵꥈꥏ ꥆꥉ】ルジャン
【구눙 에】チアチア - チアチア語ハングル字母E《에》はインドネシア語ラテン文字の字母名に対応。
【E】の字母名がイェーとなる系統
アイヌ語で恵山は【ye-san / イェサン】と呼ばれ、〈ye / イェ , 𛄡〉は“浮き石, 軽石”説が主流ですが、草風社・刊『北海道の地名――アイヌ語地名の研究』におけるアイヌ語研究家・山田秀三博士の研究で“膿血”説があり、溶岩のイメージを連想させるようです。
《E》がイェー系統となるものは、主にキリル文字を使用する言語に見られます。
【Гара Е】ベラルーシ
【Гора Е】ロシア
【Е гурезь】ウドムルト
【Е зунтту】ラク
【Е-лоам】イングシ
【Е сув】レズギ
【Е тăвĕ】チュバシ
【Е уул / ᠧ ᠠᠭᠤᠯᠠ】モンゴル
その他【E】の字母名で発音される言語
各言語におけるローマ字《E》及び仮名文字《え・エ》に対応する各字母の読みが正式名称となっていると推測できそうです。
【nena E / 🗻🔣⏩🔣】トキポナ - 恵山は〈ネナ・エ〉と読まれ、偶然にも北海道の地名である〈七飯 / ななえ / Nanae〉―トキポナ語では恐らく〈ma Nane / 🏝️🔣🛣️❗🗻🛒🔣〉[マ・ナネ]―と発音が似ていて、トキポナ・ラテン文字《E》及びシテレン絵文字ESUN《🛒》のAEI式字母名〈esun〉[エスン]も偶然にも〈恵山 / えさん / E-san〉と発音が似ている。
【Όρος Ε】ギリシャ - セム系文字で“歓喜, 万歳”《🙌》の絵文字に由来するHE《𐤄》に由来するギリシャ文字EPSILON《Ε・ε》は〈エプシロン〉が字母名であるが、近年の日本語では現代ギリシャ語UPSILON《Υ・υ》及びイタリア語ラテン文字《Y・y》の字母名の読みとなる〈イプシロン〉が《Ε・ε》の字母名として、固有名詞などで多用されている。エプシロンで数値の“5”を表す場合は《Εʹ・εʹ》で示し、数符が逆となった《͵Ε・͵ε》は千倍である“5千”となる。
【𐌴-𐌱𐌰𐌹𐍂𐌲𐍃】ゴート
【Гора Є / Ⰳⱁⱃⰰ Ⰵ】古代教会スラブ - キリル・グラゴル両文字体系の字母YESTU《Є・є / Ⰵ・ⰵ》[イェストゥ]はキリル文字では“5”だが、グラゴル文字では“6”と字母の数値が異なる。
【მაუნთ ე / ᲛᲐᲣᲜᲗ Ე / Ⴋⴀⴓⴌⴇ Ⴄ】メグレル
【მთა ე / ᲛᲗᲐ Ე / Ⴋⴇⴀ Ⴄ】ジョージア - ジョージア文字EN《Ⴄ・ⴄ / Ე・ე》の数値はギリシャ文字《Ε・ε》と同じ“5”。
【ᮌᮥᮔᮥᮀ ᮈ / Gunung E】スンダ - インドネシア語と異なり、ラテン文字《E》が曖昧母音ウ[ə]に対応。
【에 산 / 에 山】韓国 - 外国語表記法ルールでは、原則的に日本語を尊重した表記で表され、且つ《山》の漢字音も日本語と共通となる。ハングル字母E《에・ㅔ》[e エ]は母音の陰陽別で“陰母音”に分類される。
【ꀔꁧ / E bbo】彝 - 規範彝文E《ꀔ》は日本語標準語のU《う・ウ》[ɯ]の音を表す。
アイン【ʿ】系統の字母名に由来する名称
セム系文字のひとつであるヘブライ文字は〈ゲマトリア〉という字母に対応する数による魔法である“数秘術”に用いられ、神様関連の単語からの関係から、子音と“読みの母”と呼称される半母音字との組み合わせによってはタブーとなる綴りも見られます。
国際音声記号で《ʕ》と表記されるセム系文字アイン《𐤏》は“目”を意味し、数値は【70】で…
