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近況と雑感

ずっと憧れだったナポリの作曲家/管楽器奏者ダニエレ・セーペを日本に招聘し、京都音博のステージに立ってもらった。

彼とは既にことし4月、イタリアのナポリにてレコーディングを行い、2曲を完成させ先日リリースしたばかりだった。

彼とそのバンドメンバーたちは、音博やそのリハーサルだけではなく、今月放送予定のNHK『tiny desk concert』の収録や、ほか色々スケジュールをびっちびちに詰め込んでいた中、一切の手を抜くことなく真摯に取り組んでくれた。

4月の時点で、もう既に気づいていたが、イタリア人(ナポリタン)は気楽であまり働かない、という偏見を今まで持っていたことを恥じたい。

少なくとも彼らは、誰よりも勤勉で、人々にリスペクトを持って接し、礼儀正しく、明るく前向きであることを良しとする紳士である。

ユーモアを忘れず、楽しいことが好きで、歴史や論理を時間を忘れて追求するその姿を見ているだけで、自分自身が今までやってきたことに誇りを持ち肯定することができる。

ダニエレは色んな音楽に精通している。恐るべき知識量とそれに対する批評精神を持ち、作曲家としての天才性だけではなく演奏技術や、プロデューサーとしての力量も持っている。

スーパーマンのような彼だが、彼は常にそこにいる目の前の人と同じ目線に立ち、優しい心を忘れず、何かが予定調和しようとすると面倒臭いブラックジョークで煙にまいてひっくり返す。到底私は彼の足元にも及ばないが、私と彼のメンタリティはどこか似ている。

彼は普段はクラシックしか聴かないそうだ。ベートーヴェンやストラヴィンスキー、ショスタコーヴィッチが好きらしく、一度くるりの『大阪万博』を聴かせた際には、「フランク・ザッパ!」「バルトーク!コンチェルト・フォー・チェレスタ」と元ネタを探り出して喜んでいた。

私は、彼と音楽の話をするのがとても好きだ。ディテールにこだわるが、彼は何よりも美しい魂のありようを音楽に期待している。

政治や経済が音楽に大きく関係していることも語っていた。どのような時代にどのような音楽が隆盛を極めたかフランス革命などを参照しながら、現代と照らし合わせていた。若者たちが未来に希望を持たない時代、つまり現代の話だ。

最後の晩御飯(お好み焼きやうどんなど)のあと、バーで飲み明かした私たちは、珍しく暑苦しい話に終始した。シゲル、おまえは私と同じようにレジスタンスである、私はナポリに、おまえは京都に住んでいる。余計なことを考えず、音楽で未来を変えよう、と言っていた。

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