近況と雑感
最近になって、CDで音楽を聴くことが激増しました。ストリーミングで聴くこともたまにあるけど、さて音楽聴こう、という時は決まってCDアルバムを垂れ流すように聴きます。
音質がどうとか、そういうことはさておき、私はCDで育ったから、CDを聴くのが楽だ、ということが大きいのでしょう。
私のようなアーティスト(この言い方なんかあまり好きではない)は、自分自身の作品を精魂込めて作って、それをCDアルバムに仕上げる訳だから、1曲目の始まりから最後の曲の終わりまで、無駄な瞬間などないわけです(意図的な無駄はともかく)。
ただ、他の誰かの作品を40分とか60分とか再生するときに集中して聴いているかというと、そんなことはありません。なんとなくの音感触をたまに味わっているくらいで、そう言えば3曲目と7曲目が好きだなぁ、くらいにしか感じていないことが殆どです。
1990年代から2000年代初頭にかけて購入したCDは、CDアルバムで聴かれることを前提に作られた作品ばかりなので、割と退屈せずに聴けるものが多い印象でしたが、いざ聴いてみると、発売当時にこりゃ最高だ、と思ったものでも、今聴くと大したことないなぁとか、アラが目立つものもあります。
私自身も歳を取り、世界は大きく変わってしまったので、価値観めいたものも変わってしまったから、ということも大きいとは思います。
アヴァランチーズ、というオーストラリアのバンドがデビューしたのが確か今世紀に入ったか入ってないか、くらいのタイミングだったと思いますが、私の周囲ではたいへん人気がありました。マイペースな活動だったので、長年新譜らしい新譜が出ませんでしたが、2016年頃に突然新作アルバムが発表され、かつて聴いていた人たちを中心にほんの少しだけざわつきました。
私もほんの少しだけざわつき、新譜を購入したものの、そんなに熱心に聴きませんでしたが、今になって聴いてみると非常に素晴らしい内容で、難しいこと抜きにしてとても良い音楽作品に聴こえました。
新しい音楽に出会うことは、宝物を探し当てたような気持ちになるものですが、実は既に出会っていた、宝の持ち腐れになっていた、ということもたまに起こります。
録音は記録ですから、アーティストとそのスタッフ達の魂を燃やした軌跡がこれでもかと刻み込まれているわけなんです。ところが、その評価というものは、いくら優れた評論家といえども一瞬で出来るものではありません。それは、先述したように時代は変化するからです。
アーティストは結果を求められるので、その時その時の仕事をこなすように創作しますが、幾つかのアーティストは、まるでイタコや預言者のように時代を先取り作品を作ることがあります。
手塚治虫先生の漫画作品が現代社会を予見しているかのようなテーゼを持っていたりするように、幾つかの音楽には予見が含まれています。
これは重い話でもシリアスな話でもなんでもなく、基本的に「雰囲気」で聴いて感じることが音楽本来の楽しみ方だとすれば、時間をかけて伝わるような作品というのも、世の中には数多く存在するんだと思います。
あなたの棚に眠っているCDアルバムや、アレは大したことないな、好みじゃないな、と思って忘れていた作品を、ふと思い出して聴いてみてあげてください。
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