アインは目の絵文字《👁️》が変化した字母で、フェニキア文字AIN《𐤏》はアラム語やポエニ語にも用いられ、ポエニ文字の最終段階ではラテン文字オー《O》に対応する母音字となった。
ヘブライ文字AYIN《ע》……ゲルマン諸語のイディッシュ語ラテン文字では《E》に対応し、イディッシュ語の場合、函館市恵山地域の“恵”を始め、北斗市七重浜の“重”や七飯町の“飯”など日本語で《エ》[e]と読まれる当て字を含む渡島地方の地名と偶然にもつながりがあるように思われる。
アラム文字AYIN《𐡏》。
アラビア文字AIN《ع》及びその翻字である左ハーフリング《ʿ》……アインは“目”の他に“泉”や“噴水”《⛲️》を意味する。上に1点が付加されたGHAIN《غ》はアブジャド式記数法で最高値である“1000”を意味し、かつて中央アジアのチュルク諸語共通ラテン文字として考案されたヤナリフのGHA《Ƣ・ƣ》に対応。
シリア文字E《ܥ》……日本語によるシリア字母名は〈エー〉とされている。
ギリシャ文字OMICRON《Ο・ο》……数値の“70”を表す場合は《Οʹ・οʹ》で示し、数符が逆となった《͵Ο・͵ο》は千倍である“7万”となる。
―というように共通の数値となっています。
アイン系統の字母名由来となる【恵山】の各言語名
シリア文字E《ܥ》は恵山の“恵”に似た響きを感じさせるものとなっています。
【Çiyayê Ayn】クルド
【Koyê ʼEyn】ザザキ
【Muntanja GĦ】マルタ - アラビア語アインに対応する連字〈GĦ・Għ・għ〉の字母名は〈Għajn〉[アイン]。
【Adrar-n-Ɛ】カビリ - アインに対応するベルベル・ラテン文字《Ɛ・ɛ》の字母名は〈Yaɛ〉[ヤァ]。なお、アイン[ʕ]の音を表すエプシロンとは別に、アラビア文字アインに由来する左右逆のエッジュ《Ƹ・ƹ》やアイン語中形に由来するウラル音声字母AIN《ᴥ》が存在。
【Г тавы / Ğ tavı / Ƣ tavь】タタール - アインに当たる《Г・г》は、チュルク・ラテン文字で《Ğ・ğ》, ヤナリフで《Ƣ・ƣ》という風に後舌ガ行[ɣ~ʁ]に当てられ、字母名は〈Гайн / Ğayn / Ƣajn〉[ガイン]となる。
【ГӀ Дубура / Ⱨ Dubura】ダルグヮ
【ГӀ мацӀал】アバール - アインに対応する綴りは〈ГӀ・Гӏ・гӀ・гӏ〉[エ]。
【Ғ Тауы】カザフ、バシキール - アイン《ʿ》に対応する《Ғ・ғ》の字母名は〈Ғайн〉[ガイン]。
【Әйин теғи / Eyin tëghi / Əyin teƣi】ウイグル
【Теппаи Ъ】タジク - 硬音符《Ъ・ъ》の綴りは〈Ъайн〉[アイン]。
【Бгы Ӏъ】カバルダ - アインに対応する《ӀЪ・Ӏъ・ӏъ》の字母名は〈Ӏъэин〉[アイン]。
【באַרג ע】イディッシュ - アイェン《ע》[e エ]に対応するラテン字母は《E》。
【הר ע , הַר ע】ヘブライ
【מונטי ע】ラディノ
【ࠄࠓ ࠏ , ࠄࠟࠓ ࠏ】サマリア
【جبل ع】アラビア、モロッコ・アラビア
【چیای ع】ソラニー
【د ع غـر】パシュトー
【ع داغی】南アゼルバイジャン - アゼルバイジャン語のラテン・キリル両文字体系による表記は〈Eyn Dağı / Ејн Дағы〉。
【ع داغؽ】トルクメン - ラテン・キリル両文字体系による表記は〈Aýn dagy / Aÿn dagy = AҰN DAGY / Айн дагы〉。
