「忘れないように」セルフライナーノーツ
この曲の原型はそれこそ、1997年くらいにはあったと思われます。
殆ど忘れましたが、恐らくKYOTO MUSE HALLかどこかのライブハウスで、新曲出来ました的な感じでお披露目もしたように記憶しています。
ただ、その後全くと言っていいほど忘れ去られ、タイトルも歌詞も楽器の弾き方も忘れてしまっておりました。
時は流れ、新しいアルバムのレコーディングに向け「その線は水平線」や「春を待つ」といった、昔書いた曲を今になって思い出しながらレコーディングするタームに入っていた矢先、この曲のメロディーや構成が頭の中に鳴り響いておりました。
コーラスの「忘れないように〜」という歌詞だけ、なんとなく覚えていたので、自戒も込めて忘れ去られないような曲にするために、新たに歌詞を書きデモを制作して、スタッフに聴かせたところ、これは是非録りましょう、新境地ですね、と言われたので、いや、むっちゃ古くて忘れてた曲です。タイトルは「忘れないように」です、とお伝えしました。
当時から今に至るまで、くるりはこの手のポップでキャッチー、グルーヴィーな曲を演奏することは殆どありません。何故こんな曲想になったのかも謎です。90年代半ばのBEN FOLDS FIVEとか、70年代のJACKSON FIVEとか、ファイブ付いてるだけやん、って並びではありますが、モータウンっぽい曲調…マーヴィン・ゲイのような黒っぽいリズムはくるりにおいてとても珍しくもあります。跳ねたリズム、ピアノ、グルーヴィーなドラムやベース、オルガン、パーカッション、みたいな、いわゆるポップスのテンプレートのような曲想です。
歌詞のテーマは、そのままですが「忘れないようにすること」と「忘れ去られないようにすること」そして「揺らがないようにすること」についてです。Wikiで言うところの「曖昧さの回避」です。とても具体的なものです。
この曲もSTUDIO SIMPOでデモ制作、京都精華大学のmagi music studioでドラムとピアノ、ベースとヴォーカル、パーカッションと金管、オルガンなどはSTUDIO FIRSTCALLで録音しました。ドラムはツアーメンバーの朝倉真司さん、ピアノはSFUの奥野真哉さん、バリトンギターとパーカッション、エディットは佐藤、ホーンセクションはファンファンの多重録音、クリーントーンのカッティングとオルガンは俺、録音は谷川氏で、ミキシングは久々に高山徹氏にお願いしました。マスタリングは小鐡さんです。
「だいじなこと」とカップリングで、先行シングルとしてカセットテープでのリリースですが、思い返せば「くるりの一回転」や「チアノーゼ/ベースボールゲーム」などもカセットテープで売っていたなぁと、感慨にふけりながら、カセットデッキの購入を考えておる最中です。