【ع غۉرا】ボスニア - ボスニア語アラビア文字では、その名称である〈عربٖىڄا〉[アレビツァ]などで、アイン《ع》が稀に使用され、単独ではラテン文字《E》及びキリル文字《Е》に対応。
【عی پہاڑی】ウルドゥー
【عي جبل】シンド
【عې تاغی \ عې تاغى】南ウズベク - ウズベク語ラテン文字〈E togʻi〉に対応するアラビア文字表記では、㊨の現行正書法ではペルシア語YEH《ی》, ㊧のヤンギ・イムロ式ではアリフ・マクスーラ《ى》がイ段を表す。
【عَ شًا】中原官話 - ピンイン表記は〈Ē Shān〉[ヲーシャン], 東干語キリル文字表記は〈Ә Сан〉[ヲーサン]。
【کوه ع】ペルシア
【کوۀ ع】ダリー
【ڮونوڠ عي】ペゴン・ジャワ
【ݢونڠ عى】ベタウィ
【ݢونوڠ عي】ジャウィ
【ماوُنٛٹ عی】カシミール
【ماؤنٹ عی】ウルドゥー、西パンジャブ、サラーエキー - ウルドゥー語で元素のアスタチンは〈عیسٹاٹین〉[アェースターティーン]―ヒンドスターニー語として同一言語として扱われるヒンディー語では〈ऐस्टाटीन〉―という風にア段にアイン《ع》を用いる借用語が多い。
【مائونٽ عي】シンド
【مأؤنت ع】ギラキ
【مونت ع】マーザンダラーン
【ئەيىن تېغى】ウイグル - 旧アラビア文字正書法のアイン《ع》に該当する現行アラビア文字の字母はハムザ付きイェー《ئـ》。
【ޢ ފަރުބަދަ】ディベヒ - ターナ文字AINU《ޢ》の綴りは〈ޢައިނު〉で、ディベヒ語で恵山は“アイヌ山”となる。
【ܛܘܪܐ ܥ】アッシリア現代アラム、シリア - シリア語で〈トゥーラ・エー〉と読まれる場合は“エ山”の意となるが、シリア文字〈ܛܘܪܐ〉がトゥーラではなく〈タウラ〉と読まれる場合は“時空; 瞬間; 領域; 幅”の意となる。
【ࡈࡅࡓࡀ ࡏ】マンダ - アインに由来するマンダ文字の字母は、本来のアラム文字由来のIN《ࡏ》[e エ]とアラビア文字由来のAIN《ࡘ》[ʕe エ]の2種類。
【𐡈𐡅𐡓𐡀 𐡏 / 𐤈𐤅𐤓𐤀 𐤏】アラム
【ዐ፡ተራራ , ዐ ተራራ】アムハラ - ファリンガルA《ዐ》は、ギリシャ文字《Ο・ο》に由来するエチオピア数字70《፸》に対応。近年は単語と単語の区切りを表す間点《፡》がスペースに置き換えられるようになった。
【እምባ ዐ】ティグリニャ
【ደብረ፡ዐ , ደብረ ዐ】ゲエズ
【Buurka C / 𐒁𐒓𐒇𐒏𐒖 𐒋】ソマリ - アインに対応する《C / 𐒋》の字母名は〈Cayn / 𐒋𐒖𐒕𐒒〉[アイン]。
【ⴰⴷⵔⴰⵔ ⵏ ⵄ】アマジグ - アインに対応するティフィナグ文字YAA《ⵄ》の字母名は〈ⵢⴰⵄ〉[ヤァ]。
漢字圏における表記
漢字圏では恵山の旧字体【惠山】―旧かなづかいでは〈ゑさん / ヱサン〉―で表記され、原則的に各言語での発音で読まれます。
台湾語や客家語などハイフン《‐》でつないで固有名詞を表す教会ローマ字系統ラテン文字正書法を除き、漢語系の非漢字系正書法ではHUI《惠=恵》[ホイ]とSHAN《山》[シャン]の間にスペースを入れて分かち書きして山の名称であることを表します。
琉球諸語の場合は、日本語とほぼ共通のルールです。
【Хуэй Сан】東干
【惠山 / Huì Shān】中国
【惠山 / ㄏㄨㄟˋ ㄕㄢ】台湾華
【惠山 / Wai⁶ Saan¹】広東
【惠山 / Hūi-soaⁿ】台湾
【惠山 / Fui-sân】客家
【惠山 / Hṳ̄-súing】閩北
【惠山 / Hiê-săng】閩東
【惠山 / Hhué Sae】上海
【ゑさん , ヱサン / 恵山 / We-san】沖縄 - ひらがな表記は日本語標準語の旧かなづかいと共通。
函館市の恵山が英語名“Mount E”経由で【E山】と解釈されてしまう場合の表記
翻訳サイトでは恵山の英名【Mount E】[マウント・イー]が漢字圏では【E山】[イーサン]と誤訳されてしまう恐れが多く、誤記を修正するための説明用に記載しておきます。
江戸時代幕末期のオランダ語辞書『改正増補蛮語箋』におけるオランダ語ラテン文字エー《E》の漢字表記による字母名は中国語で《衣》[イー]と英語寄りの読みとなる当て字とされていて、且つ日本語のひらがなE《え》の字源となった漢字が当てられています。
《衣》の第4声である〈YÌ・Yì・yì〉が英語ラテン文字イー《E》の中国語普通話における発音となっています。
【E山 / Yì Shān , E-Shān】中国 - ピンイン本来の字母名であるE《Ē / ㄜ》[ヲー]ではなく、英語ラテン字母名由来の発音となる。
【ㄧˋ山 / ㄧˋ ㄕㄢ】台湾華 - 台湾では英語寄りの発音となり、漢字表記が不明の場合の表記は漢字・注音混じり表記となる。
【E山 / Ji¹ Saan¹ , E Saan¹】広東 - 広東語ラテン文字表記では、後者の頭文字となるラテン字母の場合、声調を示す上付き数字が省略される。
【ㆤ山 / E-soaⁿ】台湾 - 台湾語注音符号EE《ㆤ》は日本語エ[e]に対応。
【衣山 / Yī Sae】上海 - エクスプレス式上海語ローマ字では、中国語普通話《衣》の第4声〈YÌ・Yì・yì〉に対応する綴りは第2声〈YĪ・Yī・yī〉, 第1声〈YĪ・Yī・yī〉に対応する綴りは第1声〈YÌ・Yì・yì〉と声調記号の対応が真逆となっている。
恵山が【江山】と表記されるケース
中国語では20世紀中頃に北海道の恵山は【江山】と、カタカナE《エ》[e]及びひらがなYE《𛀁》[je イェ]の由来である《江》を当てた表記が用いられ、アイヌ語の〈エサン / e-san〉及び〈イェサン / ye-san〉双方に対応した表記となっています。
【Җён Сан】東干
【江山 / Jiāng Shān】中国 - 主に1940年代に用いられた表記だが、現在も函館市にある“恵山”の表記に用いられ、恵山岬は〈江山岬 / Jiāngshān Jiǎ〉と綴られる。
【江山 / ㄐㄧㄤ ㄕㄢ】台湾華
【江山 / Gong¹ Saan¹】広東
【江山 / Kang-soaⁿ】台湾 - 山河の意の“江山”は〈Kang-san〉と区別される。
【江山 / Kông-sân】客家
【江山 / Gó̤ng-súing】閩北
【江山 / Gŏng-săng】閩東
【江山 / Jiàn Sae】上海 - 山河の意の“江山”は〈Gànsae〉と区別される。
特定言語における固有名称
アイヌ語ラテン文字《E》の正式名称は不明であることから、一部言語では独自の固有名詞で表すことがあります。
【جبل مونت】エジプト・アラビア - 平成元年から10年間の恵山町時代に存在していたリゾート・恵山モンテローザからの推測で〈ガバル・モンテ〉と読まれる。名詞のガバル[جبل]―アラビア語の正則語フスハーでは〈ジャバル〉[جَبَل]―及び固有名詞且つ形容詞のモンテ[مونت]―フスハーでは〈ムーンティ〉[مُونْتِ]―もいずれも《山》を意味し、固有語とロマンス諸語由来の借用語の折衷による名称となっている。
なお、モンテの〈مونت〉は英語由来の“マウント”[مَوْنْت]やフランス語由来の“モント”[مُونْت]とも読まれる。